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    伊那弥彪

    ラクガキと二次創作文物置。支部にアップしたりする。

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    伊那弥彪

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    鬼化if宇妓、宇鬼化、モブ鬼♀出てきます、何でも許せる方向け。
    下弦様シリーズ。下弦様は結構性格悪いです。

    ##宇妓
    ##鬼化if

    訳あり下弦様の愛しい者その鬼は恋に落ちた。鬼狩りと出会し、頸を斬られようとしたその時、颯爽と現れた鬼に…。
    美しいと思った。月の光に照らされたその白髪は銀糸のように輝いて靡き、血の海に沈んだ鬼狩りを見つめる赤い瞳はまるで宝石のように煌めいていて……その瞳に刻まれた文字を見た瞬間、鬼は胸を高鳴らせた……

    「下弦の壱、様……」

    十二鬼月…鬼ならば目指したい称号……その称号を得た鬼を、彼女は今日も探す。
    あの時、少しだけ会話をした。「助けていただき、ありがとうございます」と告げれば「ん?…あぁ、別に構わねぇよ」と微笑みを浮かべて返してくれた下弦の壱…たったそれだけの会話だったが、彼女にとってその一時が今も忘れられない…。
    下弦の壱はこの森をよく通る。遊郭・吉原の街を見下ろせるこの森を。その姿を何度も目にした。目にしては話し掛けようとしたが、その度に颯爽とその場から街へと降りていく下弦の壱。その速さは目で追うことができない程で、彼がこの場からどこに行ったのかは毎度分からずにいた。今日こそはッと意気込む彼女。自身の容姿には自信がある。整った顔、男が欲するような肉付きの良い身体…人間の男を虜にしてきた彼女ならではの自信だった。あの方もきっと自分を気に入ってくれる筈ッ…と自分に向けてくれた微笑みを思い浮かべる。その微笑みにうっとりとしていて、彼女は気付かなかった……背後に迫る異様な雰囲気に……

    「おい……」
    「ひっ!」

    濁った声が背後から掛けられた。ビリビリとした殺気が彼女を襲う。バッと勢いよく後ろを振り向けば、そこには半裸の……骨が異様に浮き出た異形な男が自分を見下ろしていた。黄色眼球に光る薄緑色の瞳……その中心に刻まれた文字を見て、彼女は戦慄した……

    (じ、上弦の陸ッ……)

    十二鬼月の中でも上弦は別格である。100年以上入れ替わりの無い上弦…それは、鬼狩りによって頸を斬られていないという事実と共に、入れ替わりの血戦で、誰も超える事ができていないという事実でもあった。そんな上弦が今、目の前にいる……異形な風体がよりおぞましく思え、彼女は腰を抜かしては地べたに座り込みフルフルと震えた。そんな彼女に構わず、上弦の陸の男はその掠れた声で語り掛ける。

    「いい加減俺らの縄張りをうろちょろすんの止めてくれねぇかなぁぁッ?」
    「な、縄張り……?」
    「ここら一帯は俺らの縄張りだぁぁ。仲間でも流石にこうも毎日うろちょろされっと気が散る」

    座り込む彼女の前に、上弦の陸もまた座り込んでは視線を合わせてくる。視線を合わせて欲しくなかった。顔を近付けて欲しくなかった。だが、そんな事を告げれば殺されるかもしれない…そんな恐怖を纏う目の前の男に、彼女はただ震え続ける。そんな彼女に、男はニタリと不気味に笑う。

    「何震えてんだよ。同じ鬼じゃねぇか。取って食おうなんざ思ってねぇから安心しなぁぁ。まぁこれ以上俺らの縄張り荒らすんだったら考えなくもねぇがなぁぁ」
    「あ、荒らす気は、ありませッ……」
    「そうだよなぁぁ。オメェは毎日毎日、ここを通る色男ばっか見つめてたもんなぁぁ」

    その言葉に彼女は背筋を凍らせた。
    見られていた…ずっと……。気付かなかった……この刺すような視線に……。
    ヒヒヒッと不気味な笑い方をし、自分を見つめてくる男に彼女はゴクリと唾を飲み込む。

    「何だぁぁ?あの野郎に惚れちまってんのかオメェ」
    「ぇ、ぁ……」
    「図星かよ。なるほどなぁぁ。確かにオメェは男が好きそうな見た目してるもんなぁぁ。んで?その身体であの野郎を誘惑して、何かするつもりだったのかぁぁ?俺らの縄張りで」

    その瞬間、辺りの空気が振動する…それは彼女を襲う、ビリビリと頭からつま先まで走り抜けるような殺気…
    ギロリと睨みつける「上弦の陸」の瞳が彼女の心臓を射抜く……
    殺されるッ……そう本能が告げていた……

    「ぁッ、ぁッ……」

    震える唇からは言葉を発する事ができず、見開いた目で目の前の男を見つめる彼女……鬼狩り相手でも感じなかった恐怖に身体を縛られ、自分の命を諦めた……だが、

    「……ヒヒヒッ。だぁから、取って食う気はねぇって言ってんだろぉぉ?これに懲りたら、もう俺らの縄張りをうろちょろすんじゃねぇよ。分かったか?」

    再び笑みを溢す男に、彼女は全身の力が抜けていく。それは助かったという安堵からだった。だが、この男からの忠告は、二度目は無いと告げていて、彼女は「わ、分かりましたッ」と答え、ようやく力が入るようになった足でその場から急ぎ足で立ち去っていく。
    ハァハァと息を切らしながら森を走り抜ける…まさか上弦の陸の縄張りだったとは……

    「……あれ?」

    そこで彼女はある疑問が浮かび上がった…
    あの人は何故あの森に来ていたのだろうか、と…しかも、上弦の陸にその存在を知られている……
    下弦の壱と上弦の陸……位が一つしか違わない彼らから想像できるのは……『入れ替わりの血戦』。

    「あッ……」

    あの人が危ないッ……そう思った瞬間、足は自然と来た道を戻っていた。
    もしかしたら下弦の壱は、入れ替わりの血戦の為に上弦の陸をこっそりと探っていたのかもしれない。だが、上弦の陸はその存在に気付いていた。
    自分に向けられた殺気を思い出す……あの恐ろしい殺気を、あの人に向けさせるわけにはいかないッ…その一心で彼女は走った。
    そして戻った先で、見つけた人影に足を止めた。あの銀糸のような白髪の後ろ姿はあの人だ、と……。

    「ッあ───!」

    ここから一緒に立ち去りましょう。そう声を掛けようと思った。だが、その言葉は喉から出る事はなかった。
    あの人の目の前には、あの恐ろしい男が立っていたから。
    遅かったと思った。あの人があの男の餌食となってしまう…。足が震えて動かない。でも止めなければ…あの人の為に動かなければッ……奮起し、足を動かそうと必死になる。そして、彼女がようやく1歩足を動かせた時……上弦の陸は動いてしまう……そのゴツゴツとした手を、下弦の壱の艶のある美しい肌に触れさせ…そして………

    「………え?」

    彼女は自身の目を疑った。目に映るのは、上弦の陸が下弦の壱へ口付けをしている姿……
    下弦の壱はとても美丈夫だ。それはそれは男が惚れてもおかしくない程にだ。まさか、上弦の陸も下弦の壱に恋を…?優位な立場を利用して無理矢理口付けを…?
    何て卑劣な事をするのッ…と彼女は唇を噛み締める。だが……彼女はまたしても、自身の目を疑う事となる……。
    下弦の壱の手が…美しい大きな手が、上弦の陸の異形な程に細い腰へと回り、抱き締めていく。まるで愛おしいものを包み込むような優しい手付き…
    彼女は目を見開き、瞳を震わせながら二人の様子を見つめた。風に運ばれて聞こえてくるのは、揺れる木々の音と、くちゅりくちゅと液の混ざる淫靡な音……そして、上弦の陸の吐息と共に漏れる甘い声……

    「ンッ…んぁッ…ぁッ…ば、馬鹿野郎ッ……舌、絡めてくんなよなぁぁッ」
    「だってお前からしてくれるなんて滅多にねぇからさ。つい燃えちまった」

    唇が離れたと同時に聞こえてきた会話…違う…上弦の陸の声が明らかに自分に向けられた声とは違う……そう彼女は思った。彼女に向けられた威圧的な刺々しい声ではなく、柔らかみのある少し甘えた声……聞き慣れぬ男の甘い声に彼女は鳥肌を立てたが、その甘い声を掛けられた下弦の壱はどうやら違うらしい。自分を見上げてくる上弦の陸に微笑み、優しい口調で語り掛ける。手は未だに細い腰を離さず、その身体を自分の身に引き寄せては大きな身体で包み込む。その姿はまるで恋人のよう……

    (そんなわけッ…そんなわけ無いじゃないッ…!)

    あれ程の美丈夫が、上弦とはいえあんな男に恋をしているなんて有り得ないッ…!きっと何か裏がある筈…!そう思い込んだ彼女は、敵意を剥き出しにした視線を上弦の陸へと向けてしまう。恐怖した相手という事も忘れて…。

    「……なぁぁ、天元」
    「ん?」
    「ここでヤんのか?」
    「何?誘ってんのか?」
    「…誘ってるっつったら?」
    「そりゃ乗るしかねぇだろ。愛しい愛しい嫁の可愛い誘いは」

    二人の甘い会話が彼女へ衝撃を与える。それは大きな精神的衝撃……
    嫁?今、嫁と言った?愛しい……?その、男が……?
    下弦の壱の言葉が彼女は理解できなかった。
    私の方がこんなにも魅力的なのに……絶対アナタの隣は私の方が似合うのに……どうして………
    自分には決して振り向く事のないあの美しい瞳は、ずっとおぞましい男を見つめている……。
    下弦の壱…天元が上弦の陸の首元に顔を埋める。それと同時に上弦の陸は身体を小さく震わせ、「んッ」と甘い声を押し殺す。
    今から何をヤるかなんて容易に想像がついた……自分がその立場になりたかった彼女は呆然とその光景を見つめる……
    ただただ見つめて……視線が合ってしまう……薄緑色の瞳と……
    視線が合った瞬間に、上弦の陸はニヤリと不気味な笑みを浮かべた。細めた瞳は勝ち誇っているかのように見下した視線を彼女に向け、笑みを浮かべている口からは舌をべっと出し、そのゴツゴツとした手は愛おしそうに天元の背へと回る……。
    残念だったな…コイツはとっくに俺のもんなんだよ……
    ニタリと笑った口がそう告げているように彼女には見えた。
    悔しさから唇を噛み締め、身体を震わせる彼女…そんな彼女に一切視線を向ける事の無い天元は、自身の目の前にいる上弦の陸へ語り掛ける。

    「コラ。俺と居る時は俺だけ見とけっつうの」
    「んん?別に誰も見てねぇがぁ?」
    「嘘つけ。さっきから小蝿が飛んでんの知ってんだぞ?」
    「んん〜?何だぁぁ?その小蝿に嫉妬してんのかぁぁ?」
    「そりゃな。俺の愛しい嫁の視線奪うってんなら、小蝿だって容赦しねぇよ」

    その言葉に彼女は脳天が破裂するかと思う程の衝撃を受ける……
    気付かれていた…上弦の陸にも、恋をした相手にも……。
    小蝿だと言われた……恋をした相手に……。
    冷たく吐き捨てられた自分の存在……自分の存在は、恋をした相手にはその程度だったのだと思い知らされ、彼女は愕然とし、その場に崩れ落ちる……。

    「ぁ…ぁ……逃げ……」

    足に力を失った彼女は這いつくばりながらその場から去って行く……何故か分からない。ただあの場にずっと居ては命が無くなると本能が告げていた…張り詰めて、息苦しくて、冷たい何かが彼女を襲う……それは、上弦の陸から向けられた殺気とは比べ物にならない程の恐怖……
    必死にその場から逃げた後、彼女がこの森に姿を現す事は二度と無かった……



    ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



    「…という事がこの前ございまして。いやぁ、本当妓夫太郎は可愛らしいです。私に惚れた小蝿を追い払う為に私に甘えてくるんですから。夫冥利に尽きます」
    「……私は貴様の惚気を聞く為に呼び出したわけではないのだがッ?」

    鬼の始祖・鬼舞辻無惨の城、無限城にて、天元は正座をし、ニコニコと満面の笑顔で先日の出来事を語っていた。鬼舞辻無惨相手に……。

    「青い彼岸花はどうした!?」

    天元の惚気を聞かされ、額に青筋を浮かべながら声を荒らげる無惨。そんな無惨に天元は変わらぬ笑顔で答える。

    「まだ何も手掛かりございません」
    「胸を張って言うなッ!!」

    無惨は本当はあまり天元を呼び出したくはない。だが、自分からの干渉を全て弾いてる天元はその実態が掴めぬ事から、こうして時折呼び出さねばならぬ状況となってしまっている。そんな無惨の苛立ちを知ってか知らずか、天元は変わらず飄々とした物言いで無惨へ語り掛ける。

    「それにしても、無惨様もお人が悪い…小蝿を使って私の身辺を探ろうとするなど」

    天元のその言葉に、無惨は表情を消した。

    「……何の事だ?」
    「小蝿の視線から無惨様の視線も感じました。流石無惨様…あのような小蝿にまで気を張り巡らせ、その視界を利用するなど、私では到底思い付きもしません」
    「……皮肉のつもりか?」
    「とんでもございません。率直な感想でございます」

    無惨の鋭い視線が天元を貫く。だが、そんな無惨の視線にも臆する事なく、天元は目元を細め、口元の笑みを絶やさない。その余裕な表情が無惨の癇に障る。

    「なるほど……貴様は私の視線に気付いていた。つまり、あの時向けた殺気は私にも向けていた、という事で間違いないのだな?」
    「いえ、それは無惨様の自意識過剰…いえ被害妄想……いえ誤解でございます」
    「言い終えた上で二度も言い直すなッ!」

    無惨の思惑では、自分への殺意があったのかを問いただし、慌てさせる筈だったのだが、やはり天元……一筋縄ではいかない……。

    「何故恩義のある無惨様へ殺意を持たねばならぬのでしょう。私は誠に心から無惨様へ感謝しております」
    「それは貴様を鬼にしたからかッ?」
    「当初はそれだけでしたが、今は何よりも、妓夫太郎を鬼にして頂けた事を感謝しております」
    「妓夫太郎を…?」
    「無惨様が妓夫太郎を鬼にして頂けたので、私めは妓夫太郎に出会え、そしてとても可愛らしく愛おしい嫁を迎える事ができました。誠にありがとうございます」
    「ちょっと待て。以前にも似たような事を言われた気がするのだがッ?」
    「それ程私が無惨様に感謝しているという事でしょう」

    ニコニコと満足気に感謝を述べる天元。天元の表情から余裕の笑みが消える事は無い…それを悟った無惨は深く溜め息をつき、

    「もう今日は良い!さっさと消えるが良い!」
    「ハッ……この身、これからも無惨様が為に尽くさせていただきます」

    頭を深々と下げ、そう無惨へ誓い、琵琶の音と共に開いた空間へと天元は落ちていく。

    「……まぁぶっちゃけ、妓夫太郎第一で動くけどな」

    そう言い残して……

    「奴は何故、毎回癇に障る言葉を残していくのだ!?」



    ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



    亜空間・無限城から戻った天元は自身の隠れ家の前に降り立った。あの鳴女とかいう女、良い所に下ろしてくれたなと機嫌良く口笛を吹く天元。そこに……

    「随分とご機嫌じゃねぇか…」

    不機嫌さを醸し出した声が背後から聞こえ振り向く。そこには彼の愛しい嫁の姿…ただ、声と同様に不機嫌な表情をしていたが……

    「妓夫太郎〜!待っててくれたのか〜?」

    気疲れする無惨の呼び出しから帰って来て、即座に見れたその愛しい姿に天元は微笑みを浮かべ、両手を差し伸べながら近寄っていく。だが、そんな天元に妓夫太郎は手を差し伸べる事をせず、

    「……どうせまた女に惚れられたとかしたんだろ」
    「……ん?」
    「良いねぇ色男は。気まぐれで助けただけで惚れられるなんざ。本当、妬ましいぃ妬ましいぃぃなぁぁ」

    ヒヒヒッと笑っているが、確実に不機嫌な妓夫太郎。胸元をボリボリと掻き毟っては血を滲ませていく。

    「こぉら。その癖直せって言ってんだろ?」

    愛しいその身体を、妓夫太郎自身の手であっても傷付くのが許せない天元は、本当は妓夫太郎の身体を抱き締める為に差し伸べた手で、掻き毟る妓夫太郎の手を掴みその行為を止めさせる。そんな天元に妓夫太郎は、眉を顰めては睨みつける。

    「別に良いだろうがぁぁ。テメェが痛いってわけじゃねぇんだからよぉぉ」
    「いやいや痛ぇよ?愛した嫁が傷付く姿はよ」
    「……何だって?」
    「ん?愛した嫁が傷付く姿は心が痛ぇって言ってんの」
    「……ほぉぉ」

    天元の言葉に妓夫太郎はニヤニヤと笑い出す。醸し出していた不機嫌さも少しずつではあるが消えていき、その細い身体を天元の身体へと密着させていく。

    「愛してんのかぁ?俺を」
    「勿論。俺はお前を愛してる」
    「…肉付きの良い身体の顔も整った女よりもかぁ?」
    「んなもん比べるまでもねぇよ。つか、俺が愛してんのはお前ただ一人だって」

    掴んでいた手を離し、愛しい頬をその大きな手で包み込んでいく天元。微笑みを浮かべて見つめれば、妓夫太郎もニヤッと笑い、天元の頸へと腕を回してくる。最早妓夫太郎から不機嫌さは感じ取れない。笑みが浮かぶ口を開いては、天元にだけ聞こえるように、吐息混じりの艶めかしい声で囁く。

    「俺にしかおっ勃てねぇかぁ?」
    「おう。お前にしか勃たねぇよ」
    「…んじゃ、今日もいっぱい可愛がってくれよなぁぁ、旦那様」

    そう微笑んで妓夫太郎は天元へ口付けをする。触れるだけの軽い口付けだったが、天元はそれでも満足気に微笑む。

    (あの小蝿も良い仕事してくれたもんだ)

    別に助ける気はなかった。そこに鬼狩りがいたから殺した。ただそれだけだったのに惚れられて、挙げ句の果ては付き纏われて無惨の視界にも捉えられて…鬱陶しくて始末してしまおうかと思っていた矢先に、妓夫太郎が動いた。天元との仲を見せつけるように甘えてきた妓夫太郎。普段自らしない口付けもしてくる程に積極的で、そんな妓夫太郎に天元はつい欲情を燃やしてしまった。"小蝿"が自分に付き纏ってくれたおかげで可愛い妓夫太郎が見れたと思うと、命だけは見逃してやろうと思った天元は、殺気を向けるだけで終わらせた。その後"小蝿"は完全に姿を消し、もう二度と天元の周りには現れる事はなかった。
    だが、あれからというものの、妓夫太郎はこうして天元の元へ訪れては、女の気配がないかを確認している。自分の容姿に自信のない妓夫太郎は、天元が他の女に取られないか心配で堪らなくなっているのだ。

    (んな心配いらねぇのに。俺にはお前だけだってぇの)

    自分を信用してくれないのは多少傷付くが、こうして自ら来てくれる事、積極的に自分を求めてくれる事が嬉しくて、天元はしばらくはこのまま嫉妬して貰おうかなと、にんまりと微笑む。

    「何ニヤついてんだよ」
    「ん?嫁が可愛すぎて」
    「んじゃ、可愛すぎるその嫁をさっさと可愛がりやがれ」
    「勿論。誠心誠意、可愛がらせてもらうぜ」

    そう告げて、天元は妓夫太郎を抱き上げ、自身の屋敷へと入っていく。愛らしい笑顔を浮かべる妓夫太郎を見つめ、これから訪れる二人だけの濃密な時間に心を弾ませながら、心の中で誓う。

    今はまだ嫉妬して欲しいから言わないが、いつか絶対に、俺が心を許してるのはお前だけだから…何も心配する必要なんてねぇよ…そう告げるからな。可愛い可愛い愛しの嫁様。
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