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    黒羽(DQアカ)

    Twitterに流しにくいものを垂れ流します。

    2023.05.17 Twitter垢 乗っ取りに合っています…
    近いうちに連携切る事になるかと…。
    無念。

    からの、復活!!!
    ヒィーーーハァーーー!!!

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    黒羽(DQアカ)

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    公式クク主

    旅の途中、9が8君にきゅんとして欲しくて思いついた話。
    女装でダンスパーティ出たり、カジノで働いたりします。

    ・公式(?)998です。
    ・998親友のラインから踏み出そうとしている頃です。『深海の王子様』の後位?
    ・9の過去、マイエラで身体で奉仕経験があるとしています。そして、それを8君知ってます。
    ・9が男に迫られます。

    それでも大丈夫!!な方は是非お進み下さい

    #クク主
    kukuMaster

    カジノトラブル(クク主)◆カジノトラブル◆


    「ストレートフラッシュ。お見事、お客様の勝ちでございます。」

    そう言い、オレは勝者へチップを動かす。

    今、オレはベルガラックのカジノでポーカーの黒服をしている。
    …何故かって?
    人助け…もとい、オレ達には金がないからだ。

    旅の途中、ある事件をきっかけに、ベルガラックの跡取りであるフォーグとユッケの仲を取り持った。
    以来、彼らに大変気に入られたオレ達。
    今回、たまたまこの街に立ち寄り、アイツらに見つかったとたん、「助けなさい!」の一言でこうなった。

    なんでも、大掛かりなカジノイベントを組んだは良いが、人員が足りず困っていたらしい。
    見目麗しく、カジノを仕切れる賢さを兼ね揃え、有事の時には腕も立つ。
    そんな人材はそう転がってる訳はない。
    その点で、オレ達はまさに適任だ。

    さらにはその代価として、このイベントたった1日で相応以上の報酬を出すと言われた。
    オレ達は丁度武具を新調するタイミングで金策に悩んでいた。
    最近は敵も一段と強くなって来ている。
    普段なら魔物退治でレベル上げと並行して金を稼ぐのだが、たった1日で金策になるなら悪い話ではないと、オレが勧めた。
    そして、説得の甲斐もあり、上手く舞い込んだこの話に、エイトが渋々頷いたって訳だ。

    結果、雇い主の采配により、

    ヤンガスは正面と屋敷内の警護。
    ゼシカはバニーのバーテンダー。
    エイトは黒服としてカジノ内の警護。
    オレはポーカースタッフ。

    と、それぞれが今持ち場で働いている。

    これまた、個々の特性を読んだような配置だ。
    そういう意味では、フォーグ達は人の特性を読み、扱うのが上手い。
    優秀な経営者という訳だ。

    そんな事を考えながら、オレは次のポーカーのカードを切る。


    「ねぇ、お兄さん。」

    突然横から、これまた厚化s…着飾ったマダムがオレに声をかけて来た。
    オレはカードをそっとテーブルに起き、顔にビジネスの仮面を被る。

    「はい、いかがされましたか?」
    「見ない顔よね、今日だけバイトなの?」
    「えぇ、特別な催しですので。お声をかけて頂きました。」
    「まぁそうなの…ねぇ、この後のダンスパーティにも参加されるの?」
    「いえ、私は一スタッフですので。」
    「あら、残念…なら今晩のご予定は?」

    …ハイきた。
    これ、今日何回目だろうか。

    正直、客としてカウンターに座り、レディに騒がれるのは嫌いじゃない。
    事実、よりどりみどりだったし、レディと話すのは楽しかった。
    でも、仕事してる時に、こう誘われるのは面倒だ。
    下手な対応が出来ないから、いつも以上に相手の顔色を読まなくてはいけない。

    相手に気を持たせないように、当たり障りなく断る。
    得意分野ではあるが、仕事で定位置から動けないとなると、またそれも難易度が変わる。


    「申し訳ありません、今宵は…。」
    「あら、先約でもあるとおっしゃるの?私、こう見えてこのカジノには相当手を貸しているのよ?」
    「左様でございますか。」
    「あなたもカジノの一スタッフなら、私を無下には出来ないのではなくて?」
    「…。」

    あぁ、めんどくせー。
    これ系が一番面倒臭いし、引き下がらないから厄介だ。
    行きます、って言ってすっぽかすか…。
    後から何を言われても、今日限りのバイトであるオレの知ったことじゃないもんな。


    「失礼致します、マダム。」
    「あら…。」

    そう思っていると、横から黒服の格好をしたエイトが厚化粧マダムへ声をかける。

    「入口付近で、侯爵閣下がお呼びです。」
    「まぁ、何故私が侯爵婦人だと?」
    「本日のお召し物の特徴を伺いました。あと、輝く程の瞳の美しい方であると…貴女様かと思いましたが、過ちでしたらお許しを。」
    「ふふ…お上手ね。案内してくださる?」
    「勿論。お手をどうぞ。」

    そう言い、エイトは慣れた所作で厚化粧マダムの腕を引いて行く。

    …助かった。
    そのまま、オレはポーカーの台をスタートさせた。






    数分の休憩時間、スタッフルームでエイトと休みが被った。

    今日のエイトは前髪を上げて、片耳にかけており、いつもの幼い印象から、ガラリと見違えるようだ。
    加えて、さっきのあんな対応まで見たら、まるで別人に見える。

    「エイト、さっきはサンキューな。」
    「ククールこそ、お疲れ様。」

    そう言い、エイトは手に持っていた飲み物をオレに手渡す。
    カジノの中は乾燥してるから喉が乾く。
    エイトの隣に座り、オレは飲み物をくいと飲み干した。

    「でもさ…正直意外だったわ。お前、こういう社交場に随分慣れてるんだな。」
    「まぁ、一応王宮兵士だからね。」
    「さっきのは特に驚いたぜ?瞳の美しい方…だっけ?まさかお前から、あんなキザなセリフが飛び出すとはな。女性を連れ歩くマナーも完璧じゃん。」
    「いやぁ…あの台詞は咄嗟に出たものの、恥ずかしくて今でも顔から火が出そうだよ。」

    そう言い、エイトが片手で顔をパタパタとあおぐ。
    思い出したら余計恥ずかしいのか、髪から覗く小さな耳がほんのりと赤くなっている。

    さっきはあんなにかっこよかったのに…今はなんだか可愛い。

    「ふふっ…助けてもらっておいて悪いけどさ。オレ笑わないように、ポーカーフェイス作る方がキツかったぜ。」
    「僕の経験上、お酒入ってる人って、あのくらいのセリフで気持ちよくなって貰わないと、急に逆上する人いるんだよね…。」
    「あぁ、それは違いない。いい判断だったと思うぜ。」
    「うん、ありがとう。」

    そう言い、エイトがへにゃりと笑った。

    …良かった、いつものエイトだ。
    あまりのギャップに、オレはこっそり胸を下ろした。

    「あ、そうだ!言おうと思ってたんだ。…君、さっきちょっと面倒くさくなってたでしょ?」
    「え、わかった?」
    「顔見てたら分かるよ。雑な仕事はいつか身を滅ぼすからね?後半から気をつける事。」
    「はいはい、我らがリーダー様。」

    そう言い、オレは肩を上げる。
    その次の瞬間、エイトが急に頭を抱えた。

    「…でもね。正直…気持ちはわかる。」
    「ん?」
    「モテすぎなんだよなぁ…君とゼシカ。」
    「あー(笑)」
    「普段一緒にいると忘れがちだけど、こういう場にくると思い知らされるよ。君達は本当に美形なんだなって。」
    「お褒めに預かり光栄です。」

    そう言い、オレは胸に手を当て、エイトに冗談半分の会釈をする。
    エイトはそれを見ると、様になるねぇと笑った。

    「君は、10分に1回は巡回しないと女の人に捕まってるし、ゼシカは細かく見ていないと、男の人が変な事しだすし…。」
    「変な事?」
    「さっき、飲み物に薬入れられそうになってた。」
    「は?やば…。」
    「でしょ?色々危ないから、その人捕まえて、さっきヤンガスに引き渡して来た。」
    「あーらら。そいつ、ご愁傷様だな。」
    「ゼシカに何かあってからじゃ遅いから。」

    そう言い、無垢な笑顔でオレを見る。
    普段はそこまでしなくても…という程の博愛主義者なのに。
    仲間を傷付ける相手に、エイトは全く容赦しない。
    (馬姫様が攫われた時もそうだった。)

    …そういうところ、オレは結構好きだ。


    「…というわけで、君も気をつけてね。こういう場では特に女性は傷付きやすいから。適当にあしらって、数日後に後ろから刺された、なんて事がないように。」
    「オーケーオーケー。そんなヘマはしないさ。逆にエイト、お前こそ気をつけろよ?」
    「え?僕?」
    「ちょっとオトナの色気出てる。」

    そう言い、オレはエイトの横髪をそっと耳にかけ直す。
    エイトはきょとんとオレを見つめる。
    なんか可愛い。
    急に、子供が大人の服を着たみたいだ。

    「…そ、うかな?//」
    「うん。今日は一段とかっこいいよ、エイト君。」
    「君に言われてもなぁ…。」
    「なんでだよ。オレに言われてんだぞ?自信もてば?」
    「…はぁ。君がカッコ良すぎるんだって。」
    「さ、そろそろ休憩終わりだろ?お互い、お金のために頑張りましょうね。」
    「言い方が生々しいなぁ。」

    そう言いながら、オレたちは後半の業務に戻った。





    後半は、カジノで儲けた金持ちどものパーティがある。
    オレは黒服としてパーティ会場のドリンクの品出し担当だが、聞くとエイトは違うようだ。
    詳しく聞いても、敵を欺くには味方から…などと訳の分からない事を言って、教えてくれなかった。
    まぁいいか、とオレは脳内を切り替えた訳だが。


    「お兄さん、飲み物頂戴。」
    「かしこまりました、レディ。」

    オレは呼ばれる度に、トレーのアルコールを配って歩く。
    かなり大人数のパーティだ。
    全員が、耳に指に首に、大きな宝石を着けている。
    辿れば、名のある地位をもつ人間も沢山いるだろう。

    (コイツらからこっそり、一つずつ宝石を拝借した方が早いんじゃねーか?)

    これだけ宝石を侍らせていれば、一つなくなったって分りゃしないだろう。
    そんな邪な考えさえ浮かんでくる。
    …ま、冗談だけど。


    オレは新しいワインを開けるため、会場外の裏のワインセラーに入る。
    見れば、さすがという所だ。
    ワイン好きにはたまらない品揃えでワインが並んでいる。

    いいな。
    将来…オレもどこかに落ち着く事があったら、自分のワインセラーを持ってみたい。
    そんな事を考え、品定めをしていた時だ。

    突然、するりと尻周りに人の手が当たる。
    違和感を覚え振り向くと、プライドの高そうな、ブロンドヘアの若い男が立っていた。

    (…何でこんな所に?まさか。)

    嫌な予感を感じながらも、オレは顔に仮面を被り、にこりと微笑んで見せた。
    すると、ブランドの男はニタリと口元で笑うと、そのままオレの腰に手を回す。

    (そのまさか、か。)

    オレはさっと男から距離をとるが、すぐに男はその分距離を詰めて身体を寄せて来る。
    何度かこの動作をしていると、突然グッと腰を引き寄せられた。

    「君、とても美しいね。」
    「…ありがとうございます。」
    「君のような子と、こんな所で出会えるだなんて思わなかったよ。来た甲斐があったというものだ。」
    「お褒めに預かり光栄です。」
    「僕は美しい男(ひと)が好きでね。今夜、部屋に来ないか?いいシャンパンを持って来ているんだ。」
    「…。」

    そう言い、男はオレのあごに指を添える。


    (…マジか〜。)

    オレは内心天を仰ぐ。
    金持ちの中に、まぁまぁの頻度でいるんだよな。
    綺麗なおねーさんより、おにーさんを好むやつ。

    さて、どうするか。
    さっきエイトに釘刺されたばかりだしな…無下にすると、面倒そうな相手だし。

    …てか、オレに触るな。
    気持ち悪い。


    「お客様、申し訳ございません。業務中ですので。」
    「分かっているよ?だから、今夜と誘っているんだ。私はこのカジノに相当な金を入れている。ご機嫌を取っておくべき相手だよ。賢そうな君なら分かるね?」
    「…。」

    なまじ賢い相手だと、こうして先に逃げ場を塞いでくる。
    あぁ、面倒くさい。

    「悪いようにはしない。天国を見せてあげるよ。これはその証拠さ。」
    「!」

    そう言い、男はオレのケツポケットにチップらしきものを挟んだ。

    「いけません。」
    「そうかな?君だってこの容姿だ。過去に色々と経験があるだろう?」
    「…っ。」
    「大丈夫、私は上手いよ。ちゃんと気持ち良くしてあげる。」
    「…。」
    「ふふ…もしかしたら、君の方が私から抜け出せなくなってしまうかもな?」


    オレはニコリと綺麗に微笑んだ。

    …さぁて、随分調子に乗ったコイツをどうしたもんか。
    今回ばかりは約束だけしておいて、すっぽかすしかないよな。
    この無礼極まりない、ブロンドクソ野郎を殴らないだけ許せよ?
    そう、オレは心の中でエイトに弁明する。

    そんな時、新しい声がワインセラーの中で響いた。


    「離してください。」

    「は?」
    「エイ…!」

    直前に目を伏せて耐えていたから、人が近くに来ていたことに気づかなかった。
    エイトの声に少しほっとして、オレは声の方を見る。

    エイト待ってたぜ!
    早くオレを助けろ!

    ……エイト?

    次の瞬間、オレはポカンと目を疑った。

    目の先には、ふりふりの青いドレスを来たエイト(?)がこちらを睨んでいる。
    髪は長いウィッグを被り、顔にも薄く化粧を施している。
    声を聞かなければ、見た目はどこぞのお嬢様だ。

    オレは言葉にならず、ただ男に腰を抱かれたまま、エイトを見る。
    エイトはオレたちに距離を詰めると、また口を開いた。


    「手、離してください。嫌がっています。」
    「だ…誰だね君は?私たちは商談をしているんだよ。」
    「もう一度だけ言います。その手を離してください。」
    「はは…なんなんだお前は?私を誰だと思っている?」
    「…忠告、しましたからね。」

    どこか噛み合わない会話。
    最後のセリフをきっかけに、エイトは俺の腰を抱いていた男の腕を掴むと、グイと捻り上げる。

    「ぐ、あぁあ!」

    それは、赤子の手を捻るかのように、いとも簡単に。
    男はビクビクと震えるが、エイトの腕はピタリと動かない。
    力の差は歴然だった。

    「この手…離せって、言った。」
    「な、んだお前は!?女なのか!?」
    「貴方、さっき彼に失礼なこと言いましたね。謝ってください。」
    「ぐ、ああ!やめ、やめろ!折れる!」
    「…早く。謝れ、と言っている。」

    「お、おい!エイトやめろ!」

    ギリギリと、男の腕をひねり続けるエイト。
    とても見ていられず、思わずオレは止めに入った。
    …止めなければ、本当にやってしまいそうだった。

    そのままエイトは真顔で続ける。

    「今この時をもって、あなたは今後このパーティは出禁です。」
    「く…ふざけるな!この仕打ち、タダで済むと思うなよ女!どこの家柄か…必ず見つけ出して潰してやる!」
    「貴方、サザンビーク領東の領主の息子、ですよね。毎回このパーティで綺麗な男の人にちょっかいかけては傷つけてるって有名だ。だから今回、現場を抑えるため、ずっと待ってたんですよ。」
    「は、何だと…?」
    「フォーグ、ユッケ。これでいいんだよね?」

    そう、エイトが言うと、後ろから主催者の2人が顔を出す。

    「ナイスよ。用心棒さん。」
    「やっと捕まえることが出来たな。」

    そう言い、ワインセラーの外からフォーグとユッケが顔を出し、こちらに歩いて来る。

    会話で何となくわかった。
    この男をハメる為、オレは囮にされていたって訳か。

    「あなた、なかなかしっぽ出さないんだもの。」
    「今回で仕留める、そう思って張っていた。」
    「な、んだと!?」
    「あら、ご不満がおありなの?今までの事も含め、貴方のお父様に報告してもいいのよ?」
    「厳格なお父上の事だ。最悪勘当も免れないのではないか?」
    「そ、それだけは!それだけは辞めてくれ!」

    男は嘘のように狼狽始めた。
    …相当父親が怖いと見える。
    すると、ここぞとばかりにユッケが笑う。

    「あは!素直ね。いいわよぉ?その代わり、貴方はもうこの社交場には2度と来ちゃダメ。」
    「こちらの品位を損なう行為は見逃せない。」
    「わ、わかった…分かったから…父上にだけは…!」
    「約束は守ろう。ただし、そちらが約束を破った時は俺たちもしかるべき行動に出る。」
    「わ、わかった!」

    …先程までの勢いはどこに行ったのか。
    男はヘコヘコと腰低く、オレに謝った。
    その後、あれよあれよとその場は治められた。
    (セクハラブロンド男はやや乱暴に、エイトからヤンガスの手に、無事に引き渡された。)





    「そーゆーことだったワケね。」

    あの後、会場の外に出た。
    喧騒から離れたベランダでエイトと2人、風に当たる。
    オレはお役御免として、黒服の前ボタンを開けてワイングラスを回した。
    今回のご褒美に、好きなワインを開けていいというので、遠慮なく選ばせて頂いた。

    「うん…ごめんね。」
    「なんでお前が謝んの?」

    気持ちいい風が吹き、オレはそっとワイングラスに口を付ける。
    その隣で、女装姿のままのエイトがしょぼんとしている。

    「言い訳だけど…今回は初めから君が囮だった訳じゃないんだ。綺麗な男の人が狙われるから、可能性はゼロじゃなかったけど…まさか君だとは。」
    「なるほどな。こんなに人間がいる中でオレに目を付けるなんて、アイツ見る目だけはあったかもな。」
    「僕…この話を受けた時、君に何かある前に、絶対捕まえるって決めてたのに。」
    「ん?捕まえたじゃん。」
    「君…酷いこと、言われてた。」
    「酷いこと?」
    「…忘れてるならいい。」

    そう言い、エイトがそっぽを向く。
    その顔がなんだか可愛くて、オレはフと笑った。

    「経験あるだろ、のクダリか?」
    「…そう。」
    「ばぁか。あんなの大した嫌味じゃねーよ。気にすんな。」
    「でも…すごく失礼だ。君の事、何も分からない癖に…あの人、本当に最低な事言った!」
    「言わせとけ、言わせとけ。それに、エイトが捻り上げてくれたじゃん。」
    「君が止めなかったら、僕多分あの人の腕折ってたと思う。」
    「だろうな。」

    そう言い、オレはまたワインを口に含む。
    エイトはバツが悪そうに、ウィッグの髪をくるくると指で回している。

    「ごめん、僕本当カッとなりやすくて…気をつけなきゃだよね。」
    「ばぁか!仲間が関わる時だけだろ?むしろ、お前は温厚過ぎるくらいだぜ?」
    「?そんな事ないと思うけど。」
    「自覚なし?まぁいいけどさ。…カッコよかったよ。お嬢様?」

    そう言い、オレはエイトの長いウイッグを右手でサラと梳く。
    すると、エイトが少し目を丸くする。

    「…ククール、なんか機嫌いい?」
    「少しね。」
    「なんで?」
    「たまには、ああやって守って貰うのもいいなぁって思ってさ。」
    「…。」
    「嬉しかった。オレの為に怒ってくれて。」

    そう言い、オレはエイトに微笑んだ。

    …あれ、ワインを飲みすぎたかな。
    普段は絶対言わないような言葉が、自分の口からスラスラと出てくる。

    これは本音だ。
    深い、心の奥にある本音。
    初めて…かもしれない。
    オレの為に怒ってくれた人間。
    素直に、心が温かかった。


    「守るよ。」
    「ん?」

    エイトが、そっとオレの右手を握る。
    オレはエイトを見つめると、エイトは真剣な目でこちらを見ている。

    「君の事、僕が守るから。」
    「…。」


    真っ直ぐ、深い漆黒の瞳がオレを貫く。

    …あぁ、コイツ。
    本当に真っさらだなぁ。

    オレは急に、自分がどこか虚ろになるのを覚えた。

    だってオレは…随分と汚い世界で、汚い大人の中で育ってきたから。
    騙し、落とし、汚し。
    身の回りにはそれが溢れていたし、それが当然だったんだ。
    みんな、自分の事で手一杯。
    誰かのために動こうとするやつはいなかった。

    だからこの旅で、エイトみたいな人間に、オレは初めて出逢ったんだ。

    どうしたら、そんな風にまっすぐ在れる?
    どうしたら、お前みたいに素直でいれる?

    時折、お前が眩しすぎて苦しくなるよ。
    お前はとてもあったかいのに、その分自分が惨めになるんだ。

    …お前の隣に居たいのに。
    お前の隣には、オレは相応しくないのではないかと、全身が悲鳴を上げるんだ。


    「…うん。」
    「ククール?」
    「いや…ありがとな。」
    「ククール…もしかしてかなり酔ってる?」
    「おい!お前…せっかくオレが素直に感謝の言葉を言ってるってのに!」
    「えっ!?ごめんごめん!なんか珍しく真面目な感じでいうから!」
    「はぁ…お前な、本当そういう所だぞ。」
    「ごめんってば。」
    「許さない。」
    「わ!」

    ぐい、とオレはエイトの腕を引き、その唇に口付ける。
    ぷに、と柔らかい感覚。
    ゆっくり顔を離すと、エイトがキョトンとこちらを見上げる。

    「…え?な、に?」
    「ふはっ!奪っちゃった〜。」
    「えぇ…。」
    「何?もしかして初めてだった?」
    「初めて…ではないけど。」
    「はぁ?エイトのくせに生意気な。」
    「何それ…それより悪ふざけしすぎだよ。男同士で何やってんのって思われちゃうでしょ。」
    「大丈夫大丈夫〜!だって今、エイト君はお嬢様だからな。」

    そう言い、オレはエイトの細い腰を抱く。
    エイトがオレの左腕にすっぽりと収まっている。
    男のくせに、なんでこんなに抱き心地がいいのか不思議だ。

    「そういや、なんでお前女装してんの?」
    「あぁほら…さっき捕まえた人、男の人好きだっていうから。だから女装しておけば彼の男漁りセンサーから外れて動きやすいでしょって、ユッケが。」
    「なるほど。結構可愛いじゃん。」
    「嬉しくない。」
    「守ってくれてありがと。お嬢様。」

    そう言い、またオレはエイトの頬にキスをする。
    エイトが、んっと小さく声をあげる。

    「もー、好きにして。」
    「怒んないの?」
    「君、かつてなくご機嫌だから。」
    「そう。じゃー遠慮なく。」

    そのまま、まるで子犬を愛でる感覚で、オレはエイトにキスを繰り返した。





    〜翌日〜


    「ちょっとククール!昨日後半、仕事サボってたでしょ!」
    「?何の事だ?」

    朝、昨日の報酬を貰うため、エイトとヤンガスがフォーグとユッケの屋敷に向かったのを見送ると、突然ゼシカから問いただされた。

    「とぼけても無駄よ。本当手が早いんだから。」
    「だから、何の事だって。」
    「私、見たんだからね!後半のパーティの時、ベランダで青いドレスの女の人口説いてたでしょ?」
    「…あ。」
    「腰抱いて、随分イチャイチャしてたけど?その間も働いてた私たちの身にもなりなさいよ!」
    「っはは!」

    怒るゼシカの隣で、オレは思わず吹き出した。

    「な、何がおかしいのよ!」
    「いや、悪い。そう…確かに、イチャイチャしてたかもな。」
    「認めたわね!?昨日サボった分、今日の買い出し当番はあんたがしなさいよ!」
    「そう妬かないでくれよ。あれは昨日だけ…一晩だけの夢さ。」
    「最ッ低。」

    そう言い、ゼシカが『本日の買い物リスト』を俺の胸にバシ!と叩きつける。
    そのまま、ズンズンという効果音がつくような足取りでゼシカは宿に戻って行った。

    …誤解というか、正解というか。
    ゼシカも、昨日はウザい客の相手でほとほと疲れただろう。
    イライラするのも道理か。

    仕方ない。
    昨日のクソ野郎からもらった(?)チップで、スイーツでも買って来てやるか。

    そう心に決めると、オレは1人買い出しの旅に出た。





    【完】

    ほら、ありましたよね?
    ベルガラックのエイト君女装イベント。(※ない)
    あのイベント(※ない)を少し膨らませてみました。

    まだお互い親友?位の温度。
    ですが、9が脳内で理解する以上に8君のそばにいたい、もっと近くにいたいと思い始めてる頃です。
    お酒入ってご機嫌になったら、余計に8君が可愛くて仕方なくて、キス魔になってる9さん。
    8君なことがカナリ好きになってきていて、だからこそ自分の育ちに引け目を感じ始めている。
    でも、まだそんな事まで理解してない。

    8君も、仲間はみんな大切だけど、9は年も近くてちょっと特別。
    実は一番頼りにしてるし、何かあったら意見を聞きたいし、この温度が丁度いいなって思ってます。
    お酒飲んでご機嫌になるのは、トロデーンの頃異性関係ゆるい先輩とかで体験すみなので、ちゅーとか普通にされてます。(多分飲みの席で。)
    先輩にちゅっちゅされるのは嫌だったけど、9にちゅっちゅされるのはなんとも思わない(むしろ素直で可愛いとか思ってる)。
    それが恋情だと、まだまだ気づかない。
    (ちゅーはそれなりに済ませているけど、8君が自分からしたいと思うキスはまだ未経験。結構唇奪われる系男子。)

    ここまでお読み頂き、ありがとうございました。

    2024.09.01 黒羽

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