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    伊那弥彪

    ラクガキと二次創作文物置。支部にアップしたりする。

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    伊那弥彪

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    支部に投稿した妓人化ifうぎゅ

    取り立てのお時間ですここは独身者向けの一般的な長屋…吉原遊廓の近くにあるこの長屋の一室で、朝日が差し込み目を覚ます者がいた。その男は「朝かぁぁ」と呟き、身体を起こそうとするがそれを阻まれてしまう。自身に覆い被さるように寝ている大柄な男によって。

    「おぉーい…起きろぉぉ」

    先に目を覚ましたこの部屋の主、痩せ型の男妓夫太郎は、自身に覆い被さっている男の背中をパシパシと叩き、起きるよう促す。一糸纏わぬその男の艶の良い肌に、妓夫太郎が叩いた痕が赤く残っていく。

    「んっ…んん〜…」

    大柄な男は妓夫太郎に背中を叩かれ身動ぐも、未だ目を開けようとせず、妓夫太郎の首元に顔を埋め、差し込む朝日から逃れていく。

    「いや起きろよなぁぁ。俺、取り立ての仕事があんだがぁぁ?」
    「……今日ぐれぇ遅れたって良いだろ」
    「良くねぇよ。旦那と女将に何言われっか分かったもんじゃねぇぇ。折角得た潜入先を無駄にしちまっていいのかぁぁ?」
    「……」

    妓夫太郎のその言葉に大柄な男はむくりと顔を上げる。銀糸のような艶のある白髪を揺らしながら、宝石のように美しい紅い瞳でジッと妓夫太郎を見つめるこの男は宇髄天元。妓夫太郎の本来の雇い主だ。
    数年前、宇髄が遊廓で見つけた貧しい兄妹。それが妓夫太郎とその妹だった。遊廓での潜入を画策していた宇髄は、遊廓に縁のある兄妹を引き取り、兄の妓夫太郎を遊廓の「妓夫太郎」として潜入させていた。そして、その存在を知っているのは鬼殺隊では宇髄しかいない。宇髄は密偵の妓夫太郎とこうして会っては、鬼に関すると思われる情報を得ていた。そうやって会っていくうちに次第に二人は身体を重ねる関係ともなり、妓夫太郎の潜伏先でもあるこの長屋で宇髄が一晩過ごす事は珍しい事ではなくなっていた。

    「やっと起きたか色男」

    まだ眠気の残る瞳をしている宇髄を見つめ、妓夫太郎はニヤッと笑い「ほら。とりあえず服着ろよ」と促していく。宇髄は頭をポリポリと掻きながら、妓夫太郎に促されるまま起き上がり、用意されていた着流しに袖を通していく。宇髄が退いたおかげでようやく起き上がる事ができた妓夫太郎は自身も着流しに袖を通し、仕事へ行く準備を進めようとする。そんな時、

    「妓夫太郎」
    「んん?」

    宇髄に呼ばれ振り返ると、こっちに来いと手招きされ、妓夫太郎は渋々といった表情で畳の上に胡座をかいている宇髄の元へ寄っていく。

    「何だよ」
    「良いからここに座れ」

    トントンと自身の隣を指で突き、妓夫太郎に座るよう促してくる宇髄。仕事の準備を済ませた後にゆっくりしようと思っていた妓夫太郎は、むぅッと不満げな表情を浮かべたが、「仕方ねぇなぁぁ」と呟き宇髄の隣に腰を下ろし胡座をかく。

    「んで?何の用だよ?報告は昨日した分で全部…」

    急かしてまで自分を隣に座らせたという事は妓夫太郎は宇髄が本来の目的の話をしてくるのかと思っていた。だが、妓夫太郎の言葉途中で宇髄は自身の頭を妓夫太郎の胡座の中心に置くようにゴロンと寝転がり、腕組みをして寛ぎ始めてしまった。そんな宇髄の行動に妓夫太郎は目を見開き、思わず「は?」と気の抜けた声を出してしまう。

    「オイコラ…何やってんだテメェ」
    「膝枕を堪能してるが?」
    「膝枕じゃねぇなぁぁどう見てもぉぉ。胡座枕じゃねぇぇ?」
    「何だ?普通の膝枕してくれんのか?」
    「そういう話してるんじゃねぇんだよなぁぁぁッ」

    宇髄の話の通じ無さに妓夫太郎は思わず深い溜め息をついてしまう。苛立ちから頬や身体を掻き毟りたくなったが、以前宇髄から言われた「その癖治せよ」という言葉が脳裏を過り、自身の肌を掻き毟る事はしなかった。が、やはり手が疼いて仕方がないので、とりあえず今回の苛立ちの原因の宇髄の頬へ軽く爪を立てるように触れていく。

    「おい、何だ?」
    「俺の話全然聞かねぇアンタがわりぃんだよ。ヒヒッ」

    妓夫太郎はニタリと笑いながら、掻き毟るように指を動かしていく。実際は指の先が軽く触れる程度なので掻き毟ると言うよりくすぐっていると言った方が正しいか。そんな妓夫太郎の行動に宇髄は最初は目を見開き面を食らっていたが、次第に妓夫太郎の指が心地良く感じ始め、目を徐々に閉じていく。

    「いや寝んなよ」
    「心地良くしてくるお前がわりぃ」
    「俺はそんなつもり一切ねぇんだが?」
    「んじゃそのまま続けてくれ」
    「爪ガッツリ立てんぞコラ」

    そう苛立つ気持ちを声に乗せ、妓夫太郎は宇髄の頬をむにっと摘む。摘まれても爪は立っていないので痛くは無く、どこまでも顔に傷を付けないよう配慮してくれる妓夫太郎に宇髄は思わずフッと笑ってしまう。

    「なぁに笑ってんだよ」
    「いや…俺の顔に傷付けねぇようにしてくれてるなぁと思って喜んじまっただけだ」
    「…そりゃそうだろ。こんだけ綺麗な顔してんだ。傷付けるわけにはいかねぇだろぉ」

    妓夫太郎は宇髄の頬を摘んでいた指を離し、今度は包み込むようにその頬に触れる。そして優しく撫で、視線をジッと宇髄の瞳に固定して、ぼやく様に言葉を発していく…。

    「肌艶良くて、痣も傷も無くて、顔立ちも良い。眼も宝石みてぇに綺麗で、髪もつやっつやさらっさらでまるで銀糸みてぇだなぁぁ…おまけに女房は三人もいやがる…あぁ妬ましい妬ましい…本当妬ましいなぁぁ」

    宇髄の頬を包みながら指を動かし、その厚い唇をツツッとなぞっていく妓夫太郎。ゆっくりゆっくり腰を曲げていき、その顔を宇髄の顔へと近付けていく。そんな妓夫太郎を宇髄は表情を崩さぬまま、ただ黙って見つめ続けていた。

    「この唇も艶々だなぁぁ。俺のガサガサの唇とは違って本当妬ましい……本当、アンタは良い男だなぁぁぁ……あぁ妬ましい…」

    そう言い終わった後、艶のある唇にガサガサの唇を落とし、重ねていく。重ねただけ…触れただけの口づけを終え、妓夫太郎は顔を上げて宇髄にニタリと笑いかける。

    「本当…俺だけのもんになってくんねぇかなぁぁ」

    細められた眼から覗くその空色の瞳に宿るのは、愛情、嫉妬、悲哀‥いくつもの感情。宇髄はその瞳に吸い込まれるように、組んでいた腕を解き、妓夫太郎の頬へと手を伸ばしていく。

    「妓夫太郎‥俺は…」

    頬に触れ、宇髄が己の本心を語ろうとした時、妓夫太郎は歯を合わせ「ハッ」と笑ってみせる。

    「冗談だよ。本気にすんなぁぁ」

    変わらないニタリとした笑みを浮かべたままそう告げ、妓夫太郎は触れていた宇髄の頬から手を離していく。

    「アンタには何でもかんでも世話になったからなぁぁ。妹の事も、俺の病気の事も。そんなアンタから取り立てるなんて事ぁ俺はしねぇよ。あぁ‥与えられた仕事はキッチリこなすから安心しとけぇぇ」

    揺らめく前髪で見え隠れする妓夫太郎の瞳。その瞳には未だいくつもの感情が宿ったまま。そんな複雑な感情を宿らせているのは紛れもなく自分であると確信している宇髄は、今度は自分が妓夫太郎の頬を包み込むように触れていく。そんな宇髄の行動に妓夫太郎の口元の笑みは消えていく。

    「んんー?なんだぁぁ?」
    「…お前の痣は個性的で俺好みで、その癖っ毛も柔らかくて気持ち良いし、ギザ歯も愛らしい。お前の間延びした喋り方は俺の耳には聞き心地良いし、お前の瞳は澄んだ空みてぇで綺麗でずっと見てられる」
    「は?いや…ちょっと待て…急に何言…」
    「妹想いなとことか本当お前の良いところだな。後、俺の事を信用して俺の密偵になってくれて、こうしてキッチリ仕事こなす真面目なとこも良い」

    微笑みを浮かべながらスラスラと妓夫太郎の良い点を上げていく宇髄。そんな宇髄に妓夫太郎は戸惑いをみせる。元来自分を卑下しがちな妓夫太郎にとって、自分の良い点を他人に言われる等慣れぬ事で、その慣れぬ心地良さから逃げようと顔を反らそうとするが、宇髄の手がそれを許す事がなかった。頬を包み込んでいた大きな手は後頭部へと移動し、ゆっくり、ゆっくりと妓夫太郎の頭を下げさせていく。そして、

    「本当、お前自身を取り立ててぇよ」

    その言葉を告げ、宇髄は妓夫太郎の唇を自分へと押し当て、口づけをする。妓夫太郎からの触れるだけの口づけとは違い、舌を絡ませ、唾液を交ざらせていく濃密な口づけ。
    宇髄からの言葉と口づけに妓夫太郎は目を見開き驚愕したままであったが、宇髄はそれに構わず口づけを続けていく。

    「んッ‥ンンッ‥!」

    宇髄の気が済むまで口づけは続き、ようやく口を解放された妓夫太郎はプハッと息を吸い込み、口元から垂れる涎を手で拭い取る。そして、眉間にシワを寄せ、目を細めながら宇髄を見下ろす。

    「俺自身を取り立てるって…冗談言ってんなよなぁぁ」
    「冗談じゃねぇよ。本気だ」
    「…あぁ。一生アンタに雇われてろって事かぁぁ?なるほどなぁ」

    宇髄の言葉を紆余曲折に理解した妓夫太郎は自身の膝をパンパンと叩き、ケタケタと笑いだす。

    「良いぜぇぇ。アンタになら一生雇われて…」
    「俺の嫁になれよ、妓夫太郎」
    「……は?」

    自身の言葉に被されてきた宇髄の言葉に、妓夫太郎は再び笑みを消し、目を見開いた。そんな妓夫太郎を宇髄は真剣な表情で見つめ続ける。

    「お前の事が好きなんだよ」
    「…何言ってんだアンタ。んな真顔で」
    「俺の嫁になって、一生俺の隣にいろ」
    「いやアンタ女房三人いる身だろ」
    「何ならこのまま連れ帰ってもいいぜ」
    「いや潜入の仕事」
    「本当はこんな危険な仕事お前にさせたくねぇんだよ」
    「今更じゃね?結構もう深入りしてんぜ俺」
    「……お前、こんな色男が口説き落とそうとしてんのに、全然表情変えねぇのな」
    「既にアンタに落ちてっからなぁぁ俺」
    「んじゃ嫁になれよ」
    「それとこれとじゃ話が別だろうがぁ」

    宇髄は妓夫太郎を心から愛し、自身の嫁にしたいと願っているが、妓夫太郎は自身が宇髄程の男の嫁になどなれないとして断固拒否の姿勢を貫く。そんな真顔の二人の押し問答は続くように思えたが、

    「でもお前、俺に嫁になれ言われてときめいたよな?心臓高鳴ったの聞こえたぜ」
    「この聴力お化けがぁぁ」
    「嬉しいのは認めんだな」
    「‥そりゃなぁぁ。想い人から嫁になれなんて言われたら嬉しいわ」

    視線を反らし、頬を指で軽くポリポリと掻く妓夫太郎の仕草からは照れ臭さが伝わってくる。そんな妓夫太郎を見て、宇髄は微笑みを浮かべた。
    妓夫太郎の澄んだ空のような瞳には今、愛情と微かな希望が宿っている。自分の気持ちはちゃんと伝わっていると感じた宇髄は決意した。

    「これからも山程口説いてやる。お前が俺の嫁になるっていうまでな」
    「マジで言ってんのかよ‥」
    「マジも大マジだ。俺は最強最高の色男、宇髄天元様だからなぁ」
    「その自信‥俺にもちったぁ分けてくれよなぁ」
    「嫁になったら分けれるんじゃね?」
    「もしかしてこれから、ここぞとばかりに「嫁になれ」って言ってくるつもりかぁぁ?」
    「当たり前だろ。俺は必ずお前を取り立ててやっからな。取り立てて、お前を俺の嫁にする。ぜってぇになッ」
    「そりゃ困った話だ。俺は取り立てる側だからなぁぁ。取り立てられるなんて慣れてねぇや」

    ヒヒヒッと楽しそうに笑う妓夫太郎に、宇髄も釣られて口元に笑みを浮かべ、満面の笑顔を浮かべていく。そんな二人を朝日が暖かく照らしていく。
    取り立て取り立てられながら、二人の運命は交り合い、共に辿っていくだろう。この先もずっと。
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