ハグ(ワンライ)「すぐる」
そう言って倒れ込んできた悟のことを、傑はしっかりと抱き留め、そのまま彼の背に腕を回した。例えば悟が負傷して倒れてきただとか、体調が悪いだとか、なにかしらの問題があって傑に助けを求めて倒れてきたのであれば、こうも悠長にしていられないが、そうではないとわかっているので傑も特段慌てたりしない。そもそも、出鱈目な術式を持っている彼が負傷するようなことはほぼ有り得ないが。
自身と大差ない、広い背中を包むように腕を回し、やさしく撫でてやる。まるで赤子をあやすようにぽんぽんと優しいリズムを刻んでやれば、ほう、と悟は息を漏らした。
「うう……落ち着く……」
「それはよかった」
傑の体温を全身で享受しようと、覆い被さるように抱き締められる。細身に見えてそこそこ鍛えている悟にぎゅうぎゅうと抱き締められると苦しいくらいなのだが、その息苦しさが傑は嫌ではなかった。抱き締める傑の腕の強さも増して、お互いがお互いの体温に身を委ねる。瞼を伏せた傑も、このやさしい温かさを甘受していた。
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