ショタおに 無慈悲に敵を屠る冷徹なマフィア。年若いながら数々の功績を残していて、幹部に最も近いと云われている少年がいる。その笑みを見た者は冷酷無比な黒社会の者達ですら震え上がる。
「中也ぁ僕疲れちゃったよ」
そんな少年は今自分の膝に寝転びあまえた声を出している。
「疲れたってそんな動いてねェだろ」
「僕は頭を働かせてたから! 頭脳労働したら疲れちゃったんだよ」
そう云ってじたばたと手脚を動かす様はまるで子供だ。正しく子供である年齢なのだが、その子供らしい無邪気さがこうして発現させるのは中也の前だけなのだ。中也はこうした太宰の姿を見慣れているが見る者が見たら卒倒ものだろう。
ある日突然首領である森が拾ってきた少年は中也によく懐いており二人きりになるとこうしてあまえてくる。普段はそんな素振りは見せないのに二人だけの時は、ここぞとばかりにあまえてくるからちゃっかりしている奴だと思う。
「今日も頑張った僕を撫でてよ」
「ああ、はいはい」
「もー! 雑になでないで! もっと丁寧に」
云われるままになでてやるがお気に召さない様子で頰を膨らませる。本当にこの姿は駄々っ子そのものだ。前に一度本人に向かってわがままな子供だと云ってやった事があるのだが、逆に子供だからと開き直られて余計に悪化してしまい手に負えなくなっている。何を云っても太宰が態度を変える気はないようたから放っておく事にした。でも放っておいたが為に最近はますます調子に乗っている気がする。
掌でガシガシとなでるのは気に入らないようだったから、指先で優しくなでてやると太宰は気持ち良さそうに瞳を細めた。耳の形に沿って指を這わせてゆっくりとなでると深い溜め息が吐き出される。
「うん……もっと」
太宰の瞳がゆらゆらと揺れてあまくねだる声音でそう呟く。こんなにとろけた顔をして見せられたらついあまやかしてしまいたくなってしまう。ゆったりと髪をかき混ぜながらなでてやるとその顔にふわりとした笑みが浮かぶ。そんな顔を見ているとたまらず抱きしめてやりたい気持ちになるから、中也が両手で頭を包み込むとふっと笑うような気配がした。
「ふふ、そう。そうやってもっといっぱい僕をあまやかしてよ」
あまくとけだしていくような笑みに胸がいっぱいになる。この姿を皆に見せ付けてやりたいような……でも自分だけのひみつにしておきたいような、そんな気持ちが渦巻いていた。