星に願いを皆が寝静まった深夜、天元は目を覚ました。首を横に向けると、枕元で眠っていた筈の愛しい姿が無い。水でも飲みに行ってるのか?と思い、ふっと視線を窓へと向けると、そこにはちょこんと座る愛しい小さな姿。
「ぎゅうたろう。どうした?」
優しく名を呼べば「んなぁあ」と愛くるしい声で返事をしてくれるぎゅうたろうに、天元は微笑みを浮かべた。
「何だ?外が気になんのか?」
「んなぁぁ」
よく見ると、ぎゅうたろうはカーテンの隙間から空を見上げていた。そういえば今日は…と天元はある事を思い出し、カーテンを開けぎゅうたろうと共に夜空を見上げた。
「…流星群だったな、今日」
空にいくつもの輝きが降り注ぐ天体ショー。自分も直で見るのは初だなぁ…と感慨にふけながら、天元はその宇宙の神秘ショーを抱き上げたぎゅうたろうと共に観賞する。
「んなぁぁ…」
大好きな人の腕の中で、ぎゅうたろうの瞳に映る降り注ぐ幾つもの輝き。ソレはとても綺麗で掴みたくなってしまう。
ぎゅうたろうは賢い子だ。ソレが掴めるものではないと分かっている。だが、思わず差し伸べた手はソレを掴もうと必死に空を切る。その仕草があまりにも可愛くて天元はクスッと笑い、ぎゅうたろうの頭を優しく撫で上げる。
「何だ?アレが欲しいのか?」
「なぁぁ……」
「んー…アレをお前にプレゼントする事はできねぇが、代わりに良い事教えてやるよ」
「んなぁ?」
「アレ…流れ星に願い事を言うんだ。そしたら流れ星がその願いを叶えてくれるって昔から言われてんだぜ」
「んなッ!?」
「どうだ?願い事でも言ってみるか?」
「んなぁぁあッ!」
天元の言葉を理解しているような反応を示してくれるぎゅうたろう。首を傾げたり、キリッとした表情になったり、今は「んなんなんなぁぁ」と本当に願い事を言っているかのように鳴いている。いや、きっと願い事を言っている。
(他の奴に言ったら笑われっかもしれねぇがな)
お前はちゃんと俺の言葉を理解してるもんな。なんたってお前は俺の大事な───
そう心の中で囁き掛け、天元はぎゅうたろうへ語り掛ける。
「どんな願い事言ったんだ?」
「んなぁあッ!んなんな!」
「うーん。皆仲良くずっと一緒にってところか?」
「んなぁッ!」
「お前は本当に優しい奴だな」
ぎゅうたろうの愛くるしい返事にクスクスと笑いを溢しながら、天元はその愛しい後頭部へ唇を落とす。
「俺も、お前らとずっと仲良く一緒にって願いを込めなきゃな」
「んなぁぁんッ」
嬉しそうな表情で天元にスリスリと頭をすり寄せてくるぎゅうたろう。
やっぱり俺の言葉分かってくれてんだな…
そう思うと心から嬉しくて、天元もまたニッコリと優しい笑みを浮かべる。そして、夜空を見上げては願う……
夜空を彩る星たちに想いを込めて…
この幸せな温もりが、永く側にいてくれますように……