Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    黒羽(DQアカ)

    Twitterに流しにくいものを垂れ流します。

    2023.05.17 Twitter垢 乗っ取りに合っています…
    近いうちに連携切る事になるかと…。
    無念。

    からの、復活!!!
    ヒィーーーハァーーー!!!

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖
    POIPOI 59

    黒羽(DQアカ)

    ☆quiet follow

    ◆マイエラif◆

    書いてしまいました。
    …出来心だったんです。

    ※本作、カナリ好みが分かれると思いますので、
    以下、皆様のお好みでどうぞ…。
    ・エイト君が、マイエラで拾われていたらif。
    ・クク主ですが、本編とは大分違います。
    ・今後、フツーにモブにやられてます。
     (直接の描写は無いです)

    大丈夫な方からお進み下さいませ。

    #クク主
    kukuMaster

    マイエラif 〜春〜◆春◆


    アイツが来たのは、
    忘れもしない…春の事だ。

    初めて見た時、そいつはオディロ院長に手を引かれ、荷物も持たずに裸足で立っていた。
    唯一、オレンジ色の大きなバンダナを腕に巻いていたのが印象的だ。
    そんな身なりからか、捨て子…にしてはどこか酷く違和感があった。

    拾われて来てから、そいつはしばらく熱にうなされ、寝込んでいた。
    オディロ院長と…オレには意地悪なアイツでさえ、そいつの為に付きっきりで看病していた。

    体調が悪いんじゃ仕方ない。
    今までは、新参者だったオレを、1番に気にかけてくれていたオディロ院長。
    それが、そいつにかかりきりになるのも理解できる。
    …オレだって、いつまでもガキじゃない。

    でも、そいつの体調が落ち着いても、オディロ院長の注意は変わらなかった。
    何故なら…そいつが、言葉を話せなかったからだ。

    きっと、心に深い傷を負ったのだろう。
    そう言い、優しいオディロ院長は、そいつの側にいつも寄り添っていた。

    …オレだって、心に深い傷を負っているじゃないか。
    なのに、そいつがずっと優遇されている、その現実が悔しかった。

    これは理屈じゃない。
    ガキみたいな事言ってるなんて、百も承知だ。
    でも、負の感情が…オレをどんどん嫌な人間にしていった。


    「ククール。」
    「は、はい!」

    久しぶりに、オディロ院長に呼び止められた。
    自分を見てもらえた。
    それが嬉しくて、笑みが抑えられなかった。

    …なのに。


    「あの子は、エイトというらしい。今は自分の名前以外、思い出せない。言葉は分かるが、話す事が出来ない状態だ。」
    「……。」
    「ククール、お前さんがこの修道院で、1番歳が近い。優しいお前さんなら、エイトもきっとすぐに心を開くじゃろうて。」
    「……。」
    「ククール。エイトの事、頼んだぞ。」
    「…はい。オディロ院長。」


    …ほら、アイツの心配ばっかり。
    なんでだよ。
    この前まで、『そこ』にはオレがいたのに。

    久しぶりにオディロ院長に撫でてもらえたのに、心が全く満たされない。
    胸の中が、ぐるぐるする。
    なんで、アイツはずっとみんなに優しくされてるんだ。
    なんで、あそこにいるのが…オレじゃないんだ。

    …悔しい。憎い。
    アイツもオレと同じ、捨て子なんだろ?
    オレと同じ土台にいるんだ。
    オレと同じ立場にあるべきじゃないのか。

    そんな先入観を持ったまま、オレは初めてアイツの部屋に行った。



    「…入るぞ。」
    「……。」

    カチャリ、と静かに扉を開けると、ベッドの上で起き上がっているアイツを見つけた。
    ぱっと見、オレより2.3個年下だろうか。
    布団の上に…何かネズミが居る。
    コイツ…捨て子のくせに、生意気にペット飼ってるのか?

    そんな事を思っていると、アイツがジッとこちらを見つめた。
    その視線を受けて、オレはようやく名乗る事にした。


    「オレ、ククール。ここではお前の先輩。」
    「……。」
    「オディロ院長が、お前の事心配してるから。様子見に来た。」
    「……。」
    「それだけだから。」

    それじゃ、と踵を返す。
    …だって、オレこいつと話す事、何もないし。


    「く、くーる。」
    「!」

    後ろから、たどたどしく名を呼ばれ、思わず声の方を振り返る。
    …大きな漆黒の瞳が、じぃっとこちらを見ていた。
    なんだか、胸がざわりとした。

    「…なに?」
    「ククール。」
    「……。」
    「…よろ、しくね。」

    そう言い、そいつはにこりと笑った。
    空いていた、部屋の窓から、風がふわりと花びらを運んできた。


    …何故だろう。
    攻撃的な事をされた訳じゃないのに。

    オレはこの瞬間、コイツに苛々していた。









    数週間後、あいつは体調も良くなり、個室から集団部屋に移って来た。

    …この世界では、ここからが本番だ。

    修道院なんて名乗っては居るが、ここに居る奴らは基本腐った奴らばかりだ。

    みんな、私利私欲しかない。
    いつも自分の事だけを考えている。
    他人を蹴落としても、自分の物を確保しようとする。

    でも、そうなるのも当然だと、オレはいつしか感じる様になってきた。
    何故なら、ここにいる全員が、奪われた経験しかないからだ。
    与えられる事に慣れてないなら、みんな自分の事だけでいっぱいなんだ。
    …オレを含めて、ね。

    …まぁ要するに、
    新人に優しくする奴なんていないって事だ。



    ガシャ!

    「おい、新人なんだ。俺たちの分も先に来てちゃんと掃除しとけよ!」
    「ご、めんなさ…!」

    「お前、掃除一つ出来ないのかよ。あんなにオディロ院長に手をかけてもらっといて、本当情けねー奴。」
    「…ご、めんなさい。」


    …ほら始まった。

    いつでも居るんだ。
    新人を虐めたくて虐めたくて、仕方ない奴。
    見れば、4人であいつを囲み、口々に小言を吐いている。

    オレだって、最初の頃はこの洗練を受けた。
    途中から、バカバカしくて上手く交わす術も身に付けた。
    お陰で、若干ここでは浮いている。
    …別に気にしてないけど。


    「おい、何見てんだよククール。」
    「…はぁ?」
    「何か文句あんのかって言ってんだよ、生意気な目で見やがって。」
    「……。」

    流石に見ていたのに気付いたのか、リーダー格の奴がオレに声をかけて来た。

    (…つまんねー飛び火だな。)

    そう思い、オレは床で、雑巾のバケツの横に座り込んでいるアイツを見た。
    …アイツは、またあの大きな漆黒の瞳でこちらを見ている。
    助けてくれと、視線が言っている。

    そりゃそうだろう。
    誰だって、こんな事されたら助けを求めるさ。


    …だからさ…その姿勢が、腹立つんだ。
    その大きな漆黒瞳が、オレを苛立たせるんだ。

    …昔の自分を、思い出してしまうんだ。

    だから、オレを、その目で見るな。



    「…甘いなって。」
    「…は?」

    オレはツカツカと足早に近寄り、アイツの側のバケツを両手で持ち上げる。
    そして、バケツをアイツの頭上からひっくり返した。

    ばしゃあ!と、そいつは水浸しになる。


    「ッ…!!」
    「新人には、身体で教えてやらないと分からないだろ。」
    「…え。」

    いじめっ子達はポカンとしている。
    辺りから、一瞬音が消えた。
    ポタ、ポタ、と、アイツの髪から水滴が落ちる音が響いた。

    そのまま、オレはバケツをガン!と投げ捨てると、修道院の外に出た。
    後ろは振り向かなかったから、水をかけられたアイツがどんな顔していたかは分からない。

    そのまま、修道院の裏の川縁まで歩くと、オレはどか!と座り込んだ。

    …何ていうか、
    ああいう事、初めてした。

    心はどうだろう?
    胸に手を当ててみると、苛々は少し治っている。
    でも、何かが引っかかったまま、外れずにいた。







    その後、アイツをいじめた事がマルチェロの耳に入り、オレは不覚にも拷問部屋で3時間の折檻と3日の断食を受けた。

    言いつけたのは、間違いなくあの4人組だろう。
    これは、アイツらに口止めしなかった、オレのミスだ。


    拷問から久々に解放されたオレは、自室という名の集団部屋に戻る。
    部屋割りは、色んな都合で定期的にシャッフルされるシステムだ。
    オレが部屋に戻ると、このタイミングでアイツと同室になっていた。

    部屋の前の部屋割りの名札を見て、オレは盛大なため息をついた。


    (…流石に気まず。)

    神は本当にいるのだろうか。
    こういう時に、オレは神を1番に疑う。

    意を決してオレが部屋に入ると、奥のベッドでアイツが本を読んでいた。
    タイミングはさらに最悪で、6人部屋に今はそいつと2人きりだ。

    入口にオレを見つけると、そいつはビク!と身体を震わせた。
    …そりゃそうだ。
    ニコニコ寄って来たもんなら、流石に精神を疑う。

    そのまま、オレは自分のベッドを見つけて横になる。
    正直、3日の断食よりも、マルチェロの3時間の折檻の傷の方が辛い。
    覚えたてのホイミをかけてみたが、まだまだ効きが悪く、精々止血になった程度だ。
    …オマケに打身のせいか、若干熱もある。
    その為、アイツに構っている余裕もなく、オレは薄い布団を頭までかぶった。


    「……。」
    「……。」
    「……あの。」
    「……。」
    「…だい、じょうぶ?」

    布団越しに、アイツの気配を感じた。


    (え…話しかけてきた?いやマジで?精神を疑うわ。)

    オレは布団の中で天を仰いだ。
    そして、そのまま黙って動かずに、無視しておく事にした。


    「……ごめん、なさい。こんな事に、なる、なんてしらなくて。」
    「……。」
    「ぼく、が…はやく、着替えて、いたら。バレなかったのに。」
    「……。」
    「いたかった…?よね?」
    「……。」

    ぽつり、ぽつりと、アイツの声が聞こえた。

    はぁ…信じられない。
    信じられない、イイコちゃんぶりだ。
    ここに来て、1番に無くすはずの労いを、まだ持っている。
    あぁ、ほら。
    また要らない言葉が出て来てしまう。


    「本当…アンタのせいで、このザマだ。」
    「ご、めんなさ…い。」
    「…はぁ、こっちくんな。苛々する。」
    「…!ごめ、なさい!」

    そう言い、そいつが離れた事を気配で悟る。

    それでいい。
    もうオレの視界に入らないで欲しい。
    コイツと関わると、ロクな事がない。
    そう思い、オレは意識を手放した。







    …その夜、オレは高熱で熟睡出来ずにいた。
    慣れたはずの硬いベッドすら辛い。
    寒い。全身が悪寒で震えている。

    「…はぁ、はぁ。」

    息が辛い。
    身体が熱い。
    ろくに栄養も取ってないせいか、胃が空でガクガクする。

    「…み、ず。」
    「……はい。」
    「…?」
    「…おみず。あと、薬草…のめる?」
    「……。」

    部屋は暗がりのままだった。
    小さな声に導かれるまま、オレは上半身をゆっくりと起こす。

    コップの水が口元に当てられ、ゆっくりと喉に流し込まれる。
    すぐ側には、薬草をすり潰した匂いがする。

    「…げほっ、げほっ!」
    「だいじょうぶ?ゆっくりでいいから…。」

    そう言い、声の主はオレの背中を摩った。
    そのまま息を整え、オレは薬草と水を交互に飲み干した。

    「あと、これ。少しだけだけど、食べれる?」
    「…?」

    口元に、小さな固形物が当てられる。
    …香りで、林檎だとわかった。
    この修道院で、林檎…どうやって仕入れたんだ?
    そんな事を思いながら、しゃくりと一口含んだ。
    口の中から、薬草の苦味が消えた。

    「だいじょうぶ。すぐに良くなるよ。」
    「……。」
    「ゆっくり、寝てね。」
    「……お母、さん。」
    「……。」

    そのまま、オレは再び意識を手放した。







    次の日、目覚めると嘘のように身体が軽くなっていた。
    久々の朝食にも在り付け、身体の傷も良くなったので、朝風呂にも入った。

    …夢心地に覚えている。
    あの声は、間違いなくアイツだ。

    はっきり、仇を恩で返された。
    こんな屈辱的な事はない。

    起きた時には、アイツはもう部屋にいなかったから、まだ会話出来ていない。
    流石に、この状態で何も言わないのは、人としてどうかと思うので、オレは取り急ぎアイツを探す事にした。

    …なのに、探しても探しても、アイツが見つからない。


    「…なぁ、聞いたか?例の新人。」
    「あぁ。オディロ院長の自室から林檎と薬草を盗んだらしい。」
    「…!」

    すれ違った修道士の会話に、オレは足を止めた。

    「オディロ院長の自室からってのがな…まるで盗人だ。」
    「拾って貰った恩をこんな形で返すとは。」
    「オディロ院長はお優しいから、理由を聞いていたが、食べたかったからの一点張りだろ?」
    「今はマルチェロ様のお叱りを受けているそうだ。」

    「…!」

    オレはハッと息を飲んだ。
    まさか…そんな事が?
    オレは走って拷問室に向かった。



    「おい!」
    「ぁ…。」

    拷問室に着くと、丁度折檻を終えたアイツが出てくる所だった。
    左頬が赤く腫れている。
    他にも、全身打撲だらけになっていた。

    「お、おまえ…!」
    「ぁ、はは…君はすごいね…。」
    「は?何だって?」
    「こんな…ツラいこと…に、耐えて。」
    「…!」

    かくんと膝が折れ、アイツが床にどしゃりと倒れ込む。
    情けない事に、オレの力では支えきれず、倒れ込んだコイツを後から抱き上げた。
    足元で、例のネズミが心配そうにチョロチョロしている。

    …信じられない。
    感情がぐるぐるして、胸がバクバクと打つ。

    「…お前、ばかじゃねーの?」
    「…ぇ?」
    「何笑ってんの?ばかなの?」
    「…ばかじゃ、ないよ。」
    「いや。ばかだろ。何やってんの?本当ばか。ばかだ。ばかばか。大ばか。」
    「…ふ、ふ。君、それしか知らないの?」
    「……ばか、やろ。」
    「……。」


    コイツを抱き上げた、腕が震える。

    自分のために人が傷付くという事は、なんて恐ろしい事なのだろうか。
    自分が傷付く事の方が、100倍楽じゃないか。

    オレは、産まれて初めて、
    自分のせいで何かを失うかも知れないという恐怖を感じた。


    「…ちょっと待ってろ。」
    「…?」

    両手に魔力を集中させ、心から天に祈る。
    …神様、目の前の…コイツの傷を治して下さい。

    「…ホイミ!」
    「!」

    次の瞬間、ふあぁっと淡い緑の光がコイツの傷を覆い、じわじわと頬の腫れが引いていく。

    「…ふぅ。」
    「っすごいや!君、魔法がつかえるの?」
    「…ぁ、え?」
    「みて!ほっぺた、全然いたくない!腕も打撲がきえてる!」
    「…あ、本当だ。」
    「僕、魔法はじめてみた!ククールはすごいね!」
    「……。」

    ぺちぺちと自分の頬を叩いて見せる。
    確かに、頬の傷含め、全身の打撲が消えている。

    「…初めて成功したかも。」
    「え?なに?」
    「な、なんでもねーよ!それより、もうこんなばかな真似するなよ!」
    「うん!もうしない!」
    「…ったく。」
    「でも、僕オディロ院長にちゃんと、あやまりに行きたいんだ。」

    そう言い、目の前のそいつはオレの顔をチラチラと見る。
    …ついて来い、という事だろうか?


    「…オレも、ついて行ってやるよ。」
    「!ほんとう!?…よかったぁ。実は僕、この建物、オディロ院長のおへやしか覚えてなくて…。日中はどこにいるかわからなくて。」
    「…ん?まさかお前、だから昨日の夜…食堂とかじゃなくてオディロ院長の部屋に忍び込んだのか?」
    「…うん。そう。」

    照れ照れ、と頭をかく。
    …主人の元気になった様子に、ネズミが頭の上まで登ってぴょんぴょん跳ねている。

    「…はぁ。ばかだな。正真正銘のばか。」
    「だって!夜中だったし、起こすのもわるいかなって思ったから…。朝ちゃんと言えばおこられないと思ったんだけど…おおさわぎになっちゃった。」
    「…あーでも、なんだ?その…昨日は助かったよ。」
    「うん。」
    「…だから、その…ほら。一緒に謝りに行こうぜ…エイト。」
    「…!うん!!」

    初めて、エイトの名前を呼んでみた。
    たったそれだけの事なのに、エイトはとても嬉しそうに笑うから。
    …それが、まるで特別な事のように勘違いしそうになる。

    「ってか、お前ここに来て1ヶ月にはなるんだから、食堂位覚えろよ。」
    「うん…でもここ、すごく広いから。」
    「そっかぁ?まぁ3大大聖堂って言われる位だしな。」
    「そうなの?ククールは物知りなんだね。」
    「お前に比べれば、みんな物知りだ。」
    「そっかー。」
    「おい、今のはイヤミだぞ。」
    「そっかー?」
    「…お前、ばかだろ。」


    …そうして、
    その後2人でオディロ院長の元に林檎の謝罪に行ったワケだが。

    エイトとオレが並んでいる姿を見て、オディロ院長はとても嬉しそうに笑い、オレ達を撫で繰り返した。

    …気付いた頃には、
    オレの心から苛々は完全に無くなっていた。






    【完】


    はい、幼少期、出会いの春です。

    ククールがエイト君をいぢめるシーンは、あれが黒羽の精一杯でした笑笑

    語彙力がないククール少年、可愛くないですか??
    ばかばかって笑

    とまぁこんな感じで、
    少年期、成長の夏編に続いたり。

    お読み頂き、本当にありがとうございました。

    2022.12.26 黒羽

    Tap to full screen .Repost is prohibited
    ❤❤❤😭😭😭👏👏👏👍❤🙏🙏🙏❤
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works