銭湯にて秘事「はい、いらっしゃいませ〜」
「いつもありがとうね。またお待ちしてますね」
私の実家は、浅草の大事な大事な社交場の1つである銭湯をやっている。
この前まで、祖母がメインで切り盛りをしていたが、この冬に祖母が腰を痛めてしまったのをきっかけに、私も番台に座ることになった。
銭湯は繁盛していて、土日はお客さんが沢山来る。家族連れや友人やカップルと思われる老若男女。浅草の人々は銭湯が大好きだ。中には毎日のように入りに来るお客さんもいる。お客さんのほとんどは顔馴染みで、私は番台に座り受付をしながら、右に左にと笑顔を忙しく振りまいていた。
「紅ちゃんいらっしゃい!あら?今日は若い子達も一緒なの?」
私の座る番台の正面にある引き戸を開けて、紅丸がヨォと手を挙げながら入ってきた。後ろには、黒髪と金髪の少年が見えた。彼らのことは知っている。この前、浅草の町中で紅丸のかわいがりを受けていた皇国の消防官の子らだ。今日も相当厳しい稽古だったようで、ヨレヨレとした様子でやっとの様子で紅丸の後を歩いている。私は少年たちから小銭を受け取った。
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