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    1_capriccio

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    1_capriccio

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    【えんじぇるな男】は20年以上も昔、正式に同人で個人サークル作って裏船長として活動を始めたジャンルで書いた天使パロディの長編です。
    これを番長でセルフリメイクしようと思ったけど、キャスティングに無理があり断念しました。
    本当はものすごく書きたいけど、番長の世界観を壊してまで書くものではないので、ほんの一部分だけ書いて供養します。

    #轟鏡
    roaringMirror
    #サラ番
    salaryman
    #現パロ
    parodyingTheReality

    えんじぇるな男(番長ver.)※物語のクライマックス。

    「おぉおおッッ!!」

    金剛と死神・ハンサムの影が交差した。
    しかし、金剛の前に死神の姿はない。

    「なっ……!」
    「残念だったね、轟」

    その声に金剛が振り返るが遅い。
    すでにハンサムは金剛の後ろに回っていたのだ。

    「ゲームオーバーだよ、天使」

    ズン、と背中に衝撃が走った。
    金剛の右の羽根の根元に、大鎌の刃が突き刺さっていた。

    「…ぐっ……!」

    カラカラと金剛が手にしていた剣が転がり落ちる。
    ドッと地面に倒れ伏した金剛の背中を踏みつけ、ハンサムが力任せに彼の羽根を引き千切った。

    「……ぁ…ぐ…ああぁぁあああぁああああぁーーーーーっっ!!」

    ビキビギ、ブチブチと骨と肉と神経が引き裂かれる音と共に、金剛の絶叫が響き渡った。
    鮮血が噴水のごとく噴き出し、ビシャビシャとハンサムの顔に白いスーツに飛び散り彼の服を赤くまだらに染めていく。
    残った金剛の左の羽根もまた赫に染まる。
    真っ白な天使の装束が赫に赫に塗り替えられていく。
    倒れた金剛はピクリとも動かない。
    見開かれた目は焦点が合っておらず、意識があるかも分からなかった。

    「そう言えば」

    金剛を片足で踏みつけたまま、頬に飛び散った血を舐め取ってハンサムが笑った。

    「羽根をもがれた天使は、能力を失うんだったよね?だったら、純粋な天使ではない君はどうなるんだろうね?」

    目の前で起こった事が信じられず、慶志郎は呆然と座り込んだまま動けなかった。ひゅう、と微かに金剛が身動きした。

    「もう片方の羽根も、もう要らないよね?」

    残った左羽根にハンサムが手をかけた。

    「轟いいィィィーーーーーッッ!!」

    慶志郎は我知らず叫び、足元に転がっていた金剛の剣を取ると闇雲にハンサムに向かった。

    「うああああああああああああっ」

    千切り取った金剛の羽根を手にしたまま、ハンサムが大鎌を慶志郎に向ける。
    メチャメチャに振り回した剣はあっさりと弾かれ、血塗れの刃が首を狙って一閃する

    「サヨナラ、慶志郎」

    もう駄目か……ワタシは何も出来ずに死ぬのか…。

    自分の無力さに絶望し、慶志郎は覚悟を決めて目を閉じた。

    ざぐんっ!

    切り裂く音が聞こえたが、いつまで待っても痛みはやって来ない。

    「………………?」

    不審に思って目を開いた慶志郎の視界に飛び込んできたのは…。

    「……と、とど、ろき…?」

    慶志郎の前に立って両腕を広げ、ハンサムの一撃を受けた金剛の後ろ姿だった。

    「なっ、なん、何で…っ!?轟、轟ッッ!!」

    ぐらりと倒れ込んだ金剛を抱き止め、慶志郎はボロボロと涙を流して名前を呼び続けた。

    「…だい、じょ……だ……お前、さんは…死、でも…守る、から…」

    左の胸から右の脇腹へ斜めに凄まじい傷が走り、金剛が呼吸する度にドクドクと血が流れる。

    金剛の命が、流れていく。

    「あ…あぁ…うああ…!」

    金剛を抱き締めて慶志郎は泣くしかなかった。
    何と己は無力なのだろう。

    「……それが君の本質だよ」

    ハンサムの言葉に慶志郎は泣きながら顔を上げた。

    「君に関わる者は【君を守らねばならない】という庇護欲に掻き立てられるのさ。そこの天使もそうだ。君を守る為なら命を捨ててもいいと思うようになる……君の存在が、そう思わせるのさ」

    それが黄金律体であり、神の器たる君が持つ性質だ。

    「……ふざけた、ことを抜かしやがる…!」

    血を吐いて金剛が呻いた。

    「俺はっ……俺の意志で、コイツを…守るって…決めたん、だ…!ンな、ワケ分かんね…感情なんかで…」
    「昔、アランがクーデターを起こしたのも、そこの慶志郎のせいなんだよ。知らなかったろう?」

    息を飲む金剛に教えてあげよう、とハンサムが言った。


    =====(中略)====

    「ひどいものさ、連中は」

    ハンサムの瞳から涙が溢れた。

    「抜かれた魂はゴミのように捨てられた。黄金律体などあったから!慶志郎、キサマが!!」

    ハンサムの叫びはまるで悲鳴のようだった。

    「キサマなどがいるから!」

    死神の哀哭が胸を突く。

    「私は慶志郎、君の為に大切な者を差し出した。だったら!君も命を差し出して私に償うのが当然だろう!」
    「ざけんなっ!」

    身体を起こして金剛が吼えた。

    「テメエの勝手な逆恨みだろうがっ」
    「轟……」
    「コイツだって、好きでそんな風に生まれてきたワケじゃねえ!」

    叫びと共に金剛が血を吐き、慶志郎は慌てて支える。

    「轟っ、駄目だ、血が…!」
    「……逆恨みでも何でもいいさ…私はこうしないと気が済まないのだから。君達の都合で他人から大切な者を奪っていいなんて、そんな事が許されていい筈がないだろう!?天界なら、何をしてもいいのかっ!?」

    大鎌を構えハンサムが地を蹴った。

    「慶志郎!」

    その刃から逃れるべく、慶志郎を抱き上げ金剛が走り出す。
    これだけの深傷を追いながら、どこにこんな力があるのか。
    彼が地を蹴る度に傷口から新しい血が流れていく。

    「轟っ、もういい!」

    抱えられたまま、慶志郎は叫んだ。

    「もういい、ワタシが居なくなって全てが終わるなら!」

    自分のせいでこれ以上、金剛が傷つくのを見たくなかった。

    「諦めんじゃねえ!!」

    金剛が怒鳴り返す。

    「誰かにテメエの運命を握られて、踊らされて終わっていいわきゃねぇだろうがっ!テメエの人生、テメエで生き抜け!」

    お前を生かす為なら、何だってする。



    ===(中略)=====

    いつか、お前にこの羽根を返したかった。

    「みさおっ!」

    手を伸ばす金剛を一度だけ振り返り、みさおは【門】の向こうに消えた。
    激しい消失感に金剛は呆然と【門】を見つめていた。
    そしてハンサムも【裁きの門】に連行されて行く。
    もう諦めたのか、ハンサムは無言だった。

    「そんなの、駄目だ!」

    慶志郎は天使達を睨み付けて叫んだ。
    ハンサムもまた、大切な者を取り返したかっただけだ。
    「こんなのは間違っている!」
    「分かってください、秩序は保たれなければいけないんです」

    雫という名の天使が宥めるように言った。

    「こんなのが秩序だって!?こんな…、こんな、誰も幸せになれない、悲しい思いだけの世界が秩序だと言うなら!」

    そうだ、こんなのは間違っている。
    これが秩序だと言うのなら。

    「ワタシは要らない!こんな世界なんか!」

    どうして誰ひとり幸せになれないんだ!!!

    大切な人を救いたい。
    大切な友を救いたい。
    好きな人と在りたい。
    それだけが叶わない。

    「……そうだな…そんなの、おかしいよな…」

    金剛がふわりと慶志郎を抱き締めた。

    「…轟っ…!」
    「番長、駄目だ!」

    波彦が焦って言う。

    「アンタ、堕天しちまうよ!」
    「…覚悟を決めたのか」

    鋼鉄が一歩踏み出した。
    慶志郎を抱き締めたまま、金剛が振り向く。
    その拍子に金剛がバランスを崩して倒れた慶志郎もろとも地面に座り込んでしまった。

    「轟っ!」

    慌てて金剛を支え慶志郎はハッとした。
    もう彼の身体に力が入っていない。
    白い服はこれ以上ないくらいに赤く染まっている。

    「……誰も好きになっちゃいけねえ…大切にしたらいけねえ…誰も……愛したらいけねえ……それが、天使だってんなら…」

    真っ直ぐに剛天を見据え、金剛は言った。

    「俺は、天使なんかにならなくてもいい」
    「……それは、そのままの意味で良いのか」
    「あぁ……かまわ、ねぇ……」

    ゼイゼイと苦しい息の下で金剛は答えた。

    「轟、轟…!」

    鋼鉄が地に手を翳すと地面から大剣が現れ、その手に収まる。

    「……俺は、やっぱり……天使に、なりきれ、なかった…」
    「堕天は抹消される」
    「どんな、姿になっても……俺、は…人間で、いたかった、のかも、しんね、ぇ……」
    「お前を失うのは惜しいが、仕方あるまい」
    「……慶志郎、逃げ、ろ」

    抱き締めて慶志郎に告げる。
    こんなにも、こんなにも。

    「お前さん、は…生きろ…」

    ただ、愛しいと。
    お前を置いて逝くコトを。

    「いや、だ…轟、だめだ、駄目だ!」

    お前の前から消えてしまうコトを。

    「ワタシを、置いていくなっ!」

    お前を最後まで、守れなかったコトを。

    鋼鉄が大剣を振りかざした。

    許してくれ。

    「………済まねえ、な………慶志郎…」

    最後にもう一言、ささやいて。
    ヒュウヒュウと微かな呼吸が。
    聞こえなくなった。

    「……………」

    大剣を振り下ろす事なく、鋼鉄が鞘に収める。

    「…………轟…?」

    慶志郎が金剛を覗き込もうとした瞬間。
    サアァーー…と、片羽根の男は真白な無数の羽と化して、慶志郎の前から消えた。

    『愛してる』

    最後に、確かにそう言った。
    何が起きたのか分からなかった。
    手のひらに残った数枚の羽がヒラヒラと風に流されて散っていく。

    「…………こん、ごう…?」
    「轟 金剛は消滅した」

    鋼鉄の言葉に慶志郎は顔を上げた。

    「もう、いない」
    「………ウソだ」
    「戻って来ない」
    「ずっと、側に居るって」
    「済まない事をした」
    「言ったんだ、ワタシに」
    「堕天にはならなかった。もう一度、どこかで生まれ変わる」

    『ずっと守る』って言った。
    『側に居る』って言った。
    『愛してる』って……言った。

    ワタシはまだ、何も伝えていない。
    キミに、答えていない。
    ワタシも、ワタシだって。
    キミが好きなんだ。
    一緒に居たいんだ。
    言いたいのに。
    伝えたいのに。

    なのに、なのに、もう…。
    いない、いない、いない。
    ここにキミはもういない。
    もう永遠に……逢えない。

    ワタシの天使は、もういない。



    【世界観とさっくりネタバラシ含む設定など】

    世界観…人間界・天界・地界・死界とは別に『裁きの門(ジャッジゲート』と呼ばれる、全ての魂が必ず通る門がある。

    キャラ設定↓

    轟 金剛…討伐部隊所属の天使。イレギュラーエンジェル。
    鏡 慶志郎を護衛する為に天界から降りて来る。
    本来、護衛は護衛部隊の管轄だがある特別な理由により轟が任務に就く事になった。
    イレギュラーエンジェル…天使の力を得て天使になった人間をこう呼ぶ。純粋な天使と区別される呼称で、純粋な天使からは蔑まされているが、能力はケタ違い。

    鏡 慶志郎…轟に(一方的に)護衛される事になる人間。
    実は神が数千年に一度、肉体を取り替える為に生まれてくる『神の器』であり、黄金率体である。天界で起きた反乱によって人間界に墜とされ人間に育てられ、地界王にその身を狙われている。

    地界王アラン…かつて天界で最高位『ルシフェル』の称号を持っていた元・燭天使。天界での反乱に失敗し地界に堕ちて王として君臨する。慶志郎を狙う。

    死神ハンサム…死界で実力NO.1を誇る、屈指の死神。
    【契約】により慶志郎の魂を狩る為に彼に近付き暗躍する。

    みさお…金剛が天使になるきっかけになった天使。
    少女の姿のままで永久氷柱に封印されている。


    サラ2の他の新キャラ、美佑&美佐、雫、平くんは天使側か人間側のどちらにしようか迷った。
    設定はここまで考えて断念。
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