受け継ぐ味「うさぎの痕跡はわかるか?」
積雪の中、背の高い針葉樹を背後にした大男が少年とも少女ともとれる子供に話しかけた。
途絶えたうさぎの足跡をそっと撫でていた子供は、やがて少し濡れた皮手袋の先をこすり合わせて、こくりと頷いた。
大男と子供の会話は少なく、辿ってきた足跡を数歩戻し、その周囲を子供が注意深く見渡す。
大男の方は、特に助言することなどないと言ったように腕を組んだまま仁王立ち、たまにもう知っているかのような目くばせを西の方角へと向けるのみだ。
やがて子供もその方角へと視線を定め、何を言うでもなく、雪を踏みしめる音にすら気を使うようにゆっくりと歩み始めた。
子供が茂みを抜け、せせらぎを越したところまで見届け、やがてその姿が見えなくなり……弓矢が風を切る音と短い悲鳴を聞いたところで、大男はやっと緊張を解いたように息をつく。
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