ししくらPの愛情と防水(途中まで) ある晴れた週末の午後。
やわらかな風が図書室帰りの肉倉精児の前髪を乱した。制帽を脱ぎ、携帯用の櫛でさっと整える。士傑生たるもの身だしなみにも隙があってはならない。
梅雨明けの、初夏の日射しがまぶしい。
運動部の練習の声。吹奏楽部の音色。活発に議論を交わしながら追い越していくのは経済学部の生徒たちだろう。
いつもの学び舎の風景だ。
風は誘うように頬をなでていく。
思わず旋回する風が混ざってはいないかと振り返った。
そして肉倉は、夜嵐イナサを洗いたい──と思ったのだ。
かねてから肉倉の行動力には定評があった。
大抵の場合、行動的であるとかないとかではなく「奇行」と言い表されるのだが、やるときにはやる奴だと評価されているには違いなく、また本人の自覚もあった。
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