まくらゴーッと耳の奥に響く機内の音と、頬に感じる冷たい冷房が、これからの長いフライトのために寝よう寝ようとしていた俺の意思を削いでいく。
俺はこんななのに、と俺の左側で腕を組んで口を薄く開けて事も無げに眠る男をジトリと見つめた。
アイマスクもなし、耳栓もなし、俺みたいにスリッパに履き替えてもないし、ゆるゆるの服を着てる訳でもない。あるのは機内で配られた茶色のブランケット、それだけ。
唯一いつもと違うことと言えば、搭乗前に義手義足のネジの緩みがないかどうかを入念に確認していたぐらいだった。
「ふふ、眉が下がってるよ」
まるで家で寛いでいる時と変わりなくて、少しだけイラッとした俺は、見るからに硬そうなふーふーちゃんの肩にブランケットを適当に丸めて押し当てて、グリグリと顔を押し付けた。
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