差し伸べられた手 計画は完璧だった。メロエッタを捕らえ、神殿の封印を解き、写し鏡を手に入れる。イッシュ地方の伝説のポケモン三体を呼び寄せ、フォルムチェンジを行い、真の力を我が物にする。イッシュ地方は我が手に落ちる。そのはずだった。
「ピカチュウ、エレキボール!」
「!」
ボルトロスの雷エネルギーを帯びた、ピカチュウのエレキボールは、巨大な球体となり神殿を破壊した。砂埃で前が見えない。メロエッタ。メロエッタが台座から消えた。逃げたのだ。何も見えないが、何故か、それだけは分かった。
「……たいか」
背後で男の声がする。
「誰だ!」
声のする方を向いた。そこには、誰も居なかった。写し鏡があるだけだった。鏡を抱えて、覗き込んだ。自分の顔が映る。何も変わった事はない。そう思った瞬間、鏡の中の自分が笑い出した。
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