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    tanaka_san_1225

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    tanaka_san_1225

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    創作ブロマンスかつ未完もいいとこ
    ちょ〜ぜつ暇でなおかつ気が向いたら読んでくれるとうれし〜〜

    樹生要が死んだらしい。近々葬式が取り仕切られるので親しい生徒は参加するようにと淡々と告げる担任を見る僕の顔は、きっと感情なんて無かったに違いない。雑音にまみれた教室でミーンミーンという夏の声だけが嫌に響いた。
    *
    「月はさ、透明人間なんだ」
    偶然だった。その日は休みだったが、やり残した書類整理をする為に僕は制服を纏っていた。ふと時計を見ると既に正午を過ぎていて、朝から缶詰だったこともあり作業もそれなりに済んでいたので気分転換も兼ねて一度教室を出ることにした。少し歩いただけなのに既に湿った前髪。ジリと照りつけてくる太陽に恨みはない。この校舎は風当たりが悪いから。けど、今日の太陽はいつもよりも機嫌が良いらしい。いささか威勢のよすぎる気もするが。時間に換算してみればさして長くこもっていた訳では無いのに、やけに眩いように思う。なんだか、蝉にでもなった気がした。
    休日にも関わらず校内には僕の他にもそれなりに人がいて、テニス部だろうか。小刻みなストロークの音と掛け声を耳に僕は歩いていた。ーーー暑い日だ。太陽が僕を照らす、僕はそれに照らされる、ただそれだけのことなのに、無性に感じる違和感。思いきり前髪をかきあげたくなった。ふと、こちらを見る誰かと目があって、それが樹生要であると理解した。そして、冒頭の言葉である。
    「...月は人にはなり得ないよ」
    自分で言っておいてなんだか間抜けな返事だと思った。いくら突拍子のなかった問い掛けと言えども思わず笑ってしまうぐらいには。だが、彼はそんな僕に嘲るでもない笑みを送った。
    「月は、確かにそこに存在している。人の目には見えなくとも確かにこの空のどこかに浮かんでいて絶えず僕らを見守っている。けれど僕らがそんな月の存在を認識するのはいつだって日が沈み夜が老けてからだ。確かに...確かにそこにいるはずなのに」
    随分と唐突な語りを始める奴だ。別に求められては居ないだろうがつい返答の言葉を生み出そうとした。しかしどうやらその必要は無いらしい。
    「もしかすると月自身が姿を見せることは望んでいないのかもしれない。あるいはあまりに長い間目を背けられ続け、姿を見せる方法を忘れてしまったのかもしれない」
    そう言って彼はまた微笑んだ。問いを投げかけられた訳では無い。しかし、なぜだか無性に何かを答えなくてはという気持ちに駆られた。一刻も早く何かを言わなくてはいけない。あんなに鬱陶しく感じていた夏が今は全て過去のことのようだ。けれど、僕はそれに無を持って返すことしか出来なかった。
    あの時の彼の顔を僕は今思い出すことが出来ない。
    *
    「きりーつ。れー」
    ガタッとやる気の無い号令とともに生徒が一斉に席を立ち、その音に続き慌てて僕も頭を下げる。頭の中で先刻告げられた担任の言葉が反芻してた。...そうか、樹生要は死んだのか。文字の意味を理解しても、なぜだか僕の中でその言葉は現実味を帯びていなかった。そもそも、彼は元々生きているのか死んでいるのかも分からないような生命力の希薄なやつだ。たった一度きり、それも数度言葉を掛け合わせただけなのに彼を語っているのもおかしな話だけれど。

    放課後、僕は何となく樹生要が生前使っていた机の中に手を伸ばしていた。理由なんて無いが、ただ何となく、そうした方がい気がした。ガサリ、指先に触れる音。取り出すと、いくつかの地図記号が描かれたある一点を示す黄ばんだ用紙が。裏面には「これを見た君へ」とだけ書かれていた。



















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