Recent Search
    Sign in to register your favorite tags
    Sign Up, Sign In

    黒羽(DQアカ)

    Twitterに流しにくいものを垂れ流します。

    2023.05.17 Twitter垢 乗っ取りに合っています…
    近いうちに連携切る事になるかと…。
    無念。

    からの、復活!!!
    ヒィーーーハァーーー!!!

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖
    POIPOI 58

    黒羽(DQアカ)

    ☆quiet follow

    ◆マイエラif◆

    書いてしまいました。
    夏 少年期です。。

    ※本作、カナリ好みが分かれると思いますので、
    以下、皆様のお好みでどうぞ…。
    ・エイト君が、マイエラで拾われていたらif。
    ・クク主ですが、本編とは大分違います。
    ・今後、フツーにモブにやられてます。
     (直接の描写は無いです)

    大丈夫な方からお進み下さいませ。

    #クク主
    kukuMaster

    マイエラif 〜夏〜◆夏◆



    ジワジワと、外で蝉達が大きく鳴いている。

    マイエラにも夏がやってきた。
    修道院を囲む木々が蒼く繁り、
    四季の中でも、中々見応えのある美しさだと、その道では有名らしい。

    …オレ自身、ここで一体何度目の夏になるのか、もう忘れてしまった。
    ここに来た頃は、今年で何回目だ…なんて数えていた時もあった。
    でも、何の意味の無い事だと思い、5年目位から数える事を辞めた。


    オレは涼しい木の上から、辺りを見下ろす。
    地上では、丁度洗濯が終わったようで、真っ白なシーツが一斉に干されている。
    この陽気なら、きっと今夜はふかふかの太陽の匂いに包まれて眠れる事だろう。

    オレは柄にもなく、このお日様の香りが大好きだ。
    …これは、平等な温かさだと感じるから。



    「あ、いたぁ〜!」
    「ん?」
    「さぼり魔、発見!」

    そう、呑気な声が聞こえて来る。
    読みかけの本を顔に被せていたから、視界からは分からないが…この抜けた声は間違いなくエイトだ。

    そのまま、ガサガサと木を登る音がする。
    人の気配を感じ、オレは本を顔からずらすと、すぐ横に膨れた顔のエイトがいた。

    「おー、お仕事ご苦労さん。」
    「おーじゃないよ!みんなククールの事探してたんだから。今日は君が洗濯当番でしょ?」
    「あれ?そうだっけ?」
    「そうだよ!仕方ないから、僕が手伝っておいた。」
    「マジ?わるいわるい。」

    そう言い、オレはエイトの頭をポンポンと撫でる。

    14歳のオレと、11歳のエイト。
    昔はそう変わらなかった身長も、今では頭1つの差が出来ていた。

    「君っていつもそう!本当にそう思ってる?」
    「思ってるって。おぉ神様エイト様。今この時を与えて下さった事に感謝します。」
    「あぁ…もう嘘っぽいもん。」
    「神様と名前を連ねといて、そりゃないぜ。」
    「いい加減にしないと、また団長に呼び出されちゃうよ。」
    「あーもー分かったって。次からはちゃんとやるから。」

    絶対だからね、とエイトがぷりぷりと怒っている。
    頭にはオレンジのバンダナが巻かれており、その上には、ネズミのトーポがちゃっかり乗っていた。

    エイトとトーポはいつも一緒にいるなぁ…。

    そんな事を思っていると、エイトが辺りの景色に気付いたようで、目をキラキラさせ始めた。


    「ねぇ、ここ。凄くいい景色だね!」
    「だろ?あーぁ、秘密の場所だったのに、バレちまった。」
    「大丈夫、僕口固いから。」
    「ってか、お前高いところ平気なんだな。」
    「うん!むしろ高いところ好き。広い世界が見えると、胸がぐあぁってなる。」
    「はは!何だそれ。」

    出会った頃に比べると、大分饒舌になったエイト。
    でも、たまにオノマトペが会話を占める事があり、まだまだ子供だな、と思う。

    「む…笑わないでよ。ククールはいいよね、お祈りとかで修道院の外にお出かけ出来るから。」
    「…まぁな。」
    「僕はここに来てから、ずっとここしか知らない。ここに来るまでの記憶もないから、僕の人生は全部マイエラだ。そもそも、11歳まで一度も外の世界に出た事もないなんてやばくない?」
    「そうか?外なんて、きっとロクなものないぜ?」
    「そうかな?色んな人、色んな物、キラキラした物が沢山ある…ような気がするよ。」

    そう言い、エイトはオレに微笑みかける。
    …真実、を知らないとは誠に幸せなもんだ。
    オレは表情を変えずに、エイトを見つめた。

    「で、お前のその自信はどっから来るワケ?」
    「……主に、本。」
    「でしょうね。」
    「あ、でもね!今度僕もお祈りに連れて行って貰う事になったんだ!」
    「…え?」

    その言葉に、オレの心臓がドクンと跳ねる。
    目を見開くも、エイトはそんなオレに気付かず、ただ嬉しそうに話続けた。

    「この前、司祭長がね、僕もそろそろお勤めに出てもいい頃だろうって。まだハッキリしないけど、多分次のお勤めから同行させて貰えるみたい。」
    「…そ、うか。」
    「外に出れる…世界が見れる。どうしよう、今からドキドキしてきた!」
    「……。」
    「…?ククール?」

    急に黙るオレを、エイトが隣から覗き込んだ。
    オレは一気に気分が悪くなり、口元を左手で押さえた。

    …お勤め、とは所謂『お布施稼ぎ』だ。
    名のある盟主…という名の、金づるの家に赴き、言葉の通り『ご奉仕』をする。

    オレは9歳で初めて、現実を知った。
    初めての世界に浮いていた心は、汚れた身体と共に一気に底なし沼に堕ちていた。

    …優しい相手なら、まだいい。
    たまにアブノーマルな奴に当たると最悪だ。
    子供相手に、アイツらは信じられない事を求めて来る。

    当然、オディロ院長は、この事実を知らない。
    勿論、彼に恩しかない子供達が、その事実を知らせるわけもない。
    永遠に続く、負の連鎖だ。

    …エイトも、最近は年頃になって手足がすらりと伸びてきた。
    元々、瞳の大きな可愛らしい顔つきをしている。
    好きな奴からしたら、まさに『食べ頃』だろう。
    コイツの、この瞳が…穢されると思うと、やり切れない気持ちが溢れて来る。


    「……。」
    「ククール…?どうしたの?」

    …エイトに、真実を話すべきだろうか。
    でも、それでもしエイトがここから逃げ出す事になったら?
    11歳の子供の行く場所なんて、この世のどこにもありゃしない。
    エイトもオレも、まだ一人では生きていけない。
    オレ達は…まだ、ここだ生きていかなくてはいけないんだ。

    エイトも、オレと同じ道を辿るしかないのか。
    …オレは、なんて無力なんだ。


    「……。」
    「ククール、大丈夫?気持ち悪い?顔色が…変だよ?」
    「…ん、大丈夫。あのさ…エイト、お祈りに行く時のアドバイス、してやろうか。」
    「…え?うん。」

    そう言うと、オレは自分の指から聖堂騎士団の指輪を抜き取り、エイトの親指にはめた。

    「待って、これ…大切な指輪じゃないの?」
    「…まぁ、初めては、誰でも緊張するから。お守り?みたいな。」
    「あ、ありがとう…?」

    エイトは、不慣れな指輪をまじまじと見つめている。
    オレは多分、同じ『お勤め』にはついていけない。
    だから、せめて…その時にエイトがこのやりとりを思い出すように。
    オレはエイトの手に、ゆっくりと左手を添えた。

    「いいか?…『お勤め』が始まったら、ただ祈れ。早く平和が訪れるように。どんなに辛い事も、乗り越えて行く。だから、いつか必ず幸せを下さいって。」
    「…うん?分かった。」
    「終わったら、何も考えるな。何も考えず、真っ直ぐ帰ってこい。」
    「??ククール、僕がはじめての外で迷子になると思ってる?」
    「…あぁ。」
    「あはは!流石に僕の事、馬鹿にしすぎだよ!みんなで行くのに、迷子になんかならないよ。」
    「そうだな。…心配しすぎだよな。」
    「そうそう。ククールは変な所、心配性だよね。」
    「うるせー。いいから絶対失くすなよ、その指輪。オレだって、この前騎士団入団したばっかりで、指輪失くして、団長殿の折檻なんて受けたくねーからな。」
    「うん。分かったよ…心配性の、ククールお兄ちゃん。」

    そう言い、エイトが嬉しそうに笑う。
    その笑顔が、今のオレには眩しくて…苦しい。

    ただ、あの時の自分に出来る事は何だったのか。
    未だに、オレは答えが出せずにいる。








    その数日後、エイトは『お勤め』に出かけると、数日後に帰ってきた。
    オレは別の『お勤め』に出ていたから、帰ってきたエイトを迎える事が出来なかった。


    「なぁ、エイト、見なかったか?」
    「エイト?見てないよ。さっきお勤めからは戻ってるはずだが。」
    「くそ!」

    エイトと一緒に出掛けていた修道士に聞くも、ロクな情報が得られない。

    エイトはどうなった?
    エイトはどうしてる?
    オレは頭がエイトでいっぱいだった。

    なのに、エイトは修道院のどこにも居なかった。
    …他に、エイトのいそうな場所はないだろうか。

    「…あ。」

    オレはふと、秘密の場所を思い浮かべた。
    そのまま、最短ルートで例の木の上を目指す。



    「…エイト!」
    「……。」

    例の木の下に駆けつけ、上にいるだろう小さな影に呼びかける。
    答えはなかったが、オレはそれがエイトだと確信していた。
    身の振りも考えず、オレは急いで木を登り切る。


    「…エイト!」
    「……。」
    「……。」
    「…おかえり。」
    「…っ!」

    夕焼けが、エイトの表情を赤暗く照らしていて、どんな顔をしているかわからない。
    声は意外と静かで、落ち着いている。

    「…エイト、お前。」
    「ククールも、さっき戻ったの?」
    「あ、あぁ。」
    「…そっか。」
    「…!お前、その顔。」

    俯くエイトの顔を多少強引に覗き込む。
    …左目が、大きく腫れていた。
    それを見た瞬間、オレは胃の奥がカアァと熱くなるのを感じた。

    「ッ誰にやられた!!」
    「……。」
    「誰だ…誰に…ッ!!」
    「……。」

    …そんなの、聞かなくてもわかってる。
    でも、その時のオレには、そう尋ねるしか出来なかった。

    「…ククールの、アドバイス…僕、守れなくて。」
    「…!!」
    「馬鹿みたいに、抵抗しちゃったんだよね…最初。その時に、思い切り叩かれた。」
    「……。」
    「でもね、指輪。指輪のおかげで、ククールの事思い出して…そこからはうまく出来たと思う。」
    「……。」
    「早く、平和が…訪れますように。どんなに辛くても、乗り越えられる…。」
    「…も。」
    「…いつか、幸せに。」
    「もッ…いいから!!」

    そう言い、オレは目の前のエイトを抱きしめた。
    小さな背中…まだ子供だ。
    両手で、自分の身体を抱きしめている。
    その震える身体を、オレはただ胸の中に押し込んだ。

    「…ククール、ごめんね。」
    「…何が。」
    「僕、なんにも…分かってなくて。」
    「……。」
    「外の世界には、希望しかないと思ってたんだ。」
    「…ッ。」
    「外に出れば、僕の人生は良い方向に変わっていく。ずっとそう、思ってた。」
    「…やめろ。」
    「なのに…僕は……君に、守られている事も、知らず…。」
    「もう、やめろ!!!」

    小さく呟くエイトを、ギュウと抱き締める。
    自分が初めて体験したあの時を思い出し、絶望を思い出した。

    「エイト、ごめん。」
    「…何で、君があやまるの。」
    「……。」
    「よく考えれば、わかる事だ。…ねぇ、覚えてる?林檎一つで泥棒扱いされた時の事。」
    「…あぁ。」
    「そんな貧乏修道院が、どうやってここを経営してるのか。どこから、そんなお金が出るのか。少し考えたら、わかる事なのに…。」
    「……。」
    「僕、ほんと…馬鹿だったなぁ…。」
    「……。」

    そう言い、エイトはモゾモゾと、オレの胸を押し返す。

    「これ、ありがとう。」
    「…指輪。」
    「うん。正直、助かった…凄く。この指輪のおかげで、真っ直ぐここに帰ってこれたよ。」
    「……。」
    「僕は…まだここで生きていかなくてはいけない。だから…もう少し、頑張る。」
    「……うん。」

    オレはエイトから指輪を受け取ると、そっと自分の左手にはめた。
    それを目で追うと、エイトがポツリとつぶやいた。

    「…ククールは、ずっと…独りでこの孤独に耐えてきたんだね。」
    「……。」
    「…ククールは、強いね。」
    「…ばか。強くなんてない。」
    「強くて…とても優しいよ。…ありがとう。」

    そう言い、エイトはにこりと微笑んだ。
    11歳…よりも少し大人びた顔だ。

    オレは、エイトの潰れた左目にゆっくりとキスをした。
    エイトはヒク、と身体を震わせ、そのままじっとオレを見つめ返した。

    真っ直ぐ見つめて来る、大きな漆黒の瞳。
    それがとても美しかった。

    そのまま、オレはエイトの顔にべホイミをかけた。
    みるみる、エイトの顔が元に治っていく。
    伏せた瞳をまたゆっくりと開く。
    …そこに、年相応の美しさを感じた。


    「いいなぁ…ホイミ。僕も覚えたいな。」
    「今のはホイミじゃねーよ。べホイミ。」
    「えっホイミの上のヤツじゃない?ククールいつの間に覚えたの?」
    「ちょい前にな。…初めてのべホイミは、可愛い女の子にって決めてたのに。ま、いっか、ちゃんと効くのが分かったし。」
    「ちょっと…僕は練習台?」
    「んー?そんなとこ??」
    「はぁ…最低。酷い。無神経男。」

    そう言い、エイトはオレの隣に座り直す。
    その肩に、トーポがチョコンと現れた。

    「トーポ、聞いて。このククールお兄ちゃんは、僕より女の子が好きなんだ。」
    「…ちょ、何当たり前の事言ってんだ。当然だろ。」
    「はぁあ…今まで沢ッ山、ククールの家事番手伝ってあげたのに。こんな時くらい優しい言葉かけられないのかなぁ…。」
    「それとこれとは、話が別だろ。」
    「最低男だよねぇ。」

    そう、エイトが肩のトーポに鼻をくっつける。
    トーポは嬉しそうに、エイトの鼻にじゃれている。

    それを横で見つめ、オレはフと音もなく笑った。





    【完】


    初めての、、お勤め編となりました。
    大分2人の距離が近くなった頃です。

    もっと掘り下げても良かったのですが、まぁこのくらいでいっか…と笑

    次くらいから、クク主カラー強めていきますよー!!

    ここまでお読み頂き、誠に有難うございました。


    2022.12.27 黒羽
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    😭😭😭😭😭😭😭😭😭👍😭😭❤❤❤🙏
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    recommended works