アホな会話二人でひとつ屋根の下で暮らすようになって気づいたことだが、どうやら俺の恋人は所謂『束縛系』というやつ、なのかもしれない。着るもの、食べるもの、家で過ごす場所を押し付けがましくない圧でやんわりと誘導してくる。多分、その気になれば誘導していることすら隠せるのだろうが、敢えてそれを隠さないことで、こちらには選択肢があるのだと思わせるところが小賢しい。いや、紛れもなくとんでもなく賢い人ではあるのだが、小賢しい。
「それで?うんざりして別れようって?」
「そんなわけないだろ」
ただ、居心地が良すぎてダメになりそうで怖い。職を辞してすっかり緩んだ男が、あの人にとってどれだけこれからも価値があり続けるのか分からないし、あの人がいなければ何も出来なくなりそうな自分も怖い。
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