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    rara_12241

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    rara_12241

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    肉塊いなさを洗いたいお肉、がんばる。

    ししくらPの愛情と防水(途中まで) ある晴れた週末の午後。
     やわらかな風が図書室帰りの肉倉精児の前髪を乱した。制帽を脱ぎ、携帯用の櫛でさっと整える。士傑生たるもの身だしなみにも隙があってはならない。
     梅雨明けの、初夏の日射しがまぶしい。
     運動部の練習の声。吹奏楽部の音色。活発に議論を交わしながら追い越していくのは経済学部の生徒たちだろう。
     いつもの学び舎の風景だ。
     風は誘うように頬をなでていく。
     思わず旋回する風が混ざってはいないかと振り返った。
     そして肉倉は、夜嵐イナサを洗いたい──と思ったのだ。

     かねてから肉倉の行動力には定評があった。
     大抵の場合、行動的であるとかないとかではなく「奇行」と言い表されるのだが、やるときにはやる奴だと評価されているには違いなく、また本人の自覚もあった。
     すぐにメッセージアプリで要件を送る。
     全寮制の士傑高校は生徒一人ひとりに個室が与えられている。簡単に整理整頓を終えたころ、夜嵐イナサが訪れた。
    「自主鍛錬ご苦労。休日にも修練を欠かさないとは、貴様も士傑生としての責務と矜持を理解するに至ったのではないか」
    「恐縮っス! でも先輩方に比べたらまだまだっス。……あの、すいません、訓練のあとシャワー浴びないで来たんで、ちょっと俺、今、汗臭いかもしれなくて」
     入り口で自らの二の腕や脇の匂いを嗅いでいる。
     眉を寄せて自らの二の腕をクンクンしている様子は素直で無防備かつ愛らしい。素直で無防備、なおかつ大変に愛らしい後輩が自室にいるのはよいことである。可能であれば半永久的に置いておきたい。なぜ我が校の寮は個室であるのか。士傑高校に入学してからはじめて不満を抱いた。
    「構わん、入れ」
    「お邪魔します。肉倉先輩に呼ばれたのうれしくて、早く会いたかったんで。一応、顔は洗って身体もちゃんと拭いてきたんスけど」
    「どのみち今から全身を洗うのだ」
     確かに、そうっスね、と笑う。
     いや待て、会話を巻き戻せ。何か大切なことを言われた気がする。
     ──うれしくて、早く会いたかったんで、だと? 私もだイナサ、私もわずかでも早急に貴様に会いたかったそして可能な限り共に過ごしたい──などと舞い上がってはいけない。イナサは無自覚に相手が喜ぶ言葉を口にする癖がある。何かにつけて、好きっス、と告げられる私が言うのだから相違ない。
     ……ひとの気も知らずに。
     だが、私は、そのように率直なイナサが好きなのだ。
     後輩は休日ゆえに制服ではなく、台風のイラストが描かれた白のTシャツに、着古したデニムという格好だった。なぜ裸足で下駄を履いているのかは問うまい。バンカラ気質なのだろうか。実は番長なのかもしれない。まさか。
     歩くたびに鳴る、カランコロン、という音がこの男の居場所を教えるので便利ではある。
    「俺のこと洗ってくれるんスか? あ、これどうぞ、お土産っス」
     実家から送られてきたという桃をテーブルに置いた。
    「有り難う、いただこう。そうだ、肉塊にして洗浄したい」
     袋から取り出した桃を検分する。瑞々しく甘い匂い。やわらかさから推測するにちょうど食べごろであった。イナサのご両親に礼を言わねば。考えると少々緊張してきた。
     桃は、よい。ふっくらと丸い形、色づいた薄い皮に生える乙女の頬の産毛のごとくささやかでちくちくな毛で守られている。いや、ちくちくは印象が悪い、さらさらか? 
    「急に俺の頬っぺなでてどうしたんスか? 何かついてます?」
    「ふわふわであった。意外である」
    「顔がやわらかいってことスか? 考えてもみなかったっス。肉倉先輩、ときどき急に触ってくるんでびっくりします」
    「……嫌か?」
    「嫌じゃないっスよ! 肉倉先輩に触られるの好きっス。肉塊で洗われるってのも滾る!」
     こいつは、また。
     軽くにらみつけ、桃を冷蔵庫にしまいながら思考する。
     肉倉の個性“精肉”で触れた者は三十センチ前後の肉色の物体と化す。肉のかたまりと呼ぶにふさわしく、身動きはとれず、声を発することもできないのに痛覚はある。ただでさえ恐怖であろうに、さらに本日は洗われてしまうのである。
     嫌悪感があれば不可能だ。
     ──そうか。イナサは私に触れられるのが嫌ではないのだ。
     胸の中に小さく灯りがともったように感じた。あたたかな光である。
     それに加え、イナサ本人が前向きなのは僥倖であった。
     肉倉とて嫌がる後輩を無理やり丸めて捏ねた挙句(手籠めにするとはまさしくこの行為を指すのだろう)、揉んでつついてはむはむペロペロと舐め回し、指を埋めて内側をぐちゅぐちゅと掻き回して、好き勝手に弄り倒すなどという非道な行いをしたいわけでは──。
    「どうしたんスか急に前屈みになって。大丈夫スか、お腹痛いんスか?」
    「……構うな。私事である」
     背中をなでる大きなてのひらが温かい。優しい。夜嵐イナサは大抵優しいのだ。
     私は白昼堂々、貴様を対象にした卑猥な妄想で立ち上がれなくなっているというのに。否、勃ってはいる。ゆえに立てないのである。最低である。
     自らの加虐的な妄想を恥ずべきか、否。己の欲望に正直であれ、と私が言った。
     まず、本人の了承は得たのだから。
     ならば後は捏ねるだけ──ではない。イナサを洗うとはそれほど単純な話ではないのである。

     ──肉塊イナサ洗い師(自称)である肉倉精児の朝は早い。

     起床後、朝食の前に走り込みと柔軟運動。野菜中心の朝食を採り、授業がはじまるまでに筋トレをこなす。毎朝欠かすことはない。継続が力となるのだ。
     一見、関係のないように思える基礎訓練が実はイナサを洗う、という行為に必要な修行だと気づく者は少ない。プロヒーローになるための修練がイナサ洗いに通じているといってもいい。肉体的にも、精神的にも。
     両者の共通点に想いを馳せ、しばし目を閉じる。
    「つまり──理知的であらねばならないのだ」
     細い目をカッと見開いた肉倉は後輩扮するインタヴュアーに説いた。
    「なるほど」
    「どちらも、どのような場合でもである」
     両手の動きはまるでろくろを回すがごとくだった。
     識者のインタヴュー映像でよく見るやつだ。とイナサは思った。

     話はさらに濃く熱を帯びていく。熱い肉倉は好きなのでうれしい。語っている内容が多少アレであってもだ。まず、肉倉精児は普段からちょっと変人──いや、クセが強くて少し難しい人ではある。
     でもそんな肉倉先輩と一緒にいるのが楽しかった。自分じゃ考えつかないような発想、戦い方、“個性”の使い方。この人に呼ばれたり誘われたりすると身体が熱くなる。気分がよくなって高揚して、気づけば好きだと思ったことをそのまま口走っている。
     今までは肉倉の反応に構わず好意を伝えてきた。けれど。
     この人は俺をどう思ってるんだろう。
     肉塊じゃなくて今のままでも洗いたい、と思ってくれるだろうか。
     ──いや、何を考えてるんスか俺は。
     この人は、肉塊を洗ってみたいだけだ。自分の個性でいろいろ試したいんだろう。予定が空いてたのがたまたま自分だっただけで。
     だから俺じゃなくても、他の誰かでも……。
     他の誰かでも、この人は──俺にするみたいに、丸めたり捏ねたり……たまに吸ったり……? するんだろうか。
     なんでだろう、考えると居てもたってもいられない気持ちになってきた。そわそわする。落ち着かない。肉倉先輩が話してるのに。
    「──ゆえに、貴様でなくてはならないのだ」
    「えっ」
     心の中を見透かされたのかと思った。
    「夜嵐イナサ、私は貴様だからこそ洗浄したい」
    「──ッ、はい!」
     うれしい。どうしたらいい、うれしい。途中を聞き逃したのがくやしすぎる。
    「なりたいだけではなれない。洗いたいだけでは洗浄できない。理不尽と感じるか、己への挑戦と取るかで私の明日は変化するのである」
     落ち着かない気持ちはどこかへ行ってしまって、うんうん、とイナサがうなずくと満足そうに大きく息を吐いた。
     話し続けたせいか肉倉の頬が上気して赤くなって、得意気で、そんな顔をすぐ近くで見ていたら微笑ましくてにこにこしたくなって困った。
    「何を笑っている」
    「……いえ、笑ってないっス」
    「今さら真剣な顔をしても遅い。貴様の柔い顔を揉んでやろう」
    「うれしくて溶けちゃうんでやめてください」
    「トロトロにしてやる。──まったく、可愛らしいことを言っている場合ではないのだ、ついて来い」
     
     目の前に見慣れないものがあった。バスタブの横に置かれた、大きさは五十センチくらいで透明な、ビニール製の道具。肉倉は白いシャツを腕まくりして、黒のエプロンを着けてきた。カフェ店員みたいでかっこいい。
     二人はバスルームにいた。
     士傑高校の寮は、共同の大浴場とは別に各部屋に浴室がついている。
    「しばし待て」
    「はい」 
     しかも、普段は片目を隠している前髪をヘアピンで留めている。両目が見える肉倉はレアだ。もっと見たい。もっと、近くで。
     こういうとき、無性に、無理やりにでもつかんでこっちを向かせたくなる。
     好きなものは捕まえたい。捕まえて自分だけのものにしたい。
     だけどやっちゃいけないのもわかっている。やったらきっと嫌われてしまうのも知っている。
     ……嫌われるのは、いやだ。
     だから肉倉の手が止まったとき、そっと声をかけた。
    「肉倉先輩、お願いなんスけど、ちょっとだけ俺の方、向いて欲しいっス」
    「貴様、急に、何を、そのような愛らしい催促を……」
     後ろに立っているイナサをしゃがんだまま振り返り、見上げてくれる。
    「やっぱりかっこいいっスね! 両目見えてるの、いいっス、好きっス」
    「……そうか」
     耳が赤い。気がする。まくった袖から出た腕が細いのに筋張っていて、動くのを見ているとどきどきしてきた。   
     シャワーでお湯をそそぎながら差し入れた温度計をにらみつけている。俺を洗うのに適温とかあるんスか? 風呂は熱いのが好きっス。
     しゃがんだ肉倉の肩口からのぞきこんで、まだ赤い耳に唇を寄せて小声で話しかけた。
    「……ししくらせんぱい」
    「なっ……!」
     作業の邪魔をしてしまったらしい。
    「すいません、でも俺、熱いのが好きっス」
    「誤解を招きかねん内容を、吐息交じりで煽情的に囁くな、息を吹きかけるな!」

    「ところでこれってなんスか? ビニールプール?」
     に、しては小さい。
    「赤ん坊が沐浴するためのベビーバスである」
    「そういうのがあるんスね。ん? なんで肉倉先輩の部屋に赤ちゃんのお風呂があるんスか?」
    「購入したからだ。一か月ほど前だったか。ショッピングモール内の専門店で発見し、肉塊の貴様を洗うのに最適だと判断した」
     見習いたい行動力だった。どんな顔をしてレジへ持っていったんだろう。想像してみるけど普段と変わらない澄まし顔な気もする。さすが肉倉先輩。
    「うむ、湯の温度はこれでよいだろう──イナサ、おいで」
     立ち上がり、振り返って、タオルで拭いた手を差し伸べられた。
    「はい、あの」
    「どうした。肉塊にするには触らねばならない」
    「そ、そうッスね、すみません」
     とても穏やかでやさしい言い方だったから。
     何か、別のことをされるのかと思った。抱きしめられるとか、キスとか。
     って、俺は何を考えてんスか!
     今日はなんだかおかしい。いつもみたいにできない。
    「めずらしい、緊張しているのか。力を抜け。楽にしていろ」
     肉塊にされるのは初めてじゃない。なのに変なふうにどきどきした。肩をなでられた、と思ったときには身体がぎゅっと収縮する感覚があって、
     ──落ちる!
     ぺちゃりと浴室の床に落下する前にキャッチされた。片手でわしづかみにするのではなく、両手で大事そうに抱き上げる。よしよし、と乳幼児にするようにあやされた。
     ──俺は赤ちゃんじゃないっス。
     思うものの、声は出せない。
    「うまく丸まった。少々捏ねて形を整える」
     身体のなかにこの人の指が入ってくる。一瞬、緊張する。けれど一瞬だけだ。すぐにマッサージみたいで気持ちよくなる。揉まれて、ほぐされて、こすられて、眼球を二つとも剥き出しにされた。
     剥き出しの眼球の下を親指でなでられるのがくすぐったくて、ぎゅっと目をつぶった。

    「不快であったらすぐに合図を送るように」
     ぬるま湯にゆっくりと自分の肉体が沈められていく。不思議な感覚だった。背中があたたかくて力が抜けてしまう。次に頭、首筋。ぞくぞくして、あー、と声を上げたくなる。
     この歳で他人に風呂に入れてもらう体験をするとは思わなかった。
     しかし相手が肉倉だということ、しっかりと頭と首の後ろを支えられていて安定感があることがイナサを安心させた。
     肉塊にされた身体はぐにゃぐにゃして自立が難しい。動かせるのは眼球だけだ。一生懸命、肉倉を見ようとすると目が合った。
    「熱いか?」
     YESで一回、NOで二回、まばたきをするように。言われた通りに二回、ぱちぱちをする。
    「よしよし、いい子である」
     だから俺は赤ちゃんじゃないっス。
     なのに、なんでそんなに愛おしそうなんだろう。
     イナサの腹には薄手のタオルがかけられている。冷えないようにだろうか。片手で腹や胸にお湯をかけられて、肉が寄って皴になっているところに指を入れて掻き出すようにされて、軽くなでられるのが気持ちいい。
     ──だけど俺を洗うためだけに赤ちゃん用の沐浴セットを買っちゃうの、どうなんスか。形から入るタイプなんスか?
     一か月前に購入してたってことは、思いつきじゃなくて前々から計画してたってことになる。いつから俺のこと洗いたいって思ってたんスか。そもそも肉塊の俺を洗うって、肉倉先輩にとって、どんな意味があるんスか?
     ただ、このベビーバスは俺以外に使って欲しくない。
     この人に俺以外の誰かを洗って欲しくない。
     自分でも驚くくらい強く思った。
     ……なんで。
    「洗浄するぞ。泡を身体につける」
     泡で出てくるボディソープを使って、くるくると円を描くように洗われていく。桃みたいないい匂いがする。ふわふわの泡で優しく洗われるのがくすぐったい。自分で洗うときは硬いタオルと石鹸で全身がしがし洗ってしまうのに。
     シャワーで泡を流すとき、手をかざしてイナサの目にお湯が入らないようにしてくれた。
    「肉塊サイズのシャワーハットがあればよいのだが……」
     自作してみるか、と、湯を止めながらつぶやく。
     肉倉に全部任せていることに、なんの不安もなかった。安心。幸せ。……好き。
     ……好きだと言いたい。
     ぱちっと目を開けると肉倉が覗き込んでいた。急にどきどきしてくる。
    「寝ていたのか。心地よくなるのはよいが、あまり長湯をすると風邪をひいてしまう。出るぞ」
     ゆっくりと持ち上げられ、すぐに大きくてふかふかのタオルで包まれた。腕に抱かれて下から見た肉倉がいつもより頼もしく見えた。

     ベッドに敷かれたタオルの上にころんと寝かされる。全身がぽかぽかと温かくて心地よくて油断すると寝てしまいそうだった。
    「寝るな、耐えろ」
     手早く拭かれて、保湿クリームを塗られる。いい匂いがするけど、ちょっと冷たいし、くすぐったい。それからふわふわしたもので粉をはたかれた。
    「ベビーパウダーである。湯上がりの貴様を乾燥や肌荒れから守ってくれるのだ」
     ひっくり返されて背中や尻にもぱふぱふとされた。動けないないせいか肉倉が真剣な顔をしていたせいか、抵抗感はなかった。
     されるがままなのも気持ちイイっス。
     だって肉倉先輩は俺が嫌なことはしないから。
     ちゃんと俺の話を聞いてくれる。
     ふと、動きが止まった。沈黙が落ちる。
     ──肉倉先輩? どうしたんスか?
     両手で持ち上げられる。背中をじっと見つめられている気配があって。
     ちゅっ、と唇をつけられた。後頭部に。それから尻にも、一回。
    「……すまない!」
     混乱した。
     なんスか!? どうしたんスか、肉倉先輩。なんで。最初のはまだ分かるような気もするっスけど、お尻はなんでっスか。
     いやいやいや、何かの冗談かもしれない。その割には無言なのが怖い。なんか言ってください。
     今ならまだ冗談に──いや、できない。
     俺もこの人もふざけてこういうことをしないし、させない。
     知ってる。それくらいには肉倉先輩のそばにいて、俺は、肉倉先輩のことを。

    「……今日はよい天気である」
     ささやいて肉塊イナサを抱き上げた。
     乾いたタオルにくるまれて、ベランダに出る。
     日射しがまぶしい。
     風呂上りの身体に風が気持ちよくて、確かに晴天で暑すぎなくてさわやかないい天気だけど、俺は。
     俺は、肉倉先輩にキスされて。混乱しているけど嫌じゃない。だから嫌じゃないことを伝えたい。好きだ、と、ちゃんと、受け止めてもらえるように言いたい。
     そして聞きたい。肉倉先輩は、俺のことどう思ってるんスか。好きですか──。
    「貴様を元の姿に戻したら桃をいただこう」
     肉倉先輩の口調が平静でいつもと変わらなくて俺は焦ってくる。だって初めてだった。初めてこの人にキスされたのに。まだ頭の中ぐるぐるで、でもなんにも言えないし指一本動かせなくて振り返って先輩の表情を確かめることもできない。
     ズルいっス、ズルいっすよ、肉倉先輩。
     まだ唇をつけられたところがじんじん熱くて疼いてるのに。
    「──貴様は、桃の皮の剥き方は知っているか?」 
     剥き方って、包丁の下のところでちょっと切って爪立てて、薄い皮をするするって剥けばいいんじゃないスか? 大体そのまま丸かじりしてたっス。水気が多いから手首とか内肘までべとべとになってた。
     肉倉先輩はどんな食べ方をするんだろう。
    「まず冷水に沈める」
     なんでそんな怖いこと言うんスか!?
     必死に目だけで見上げたら真っ赤な顔で唇を引き結んでいて、心臓をつかまれた気がした。
     このまま元の姿に戻されたら、俺は。
     この人にスルリと剥かれて食べられてしまうのかもしれない。
     そうされたいのかもしれない。

     
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