慣れとプライド 186cmは決して小さくはない。むしろ男でも大きい方だと左馬刻は思っている。思っていた。この男に出会うまでは。
神宮寺寂雷。世界的名医である。紛争地帯を転々としていたという彼の名前は、顔を合わせるずっと前から左馬刻も知っていた。いや、国内であれば特に知らない方が珍しいぐらいだ。その容姿には特段興味もなかったが、大層な名前の嫌味なジジイだろうぐらいに思っていて、覆された。自分を越える長身にスラリと伸びた手足、端正な顔立ち。粗悪であっただろう戦地でどのように保ったのかと不思議な程に美しく手入れされた長い髪。涼やかな目元に似合う自分と対象的な色の瞳に、少し下がった眉尻は嫌味さの欠片も感じさせなかった。
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