夜の荒野を月明かりを頼りに走った。空気が冷たく、息をするのも苦しく感じられたが走ってる間は深く考えることもせずにいられた。ディミトリのために犠牲になってくれた従者であり、友であったドゥドゥー。
荒野から森林に変わり、辺りは闇に包まれ静けさがより一層際立ち逆にそれが自然の物音を不穏なくらいに感じさせた。しかし、その恐怖も目につかないくらいディミトリは絶望していた。足を止めてしまったがゆえに、脱力からだろうか抑えきれなくなった涙が溢れ出す。自分の非力さを呪ったか、友を見捨てたことへの不甲斐なさか。涙は止まることがなく、次第に足も力をなくし、膝をついて地面に頭を擦り付けた。手で地面を叩いたが、ディミトリの後悔や絶望にその痛みは生ぬるい。
「う、、ドゥドゥー…俺は俺は」
言葉にすべきことも見つからず、ただ闇に包まれるのみ。
「………先生」
それは、ディミトリにとっての一瞬芽生えた光のようなものだった。しかし、それもまた闇に包まれた。彼はそこから彷徨い歩くが夜は長く続いた。