高嶺でゐてくれ 初恋をした。相手を好きでいるだけでは飽き足らず、こちらを見てほしいと醜い欲を抱く、紛れもない恋だった。
『高嶺でゐてくれ』
自らが比較的整った顔立ちであることは、初等教育を終える頃には自覚していた。優秀な頭を持っていることは、中等教育を終える頃に。そして『高嶺の花』であることは、高等教育の最中に。
見目よく、運動部で活躍している男の先輩に恋をする。誰でも通る道だと思う。誰でも、から外れたのは、告白の断り文句のせいだ。
ごめんね、付き合うことはできない。でも、高嶺の花の──さんに想われてたのは光栄だよ。
優しい断り方だった。困ったように微笑んで言った先輩に感謝の言葉を伝えてその場を離れる。告白する前から、きっと振られるんだろうな、とは思っていた。ただ。
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