生返事周りが呆れる程ラブラブな同棲カップルの天元と妓夫太郎。だが今は、同じ部屋で背中を向け合っていた。
天元は家に持ち込んだ仕事をする為に仕事机でパソコンを打ち、妓夫太郎はその後ろでクッションを抱きながら携帯型ゲームをと各々で過ごす休日。
そんな時間に痺れを切らしたのは妓夫太郎だった。
「なぁ。その仕事終わったら何か食いに行かねぇ?」
そうゲーム画面を見ながら背後の天元に話し掛ける。だが、
「ん〜」
天元から返ってきたのは生返事…余程仕事に集中しているのかハッキリとした返事は返ってこない…
「なぁ…」
「ん〜」
「…飯、食いに行かねぇ?」
「ん〜」
二度目も生返事…素っ気ない天元に妓夫太郎は眉を顰め口を尖らせる。
「なぁ、聞いてんのかぁ?」
「おう〜」
"ん〜"では無かったが生返事には変わりはなく、妓夫太郎の眉間には深いシワが刻まれる…
(仕事邪魔してんのは分かってっけどよぉ…もう少しまともに返事しろよなぁぁ。てかぜってぇ聞いてねぇよこれ…)
苛立ちからゲーム画面を閉じ、クッションに顔を埋める妓夫太郎。
折角の休日なのだから、もっと一緒の時間を過ごしたいと願うのは我儘なのか?と膨れてしまう。
(俺だけなのか?そう思ってんの…)
そう思うだけで胸が締め付けられる。
天元は違うのか?自分はこんなにも天元の事を…
「……なぁ」
「ん〜」
きっと返ってくるのは生返事だ。だから別に期待なんかしていない…
「………好き」
そうボソボソと小さく呟く妓夫太郎。どうせ聞こえていない。クッションに口を押し付けて呟いた2文字だ。生返事すら返ってこないだろう…そう思っていた。だが、
「俺も大好きだぜ妓夫太郎」
返ってきたのは、ハッキリとした言葉だった。
その返事に一瞬固まった妓夫太郎だが…
「いや聞こえてたのかよ!?」
「聞こえてるっつったろ〜」
顔を真っ赤にしながら後ろを振り向く。そこには、ブルーライトカット眼鏡を掛けた天元がこちらを振り向き、微笑みを浮かべて見つめていた。
「き、聞こえてんならッ、最初っから返事しろよなぁ!」
「あ〜わりぃわりぃ。この後ベッドに行こうっだっけか?」
「飯だよ!!」
「んでその後ベッドと」
「いやどんだけベッド行きてぇんだテメェ!」
「そりゃあんな可愛く"好き"って言われたらなぁ…我慢できなくなっちまうわぁ」
ニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべて天元は眼鏡を外し妓夫太郎の元へ歩み寄る。そして、
「んで?どうする?」
そう細めた瞳で見つめながら妖艶に微笑む天元。その妖しい微笑みに妓夫太郎は思わず胸をときめかせ…
「……ん」
どう返していいのか分からず、顔を赤らめたまま生返事をする。
ベッドには行きたい。天元と触れ合いたい。だが、何だか癪に障る…と。
「"ん"だけじゃ分かんねぇだろ〜」
「それオメェが言うのかよッ!」
「んじゃもう実力行使な〜」
そう言って天元は妓夫太郎を抱き上げ、寝室へと直行して行く。
「飯は!?」
「後でな。もう俺が我慢できねぇ」
絶倫な天元が満足し、食事をできるようになるのは何時になるやら…
返事はハッキリと相手に伝わるように言いましょう。