化物 カランカラン。今日もまた、来店を意味するベルが鳴り響く。ドタドタと駆けるようにやってきた狼男は、息を切らしながら受付をする黒帽子の男に助けを求めてきた。
「たっ助けてくれ!こ、殺されそうなんだ!」
「…そう。暗殺で良いか?」
酷く冷静な黒帽子は、その焦る様子を前にしても、殺されるかもしれない、という男の言葉にも、一切の同様を示さなかった。つまらなさそうに紙にカリカリと記入していくその姿は、まるで機械すら思わせる。
「あ…暗殺?いや、もうなんでもいい!俺の追っ手さえ殺してくれればなんでもいい!」
その様子と返された言葉に狼男は困惑したものの、自分の命さえ助かればどうでも良い。命が惜しい男はとにかく頷いて、早く話を進めようとしていた。この店の利用方法など知らなかったのだが、噂では「なんでもしてくれる」のだという。藁にも縋る思いで、男はここに来たのだ。
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