転化40年後の8月7日「明日だけど、何が食べたい?」
隣に座る男に尋ねれば食い気味に「オム焼きそば!」と弾けた声が返ってくる。肩に乗っていたジョンが大賛成と言わんばかりに小さな両手を上げた。
「肉いっぱい入れてくれよ。あ、ケーキはバナナのがいい!」
子どものようにねだる彼の顔には、歳月を重ねた証である皺は刻まれていない。実年齢はもう百の大台に乗っているというのに、瑞々しく眩しい美貌がそこにはあった。
どうにも異常なほど吸血鬼の適性があったロナルドは、少し多めに血を飲むとドラルクが「若造」とよく読んでいた頃の姿に若返ってしまうのだ。吸血鬼としての能力は強大なものの微調整は苦手な彼は変身で上手く見た目を調整することはできず、一度若返ったらしばらくはそのままだ。昨夜ブラッドワインを開けたから、少なくとも一週間はこの姿だろう。
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