乙棘お清めセッ久編「大丈夫?ゆっくり掻き出すから。力を抜いて。」
全裸のままベッドに力無く横たわった狗巻くんは小さくコクリと頷いた。
僕は狗巻くんの左脚を持ち上げて大きく開かせ、自分の体をその間に割り込ませた。狗巻くんの体はそれだけでビクッと震えた。
「本当に大丈夫?無理…しなくていいんだよ?」
理性的な自分を装って口ではそう言ったけど、狗巻くんの中に入ってる僕のものではない異物を、今すぐ無理矢理にでも完全に排除したくて仕方なかった。だけど、自分の中で渦巻く怒りや虚しさを傷付いた狗巻くんにぶつけて、余計に怯えさせてしまっては元も子もない。
これは僕たちが"生まれ変わる"ための神聖な儀式。
今後も僕たちが恋人として関係を続けていくためには、ここでのプロセスを間違えるわけにはいかない。細心の注意を払って、慎重に進めなくては。
狗巻くんも気持ちは一緒なのか、大きく頷き真っ直ぐ僕を見つめた。そして僕の右手を取ると、小さく震えながらも自分の後孔に導いた。
「入れるよ?」
僕の人差し指をそっと彼の後孔の入り口に添え、指先をぷつっと埋める。
狗巻くんの腰がピクリと揺れた。
なるべく不快感を与えないよう気をつけながら、第一関節から第二関節、そして付け根までゆっくり飲み込ませていく。
「ぅ…」
狗巻くんは自分の右手で口元を押さえ、必死に声を我慢している。
「声出しても良いよ。しっかり呼吸して。」
声を我慢するたび後孔にもキュッと力が入ってしまうから、きっと指の形を嫌でも拾ってしまうだろう。呼吸でいきみを逃した方がいい。優しく背中をさすって狗巻くんの緊張を解した。
また少し力が抜けた所で中指を後孔の縁に引っかけ、人差し指の時と同じようにゆっくりと挿入していく。
狗巻くんはハッハッと必死に呼吸しながら異物感に耐えている。汗の滲んだ額に唇で触れるだけのキスを贈る。
狗巻くんの後孔に埋めた2本の指を体内で少し開くと、広がった孔の隙間から白濁のまじった体液が漏れ出した。
「ぅぅぅ…」
生ぬるい他人の体液が敏感な部分を伝い落ちていく感覚に、狗巻くんの肌が粟立った。一体どのくらい凌辱され続けたのか、体液はとろとろととめどなく流れてくる。
(僕がもっと早く駆け付けていれば…)
悔しくて唇を噛み締めた僕の指先にもつい力が入って、グチュと狗巻くんの中をかき混ぜてしまった。
狗巻くんは「あぅっ!」と一声大きく喘ぐと、ガクガクと震え始めた。
「ごめん!痛かった?!」
狗巻くんが心配で、顔を覗き込むために僕が上から覆いかぶさった瞬間、狗巻くんの脳内で何かがフラッシュバックしたのか、彼は目を見開いて嘔吐した。
「ぅ、おぇっ…っっ…」
僕はすぐに狗巻くんの上から飛び退いて、何度もえずく狗巻くんの背中を柔らかな力でゆっくりとさすった。
「大丈夫、僕だよ。落ち着いて…そう、もう何も怖くないよ。痛いこともしない。ずっと側にいるよ。」
小さな子供に語りかけるような甘く優しい声で、努めて穏やかに耳元で囁いた。
少しずつ落ち着いてきた狗巻くんは一生懸命呼吸を整えて、湧き上がってくる恐怖心を必死に抑えこもうとしている。
(どうしてこんな事に…)
呪術師として死と隣り合わせの生活を送りながらも、僕たちは確かに幸せだったのに。
体をつなげる事は、言葉では伝えきれない愛情を伝え合う、僕たちには何よりも大切な手段だったのに。
狗巻くんは大きな瞳の縁に涙をいっぱい溜めて、震えながら僕に抱きついて胸に顔を埋めた。
「こんぶ…」
「謝らなくてもいいよ。狗巻くんは何も悪くない。」
自分を責めている様子の狗巻くんを慰め、そっと抱きしめる。
(大丈夫。狗巻くんの痴態を知っている人はもう、この世で僕だけだよ。)
あの時抑えきれなかった怒りは、あの場にいたあいつらに全てぶつけてきた。
それなのに未だに燻って、再び燃え上がりそうになるこの気持ちは一体何だ?
「大丈夫。大丈夫。」
自分にも狗巻くんにも言い聞かせるように何度も呟いた。狗巻くんはギュッと僕に縋りついて、腕の中でこくこくと頷いた。
僕の愛する人が苦しんでいる。僕と愛し合いたいのに、気持ちと体をうまくコントロールできない。
僕の心も同じように苦しくて悔しくて虚しくてどうしようもないはずなのに、僕の体は愛する人に触れただけで素直な反応を見せてしまう。
(怯えないで、怖がらないで、僕を、拒絶しないで…)
ともすれば狗巻くんを追い詰めてしまいそうな言葉を、僕はさっきから何度も何度も飲み込んでいる。ふとした瞬間に溢れ出してしまいそうなくらい、もうずっと胸が苦しい。
本当はこの激情を曝け出して君をめちゃくちゃにしたい。
僕のペニスであいつらが触れた奥の、更に奥までめちゃくちゃに突いて、僕の出したものだけで君の中を満たしたい。
声が出なくなるほど喘がせて、何度も意識を奪って、君の記憶を全て塗り替えてしまいたい。
大切にしたい。
傷つけたくない。
受け入れて欲しい。
壊してしまいたい。
全てが今の僕の本当の気持ち。
(ああ、どうしてこんなにも興奮するんだろう。)