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    Pohumun

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    Pohumun

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    今作業中のものが絶賛鬱展開の為、気分転換に同時進行しだした氷柱if、幼なじみ、親同士が勝手に決めた婚約者童しのです。

    (仮タイトル)戀のいろは唄《少年時代~最悪?な出会い》

    草履に脚絆
    小さな背中に。辛かったらおぶってあげようね」
    まだ幼い少女を気遣って父親は立ち止まり振り返る。

    「だ・・・い・・じょぶ」

    どう見ても大丈夫そうではない。
    「あはははは、しのぶは強い強い。強い子だねぇ。よぉし、強くてかわいいしのぶを抱っこしてあげよう」
    そう言うとひょいっと、しのぶを抱き上げた。

    先程までの強がりは何処へやら。
    えへへ

    嬉しそうに微笑み、父親の首筋に抱きつくしのぶ。
    その背後ではもう少し年長の女の子が微笑んでいるが、少し羨ましいのを我慢しているような、複雑な表情で見上げていた。

    大きな城門
    いや、山門が見える。立て看板には『 万世極楽教』と書かれている。

    その奥には幾つもの鳥居の連なる参道が続く。
    なんとも言い難い独特の雰囲気が漂う。
    脇道の奥には菩薩像が見え、地蔵が立ち並んでいる

    しのぶの表情が青ざめてくる。

    「お化け……出るかな?」

    「あはははは。居るとしても、ここにいる人達はちゃあんと供養されているから大丈夫」

    その時
    キィン!ぱぁん!パシィ

    竹やぶの奥から金属や竹刀の撃ち合う音がした。

    「あぁ、ここの導師様の息子さんかな?カナエの一個下。七歳のはず。最近武術の鍛錬を始めたらしいよ」

    ちょっと見に行こうか。
    そう言われて参道の脇道に逸れると、これまた、無数に地蔵の立ち並ぶ広場のような場所があり、そこで能で使用される翁面をつけた男と少年が剣術の稽古をしていた。
    「まだまだ!脇が甘い」
    天狗が叫び打ち込むやいなや、少年はバク転で回避し何かを投げつけた。

    苦無のような不思議な武器

    苦無の刺さった場所が何故か凍りついている。

    「おぉ」
    翁面が感嘆の声を上げた。
    「やはり相当の素養が……ん?極楽教の御曹司、今日の修練ははこれまでのようです」

    しのぶ達に気づくとシュッと静かに立ち去った。
    「さよなら、翁殿、さよなら」

    感情がこもっているような居ないような。なんとも言い難い口調で挨拶すると、少年は地面に突き刺さるクナイを引き抜き羽織の組紐につけた。
    よく見れば、単なる帯飾りのようだ。


    「こんにちは。いつもの薬屋さんですね?えっと、その子は・・・」

    「ああ、娘のしのぶです。それと、この子は姉のカナエ」

    紹介されぺこりとしのぶは少年を凝視したまま会釈する。一方カナエは良家の娘らしく、手を前に合わせ腰を45度ほど曲げお辞儀をする。
    「こんにちは。大変な山道を御足労いただきご苦労でしたね。むさ苦しいところをお見せしお恥ずかしい限りです。今日は定例の薬の卸売ですね。
    父なら本堂にいると思います。さぁ、こちらへ」

    にこぉっ
    少年は姉のカナエの一つ下とは思えないような、ハキハキした礼儀正しい応対をし、先導しだした。

    「随分しっかりしたお兄ちゃんだろう?」
    少年の事をじぃっと見つめているしのぶに気づいた父親はしのぶに目配せした。

    「年上・・・なの?」
    しのぶが問いかける。
    「うん、そうだよ。確かしのぶの二つ上。御子様は七歳でしたね」

    「はい、そうです」
    問いかけられると少年は答えた。

    年上・・・

    その割には一つしか違わぬはずの姉と比べ小柄だ

    もしかしたら、しのぶと体格は変わらないかもしれない。
    男の子?

    女の子と言われても疑問を感じないほどの色白でかわいらしい。

    そのくせ武術の稽古を始めたばかり、さっき素質があると褒められていた。

    ───何よ!私だってチャンバラごっこで普段から鍛えてるんだから───

    思わず父親の腕の中から宣戦布告していた

    「ねぇ!私だって普段チャンバラごっこで鍛えてるのよ!私といざ尋常に勝負なさい」

    少年はチラリと振り返り

    ふっ

    鼻で笑った

    「あー!バカにしたなぁ?」
    「いや、バカにするも何も、この程度の道でへばって、自分の足で歩けないような子に勝負と言われても」

    後ろでカナエがぷっと吹き出した。

    「ば・・・・ばかにしたぁあああ!きぃいい!!ばかにされたぁあ。降りる降りる降りるー!!!歩けるもん」

    父親の腕から降りるとぶんむくれた顔で少年の後ろをずんずん歩く。

    「ほら!歩いてるでしょ。後で勝負なさい」
    少年は呆気に取られたような表情で振り返り、薬商の男の顔を見上げる。
    お前の娘を止めろとでも言うように。
    「コラ、お兄ちゃん困ってるでしょ。いい加減にしなさい」
    しのぶの聞かん気はいつもの事だが、流石にこれはまずいと薬商は仲裁に入る。
    しかし、しのぶは聞かない。

    「勝負するんだもん」
    「しのぶ!いい加減にしなさい。遊び程度のチャンバラごっこと武術じゃ違うんだ。しかも、年下の女の子相手なんて、お兄ちゃんが後でお師匠さんから怒られちゃうんだよ?」
    その時少年が余計な一言を言った
    「え?そのこ女の子なの?」

    「うるさ〜〜〜い。あんただって男だか女だかわかんない顔のチビのくせに」
    しのぶは少年の背中を蹴飛ばした。

    「こらー!しのぶ!」

    ついに日頃は温厚な薬商の雷が落ちた。



    「うぇぇええ、うわぁあああん。えっえっ・・・ひっぐ」

    父親にしこたましかられたしのぶは寺院の中庭の人工池の畔に蹲り泣きじゃくっていた。
    その傍では困ったように先程の少年が付き従っている。

    「あはははは、怒られちゃったね」

    敢えて笑い飛ばしてくれたようだが、それがかえって癇に障る。

    「ひっく・・・うわぁあああん!あぁあああんお前のせいだぁあああ」

    少年をポカポカ叩き、無抵抗なのをいい事に馬乗りになる。


    「こらーしのぶ!やめなさい!今夜は晩御飯抜き!土蔵に閉じ込めるぞ!」
    遠くから見ていた父親の怒声が響く。後の世なら完全にアウトだが、この時代にはド定番とも言われるお仕置の宣告がされ、さらにしのぶは泣きわめく。

    「や・・・・いやぁあああ土蔵やだぁあああ、私悪くないもん」

    ポカポカポカポカ
    お前のせいだ、お前のせいだと八つ当たり猫パンチを繰り出す。

    「え・・・っと・・・しのぶちゃんだっけ?剣の相手してあげればいいのかな?そうしたら泣き止んでくれる?」
    少年は困り果てたように泣きわめくしのぶの頭を撫でる。

    これがかえってスイッチをいれる結果になった。

    「うわぁあああん、あぁああああん、わぁあああああん。ばかぁああ、ばかぁあああ、おとこおんなぁあああ」

    少年は困り果ててしまった。愚かではあるが、そこそこ分別のある大人しか相手をした事が無い。同年代の、こんなにカンの強い子供の相手をしたことが無い。
    だんだん少年は本当に困り果てきってしまい、助けを求め出した。

    「ろ・・・ろくさ・・・・どうしたらいいのぉ、僕泣き止んで欲しいだけなんだけど。ろくさぁああん」
    ついには少年まで半べそをかきはじめてしまった。

    《喧嘩友達》

    その日から、しのぶと少年の奇妙な交流が始まった。
    例の件があったため、父親はしのぶを極楽教寺院に再び連れていくのをたいそうしぶったが、しのぶは強情について行く。
    そして、再び勝負を挑むのだ。
    逃げる少年。追いかけるしのぶ。

    勉学をしていれば、隣にへばりつくようにじぃっと何をしているのか観察を続け、寺院の跡取りとしての修行をしていれば、やれ、これは何をしている、なんのためなどなど質問攻め。

    寺院のものたちは「これは大層懐かれましたな」と笑うばかり。

    ペースを乱される少年としてはたまったものじゃない。
    「もぅおおおお!ろぉくぅさぁああん、「コレ」なんとかしてよぉお」



    毎回毎回従者に泣きつくが、ただ笑って流されてしまい、不貞腐れる日々。
    「もうっ、みんな意地悪ぅ」

    この時しのぶも少年もまだ知らなかった。
    寺院側と両親との間で許嫁の約定が結ばれていたなどということは。
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