一緒がいい晴れて大学に合格し、俺と井田は一緒の部屋に住むことになった。
今日は家具選びの相談をしていた。
「ベッドはやっぱり」
「一緒が」
「別々が」
「「いいよな」」
「いいよな」の部分だけ重なる。
前半の言葉の不調和音にお互いが首をかしげた。
「え?井田。ベッド一緒がいいの??」
「青木は別々がいいのか?」
「いや、だってそりゃ…一緒だと緊張するし、意識するし…絶対寝れねーじゃん!」
井田とはえっちなことは、まぁちょこちょこしてる。
最後まではまだ一回だけ。
思い返すと未だに恥ずかしい。
「俺は毎日青木と一緒に寝たい。毎日抱いて青木を感じたい」
「はっ、はぁぁ!?お、お前真顔で何言ってんだよ!毎日はさすがに無理だろ!」
「なんでだ」
「なんでってそりゃ…これから慣れない生活で忙しくなるだろうし…毎日やるとか…そんなのとても…」
夜の情事を思い出しだんだん声が小さくなる。
「?青木。もしかして勘違いしてないか?」
真っ赤になってうつむいてしまった俺に不思議そうに聞いてきた。
「え?」
「もしかして毎日セックスしようって意味だと思ってるんじゃないか?」
「ふぁっ!?」
あんまりに直接的な言い方に顔が爆発しそうになる。
「おおおお前はなんでそんなこと平然と言えんの!?」
「俺が言ってるのは毎日青木を抱きしめて眠りたいってことだ。
すぐ側で体温感じて眠りたい。豆太郎ともよくそうしてたし」
「豆太郎扱いかよ…」
「毎日はしない。俺はしたいけど、さすがに青木に負担かかるし。
セックスする日は青木が休みの日とか負担かからない日にしよう」
「う、うん」
まぁそれだったら今日はどうなんだろうって無駄に緊張しないでいいのかも。
ってかなんでこいつセッ…とか恥ずかしげもなく言えるわけ!?
「学部も違うから一緒にいられる時間って限られてくると思うんだ。だから一緒に眠りたい。どうしてもだめか?」
潤んだ瞳で見つめてくる。
俺は井田のこの表情に弱い。
「そ、そういうことなら駄目じゃねーけど…。俺だって少しでも一緒にいたいし?」
「そうか!じゃあ決まりだな」
ぱぁっと。音が聞こえそうな勢いで破顔した。
「今度一緒にベッド選びに行こうな」
「おう」
嬉しそうな井田をみてこっちまで嬉しくなる。
なんだただ純粋によりそって寝たいってことだったのか、深読みしすぎだったなー、そんな毎日するとかありえねーよな。
と、そこまで考えて何かひっかかってることに気づく。
【毎日はしない。俺はしたいけど】
ふいに先程の井田の言葉がおりてきて固まる。
あんまりに自然に言われて流したけどこいつなんてった?
オレハシタイケド?
???
「え!?」
「どうかしたか?青木」
「べっべつにナンデモ!?」
さっきの言葉の真意を確かめる勇気はなく咄嗟に否定して会話を終わらせる。
そうかと言いつつ、家具のカタログを嬉しそうに眺める井田を呆然とながめた。
つまり俺は毎日したいと思ってる恋人と毎日寄り添って寝るってこと??
もしかしてやっぱり俺、井田のこと見くびりすぎなのか!?
危機感。
その言葉が俺の脳裏を再びよぎったのであった。