お弁当と告白 中也は料理を作るのが好きだ。だから毎日弁当を持って来ている。それは自分が食べるためであって誰かのために作った物じゃない。
辺りを見回して誰も居ない事を確認すると鞄から弁当箱を取り出す。包みをほどいて弁当箱の蓋を開ける。今日の卵焼きはうまく焼けた。それは中也がつやつや黄金色をした卵焼きを箸で摘み味わおうとした時の事だった。口に入るはずの卵焼きはどうしてか目の前から消滅えてしまっていた。
「えー私は自分卵焼きはしょっぱい方が好きだって云ったのに」
太宰はそう云いながら中也の箸を奪い弁当を食べていく。しかも食べながらこの煮物は味付けが濃いと文句を云ってくる。
「文句云うなら食うなって云ってるだろ」
何回も同じ事を云っているが文句を云いながらも中也の弁当を奪うのをやめようとしない。タチの悪い嫌がらせだ。どんどん弁当箱の中身が減っていくが、止める気にもならずに中也は溜め息を吐く。
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