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    黒羽(DQアカ)

    Twitterに流しにくいものを垂れ流します。

    2023.05.17 Twitter垢 乗っ取りに合っています…
    近いうちに連携切る事になるかと…。
    無念。

    からの、復活!!!
    ヒィーーーハァーーー!!!

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    黒羽(DQアカ)

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    ◆領主踊り子if②◆

    やっちまった。
    後悔はしていない。

    ・エイト君が旅のキャラバンの踊り子、ククがマイエラ領主の肩書きでのクク主ifです。
    ・エイト君が身体でお金をとっています。

    大丈夫な方のみお進み下さい…。

    #クク主
    kukuMaster

    ②友達の距離(領主踊り子if)◆友達の距離(領主踊り子if)◆


    「おはようございます、ククール様。良い朝でございますね。」
    「……。」

    執事がニコニコと微笑み、部屋の大きなカーテンを開ける。

    今朝はいつもより、少し遅くにオレを起こしに来たようだ。
    勿論、ベッドには乱れた様子もなく、こいつの期待するような事は何も無い。

    一方、遠目に見えるテーブルには、紅茶のカップが2つ残されていた。
    それを見て、オレは昨晩のやり取りは現実だったのだと理解する。

    …そのまま、オレはベッドのそばで、モーニングティーを淹れている執事を睨む。


    「…おい。昨日は、やってくれたな。」
    「?一体なんの事でしょう。」

    …執事は、あくまでもとぼける気だ。
    オレは頭をガシガシとかきながら、ベッドから身体を起こす。
    この執事、一見柔らかく見えるが…あの父の代から仕えている強かな男だ。


    「おまえだろ?昨日…あの踊り子を屋敷に入れたの。オレはそんなに欲求不満に見えたわけ?」
    「滅相もございません。私はただ、ククール様の気晴らしになればと。」
    「あのなぁ…そういうのは外で、適当にするからいいよ。」
    「おや、それも困ります。外で、万が一の事が起こっては大変ですから。ですので、せめて同性ならば…と思ったのですが、お気に召しませんでしたか。」
    「…おまえね。」

    怯むこともなく、イケシャアシャアと言い放つ。
    …この執事は有能だが、時に端的だ。


    「勿論、私なりに、ちゃんと人となりを見てお部屋にお通ししました。礼儀も正しく、可愛らしい。なかなかの好青年ではございませんか。」
    「まぁ…いいヤツでは…あったけど。」
    「坊ちゃん…まさか、昨晩は据え膳食わずでございますか。」
    「そうだよ、残念ながらね。…てか、坊ちゃんはやめろ!恥ずかしいだろ…。」
    「ふふ、失礼致しました。」

    そう言い、執事は微笑んだ。
    何も分からない時から、そっと隣で支えてくれた彼だ。
    感謝はしているが、なんていうか…まだ彼の中で、オレは小さな子供なのだと思う。


    「とにかく、今後そういう気遣いは要らない。分かったか?」
    「かしこまりました。では今後、彼をお部屋にお通しするのは辞めた方がよろしいでしょうか。」
    「…ん?どういう事?」
    「今朝方、丁度お帰りになる彼を見送りました。またお越し下さいね、とお伝えしましたら、また来ていいんですか?と嬉しそうでしたので。てっきり…。」
    「そ、そうか。」

    執事の言葉に、オレは口元を手で隠す。
    急に気恥ずかしくなり、口元が緩んだからだ。

    エイトが、『また来たい』と思ってくれたのが、何故かとても嬉しかった。


    年が近いせいか、あの後本当に色んな話題に花が咲いた。
    自分の身は自分で守る、なんて言いながら、話疲れて、気付いたら寝落ちしていたのが現実だ。

    …さっきまで、ここ(隣)にはエイトがいた。
    横向きに、オレの方を見て寄り添うようにこちらを見つめて微笑んでいた。

    また、会いたい。
    オレは、心のどこかでそう思っていた。









    午前の仕事を片付け、オレは例のキャラバンに向かう。
    昨日のイベントのお礼挨拶を兼ねて、キャラバンの長を訪問した。


    「いやぁ!よくお越しになりましたな、ククール殿!」
    「キャラバン長殿、昨晩は素晴らしい時間をありがとうございました。」
    「お気に召したのならありがたい!それに、こちらも稼がせて頂きましたからなぁ!」

    そう言い、ガハハと恰幅良く笑う。

    …なるほど、確かに緩いようで隙がない。
    だが、こういう奴の懐に入るのは得意だ。
    オレは微笑んだ仮面の下で、どう懐柔してやろうと思考を練る。

    たわいない雑談を終え、数日後の夜、キャラバン長との会食時間を持つことになった。

    …ここで落とす。

    そんな事を思っていると、キャラバンの中で一人の人物が目に留まる。


    「…エイト?」
    「!」

    無意識に、彼の名前を呼んでいた。
    呼んだ後、まずかったか?と思い口元を手で隠した。
    しかし、意に反してエイトはパァと微笑むと、こちらに向かって駆けてくる。


    「領主様、昨日はありがとうございました。」
    「あー…うん、こちらこそ。…何してたの?」
    「昨晩の片付けです。あと、小さな規模ですが、今夜からドニの空き地で、ショーをするんです。その準備をしていました。」
    「へぇ!そうなのか。またエイトが踊るの?」
    「はい。」
    「そっか…頑張れよ。」

    そう言うと、エイトがあっと声を上げる。

    「…あの、もしよかったら、今夜のショーにお越しになりませんか?お席は僕でご用意しますので。勿論、お代も頂きません。」
    「え、いいの?」
    「はい。お時間あれば…是非。」

    そう言い、エイトは嬉しそうに微笑んだ。
    …可愛いな、と思った。


    「…あーと。じゃあ、行く。」
    「本当ですか!?良かった…。」
    「でも、いいのか?パフォーマーからすれば、貴重な1席だろ?」
    「いいんです。僕、昨日の言葉…とても嬉しかったので…だからもう一度、貴方にショーを見て頂きたいのです。」
    「そっか。」
    「あのっ…今夜、頑張って踊りますね。」
    「うん。…楽しみにしてる。」

    そう言い、オレはエイトから会場の場所を聞くと、真っ直ぐ屋敷へ戻った。








    夜18:00頃。
    あの後、仕事をバタバタと片付けたオレは、
    外套を羽織りながら執事に声をかける。

    「今から少し出てくる。帰りは遅いと思うから、寝てていいからな。」
    「かしこまりました。ですが、この時間からどちらに?」
    「私用。」
    「おっと…これは野暮な事を伺いましたな。」

    そう言い、執事が馬車を呼ぼうとするのを、オレは手で静止した。


    「近くだから、馬はいらない。」
    「いけません、ククール様。どなたかをお屋敷にお連れするのに、歩かせるような真似は紳士として如何かと。」
    「だから…誰もお持ち帰りしないから!」
    「おや、左様ですか?」

    …と、今朝の続きのような会話を終え、オレは屋敷を後にした。

    そのまま、徒歩で十数分の距離にある、ドニの酒場へと向かう。
    到着すると、酒場の隣の空き地に、キャラバンの小さな会場が出来ていた。

    確かに、規模としては昨日に比べて半分以下だ。
    しかし、ステージと客席が近い分、臨場感溢れる良さがある。

    (次は…もっと客席が近いステージもいいな。)


    そんな事を考えていると、ド派手なピエロがこちらに向かってくる。
    雰囲気的に、キャラバンのメンバーのようだ。
    ピエロはオレの目の前に来ると、エイトのお客様ですね、とオレを席に案内した。






    (…ど、ど真ん中じゃん。)

    昨晩よりステージまでの距離が近い、おまけに会場のど真ん中の席だった。
    座椅子はないので、そこにオレは胡座で座り込む。

    そんな時だ。


    「えっククール!?」
    「…?おー、久しぶり。」

    近くの席から、声をかけられた。

    「きゃあ!ククール!いつきたの!?」
    「ついさっきだよ。みんな変わんねーな。」
    「当たり前だろ!そういうお前は、ちゃんと領主様やってんのか?」
    「当たり前だろ。優秀すぎるくらいだぜ?」
    「生意気なのは変わんねーなぁ!」

    ははは!と、周りの人間が笑う。

    領主になる前はドニに入り浸っていたので、この辺は馴染みの顔が多い。
    会場のど真ん中に座ったオレに気付くと、周りから次々と話しかけてくる。


    (あぁ…なんか、この感じ…久々だな。)

    こんなにも楽しい時間があったのに、オレはこの感覚を忘れていた。
    なんだか、久しぶりに心が息をしたような気がした。



    少しして、会場の音楽が盛り上がり、ステージが始まった。
    昨日とは異なり、先程のピエロが前座のパフォーマンスを行う。
    客席が笑いで和むと、そのまま音楽が激しくなり、最高潮のタイミングで踊り子がステージに飛び込んで来た。


    (エイトだ。)

    そう思い、オレは彼を目で追う。

    昨日とは演目が異なるようで、ラテン調の激しいテンポの踊りになっていた。
    衣装も、赤が基調のアラビアンなものに変わっている。
    耳には大きな赤い花が付いていた。

    何より、低い太鼓の音と、激しいダンスがとても合っている。
    昨日の、誘う様な…色っぽい踊りとは打って変わって、カッコいいテンションが上がる様なダンスだ。

    途中、エイトはオレに気付くと、ダンスの導線を外れ、オレの目の前まで近づいて来た。
    あまりに自然な動きだったので、オレはなんの反応も出来ず、ただエイトを見つめていた。

    そのまま、エイトは自分の耳につけていた大きな赤い花を外し、オレに差し出した。


    …来てくれて、嬉しい。

    そう、口元が動いたのを、オレは見逃さなかった。


    そのまま、エイトは自然にショーに戻ると、会場全体に素晴らしいダンスを披露した。

    拍手喝采。
    まさしく大成功だったと思う。


    オレはショーの後、キャラバンの舞台裏に顔を出した。
    タダで席を用意してもらったんだ。
    挨拶くらいするのが筋だろう。

    …後、ちょっとした物を持って来たので、エイトに渡したい。
    そう思い、キャラバンの楽屋裏のカーテンを恐る恐る開けた。




    「あっ…領主様!」
    「エイト、お疲れ様。」

    オレに気付くと、エイトがこちらに駆けてくる。

    「本当に来て下さったんですね…嬉しいです。」
    「約束したからな。ってゆうか、あんな特等席で驚いたよ。ありがとな。」
    「とんでもありません。今夜のショーは如何でしたか?」
    「最高だったよ。昨晩とは趣向が違くて魅了された。…あ、そうだこれ。急だったからちょっと即席だけど。」

    そう言い、オレはエイトに小さな花束を渡す。


    「わぁ…花束。」
    「男相手に花ってのも考えたけど。ショーの成功のお祝いは花束でいいのかな?」
    「はい!とっても…とっても嬉しいです。」
    「そ、そう?」

    そう言い、エイトは花束を優しく抱きしめた。
    本当に喜んでいるようで、オレは少し安心した。


    「なぁ、このステージ、いつまでやるんだ?」
    「明日はお休みして、明後日からマイエラ滞在中は毎日開催します。」
    「そうなのか。結構ハードだな。」
    「でも連日観に来て下さる方もいるので…貴方のように。」
    「あー…でも、ごめん。明日からは、オレはもう観に来れないと思う。個人的には来たいんだけどさ。」
    「あっ…こちらこそごめんなさい。そういう意味で言ったんじゃないんです。でも、せっかく知り合えたのに…少し残念です。」

    そう言い、エイトが少しシュンとする。

    ……そんな顔見たら、手放せないじゃないか。


    「…えーと。あのさ…?良かったら…また今夜…ウチくる?」
    「え…?」
    「お泊まり。」
    「おと、まり…。」

    オレの言葉をおうむ返しに呟くエイト。
    言ってから、急に恥ずかしくなり、オレはハッと我に帰った。


    「いや!悪い!そんな訳にはいかないよな!?エイトだってほら、片付けとか…次の準備とか!色々あるんだし!?」
    「…行って、いいんですか?」
    「……え?」
    「お泊まり…行って、いいんですか?」


    「………ウン。いーよ。」
    「…!あの、行きたいです…お泊まり。」
    「えっと…あー……マジ?」
    「…えっ?あ、冗談、でしたか?ご、ごめんなさいっ!僕間に受けて…!」
    「あーー違う違う!来ていーよ!ただ…その。」
    「?」
    「…歩き、なんだよね。」
    「?」
    「帰り道。今日…馬車でこなかったから。」


    …しん。


    「……。」
    「……。」
    「ぷっ…あはっ!あはははっ!」
    「え!?」
    「な、なにを…ふふっ…心配してるのかなって思ったら…ふふ…!」
    「おい、笑うなよ!」
    「だって、そんなのっ…全然なんともないのに…!」
    「そうか?いい大人の領主様が、踊り子連れて家まで徒歩で帰った、なんて聞いたらみんな笑うぜ?」
    「ふふっ…僕にはそんな気遣いはいらないですよ。それに、道中沢山お話しできますね。」
    「……うん。」

    着替えて来ます、とエイトは嬉しそうに身を翻した。
    オレはその後ろ姿を、ただぼーっと見送った。


    なんていうか…
    エイトの気を張らない所、すごく安心する。
    なんともないのに、なんて…さらっと言えるのが凄いと思う。

    周りには身分肩書きを気にする人種ばかりだったから…肩の重荷がスッと落ちたようだった。

    何より…。


    (……超可愛い。)


    ハァ、と大きなため息をつき、オレはエイトが戻るのを待つ事にした。







    「お帰りなさいませ、ククール様。」
    「…ただいま。」

    宣言通り、エイトと歩いてウチに戻ると、執事がにっこりとオレ達2人を出迎えた。


    (暗に寝ていろと言ったのに…こいつワザと起きてやがったな。)

    オレは気まずそうに咳払いをする。
    とりあえず、エイトに執事を紹介する事にした。

    「あー…エイト、こちらウチの執事長だ。」
    「エイト様、パノンでございます。どうぞお見知り置きを。」
    「エイトです。昨日はお世話になりました。」

    そう言い、エイトは少し腰を落とし、胸に手を当てると、丁寧に頭を下げた。
    さらっとこんな挨拶が出来るのは職業柄というか、なんというか。
    サマになっているのがカッコよかった。


    「なぁ、客間一つ空いてるよな?使えるか?」
    「はい、勿論。」
    「今夜エイトが使うから。」
    「かしこまりました。お部屋に何かお持ちしますか?」
    「軽食と紅茶を。持って来たら今夜は休んでくれ。」
    「承知しました。」

    そう言い、オレはエイトを客間に案内した。








    …ガチャ。

    「ここにあるもの、なんでも使っていいから。」

    そう言い、オレはエイトの外套を受け取るとクローゼットにかけた。
    エイトは部屋中を、口を開けて見回している。

    「ここ…で、お泊まりですか?」
    「そう。お気に召さないか?」
    「ち、違います!こんな立派なお部屋…初めてで。その…今夜はここで…セックスするのですか?」
    「へ?…ち、違うから!お泊まりって、そういう事じゃないからな!?」
    「え、じゃあ…どうして?」
    「おまえと…もっと話がしたかったから。」
    「はな、し…?」

    エイトがポカンとこちらを見ている。
    ここまで勘違いさせたままできたのか、とオレは急に恥ずかしくなった。

    「その…昨日さ、すげー楽しかったんだ、オレ。今までは、年が近い友達も居なくてさ。」
    「……。」
    「あんなに腹割って話せたの初めてで…またエイトと過ごしたいって思ったんだ。」
    「…本当、ですか?」
    「うん。…あ、でも金は払うよ?おまえの時間貰ってる訳だし。」
    「…っいり、ません。」
    「え?」
    「お金、いりません!僕も…もっと、貴方と話したかった…です。」
    「本当に?」
    「はい。ごめんなさい…僕、とても失礼な勘違いをしていました。」

    そう言い、エイトは片手で顔を隠した。
    明らかに落ち込むエイトに、オレは焦って声を掛ける。

    「いや!お泊まり、だなんて言ったら…そりゃそう思うよな?!」
    「言い訳のようで、情けないのですが…。今まで、僕に近づいてくる方は…ほとんどが夜迦目当ての方だったので。でも、昨日の事で…領主様はそんな方じゃないって分かっていたのに…僕…。」
    「いや、おまえの立場だったら、そう思って当然だ。気にすんなって。」
    「…でも。」

    譲らないエイトに、オレはうーんと考える。
    そして、1つの提案をする事にした。


    「じゃあさ、オレとおまえ、これからは友達って事にしない?」
    「…え?」
    「友達だから、エイトは敬語禁止。あと、オレの事、名前で呼んで。」
    「えっ…えっ!?」
    「名前、昨日教えたろ?もう忘れた?」

    「…く、くーる……………様。」
    「様はいらない。」
    「……ククール。」
    「うん。これで対等。な?」
    「……。」

    エイトは少し呆けている。
    その時、扉がノックされた。
    執事が頼んだものを持ってきたのだろう。

    オレが扉を開けると、執事は部屋のテーブルにサンドイッチと紅茶を配置していく。


    「エイト様のお好みを存じ上げず…もし苦手な物が有ればおっしゃって下さいませ。新しい物をお持ちします。」
    「だそうだ。」
    「あ、あの…大丈夫です!突然の訪問ですのに、十分過ぎるご配慮、申し訳ありません。」
    「とんでもございません。エイト様は、主の大切なお客様ですので、どうぞお気遣いなく。」
    「…パノン。」

    オレがじとり、と彼を睨むと、執事はさらりと微笑んで部屋を後にした。


    「ったく、一言余計なんだよな。」
    「ふふ。でも、パノンさんはククール…の事、大切に思ってると……思う。」
    「お、いいね。友達っぽい。」
    「うぅ…恥ずかしい。」
    「そのうち慣れるさ。さ、腹減ったろ。食べよ。」
    「…うん。頂きます。」


    そう言い、オレ達は友達として初めての食事をした。
    食事中は色んなことを話した。
    好きな茶菓子に始まり、気付けばお互いの出自の事にまで及んだ。

    そこで知ったが、エイトには幼い頃の記憶がない。
    小さい頃に拾われた、このキャラバンに育てられ、踊りで生計を立てている。
    こうして世界を回るうちに、きっと自分のルーツがわかる日がくる。
    そう信じているという。

    …仕事柄、きっと辛い事の方が、多かったろうに。
    彼は楽しかった事や、今の仕事を誇りに思っている事など、明るい話を選んで口に出していた。

    会話するほど、彼の強さを感じる。
    オレはエイトという人物に、どんどん惹かれていった。

    その時、0時を知らせる時計の鐘がポーンと鳴った。


    「あ、やばい。もうこんな時間だ。」
    「本当だ。ごめん、僕…話に夢中になってて気付かなかった。」
    「オレもだ。エイトは公演の後で疲れたろ。ここ、部屋風呂ついてるから。さっぱりしたら休みな。」
    「うん…でも、本当にいいの?」
    「なにが?」
    「こんな好待遇して貰ってるのに…僕、何も返せてない。」
    「なんで?素晴らしいショーを、特等席で観せて貰ったよ。しかもタダ。その御礼だと思えば?」
    「…もう、君は人の気も知らないで。」

    そう言い、2人で笑い合う。

    「明日、公演は休みだっけ?」
    「うん。」
    「じゃあ、朝ごはん食べてく?」
    「せっかくのお誘いだけど、朝早くにお暇するよ。ショーの片付けとか投げ出して来ちゃったし。君はゆっくり起きて。」
    「そっか…じゃあ、また夜に遊びに来いよ。エイトに時間がある時でいい。あ、勿論毎日来てもいいぜ。」
    「え?…で、でも。」
    「オレが、エイトに会いたいんだ。」
    「…っ!」

    そう言うと、エイトの大きな目がさらに大きく開かれる。

    「…君って、本当に人たらしだね。」
    「誰にでもって訳じゃない。最初の警戒心、知ってんだろ?裸にされたの、忘れた?」
    「…覚えてるけど。」
    「おまえだから誘ってるんだ。キャラバンがここにいる間、会える時は会いたいって思ってる。」
    「……。」
    「勿論、エイトが嫌だったら、無理にとは言わないけど。」
    「嫌じゃ、ないよ。…友達って、僕も初めてだから。少し…距離感に戸惑ってるだけ。」
    「そっか。」

    そう言い、オレはステージ中にエイトから貰った赤い花を、手でクルクルと回した。


    「本当はショー、毎日観に行きたい。でも、一応領主様だからそう言う訳にもいかなくてさ。」
    「……。」
    「だから、マイエラにいる間は、エイトの時間を少しだけオレに頂戴?」
    「……そんな、勿体ないよ。」
    「…?」
    「僕、こんな事言われた事ない。こんなに人として…エイトとして…見てもらったことない。」
    「…エイト。」
    「いいの?…こんな僕で、本当に君の友達になれる?」
    「?当たり前だろ。もう友達じゃん。」
    「うん…ありがとう。また遊びに来るね。」
    「ん、待ってる。来なかったら、夜中オレから会いに行っちゃうかもよ。」
    「…徒歩で?」
    「へぇ〜…言うねぇエイト君?」

    そう言い、オレはエイトの頭をガシガシと撫でた。
    エイトが、あははっと少年のように笑った。


    「じゃ、おやすみ。明日、気をつけて帰れよ。」
    「うん。ありがとう。おやすみなさい。」

    そう言い、オレはその日、エイトの部屋を後にした。







    【続】

    お友達になれたよぉ。

    どうしてもウチのクク主は、
    ククがエイト君の事大好きすぎて我慢出来ないようで…。

    お互いに初めての友達。
    初めてできた、大切な存在。

    そんな所です。


    執事長の名前が出てきましたが、脳内イメージ、4のパノンのイメージ(パノンを少し強かにした感じ。11のセザールさんみたいな。)でしたので、お名前そのまま拝借致しました。

    オリキャラだけど、意外と好き。


    ここまでお読み頂き、ありがとうございました。


    2023.03.22 黒羽

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