だいたい三十一音メモ　2022年11月前半きゅんきゅんと心が締まるその音は実は子宮のものだったりして

きゅんきゅんに詰まってるとか言う友の胸にはきっともう入れない

さらに激しく詰まる様子はぎゃんぎゃんと「それ吠えてんの？」俺から出てけと

もしあの日の君の鳴き声に感情をこじつけなければ死ねただろうか

祈りだと綺麗な言葉を並べても皮を剥いたら青虫がいる

生きている？　死んでないから生きてるよ　今ほらこうして息をしてるよ

ストリングジェルメディウムを頬に塗る雫の形を間違えぬよう

あなたならこう言うだろうと知りながら願うあまりにスプーン曲がる

図書館の月の光に顔を上げ電気椅子から立ち上がらねば

書くほどに書けぬものと知りながら　尚、　筆を持つ殺意と共に

幼き手ならば許すかこの文字を　崩れ絡まり首絞める筆を

『手をかざすとフタが自動で開きます』あなたとのキスは目を閉じずにする

住宅街攻めるキッズに立ちはだかって轢かれるような大人になりたい

「鎮」めるを「沈」めると打つ親指は私よりきっと正直者だ

覚悟とは暗闇の荒野になんて十六のガキが言ってくれるなと思う

懐かしいと思うプリキュアのOPを歌いながら開ける黒染め

幸せは前もってご連絡ください「行きます」と　そしたら私も生き延びるから

やめられず下手な絵を描くぐらいなら露伴になって小指を刺したい

月よりも己を見つめて忙しい月も描けぬ己のてのひら

好きな靴好きな靴下を履けばこの荒野ももしや良きと思える

窓につく白靄などを眺めれば人の眠りを支えたと知る

いつの日か思い出したら電話してあなたが失くした私の番号

報われたい報われたいですもうずっと頑張ってるのに　聞いてる？　聞かない。

死んでやると思って服へ腕通し気づいてしまった埃の煌めき

今日はBOOK OFFの気分ではないかなあ探して見つける潰れたコメダ

伏せられたおっさんの目を縁取った睫毛が私より長くて草

出る杭は打たれるとでも言うように私の睫毛瞼に埋もれて

懐かしいと思うこと勿れその花は君には要らぬ種も栞も

僅かにだけれどあの場所で君と、いや、君、3Bにいたんだっけかそろそろ会いたい

冬の日に黒毛が焦茶に見える頃太陽の色を知るアスファルト

体言止めの意味はわからないけどきっと君を抱き留める為にあるもの

家の中に螺旋階段欲しいよねぐるぐる輪廻を忘れぬように

輪廻って言ったって君。行く先は二つしかない天国か地獄

天皇の刀とかそんなん知らんけど、ああこれがかの十一代目

自論だが（だから読まなくて良いのだが）傷つけてるやもと思うも消せず

自論なので（だから病むなよ）消したときまるで負けた気になる翌朝

卑下すると褒めた相手を否定するように感じ代わりの、ふふふふ

それなりの自負心はあるお前らに負けてなるものか６Ｂで強く

髪の毛を振り乱し君は走り出す陽に照らされて幾筋も光る

「ぶっ殺す」と心の中で思ったならッ──深く傷つく画用紙に黒

幾らでも嫌っておくれ君が君の自我を好きでいられるために