君がくれたもの陽が昇る時間は日に日に短くなり、秋の終わりから冬への移ろいを感じさせる。連日の冷え込みを好機と見て、俺は絶賛片想い中の友人である夏油傑を食事に誘った。
「ラーメン食いに行かね?」と言えば二つ返事で乗ってくれて、今現在、カウンター席に二人並んでラーメンの完成を待つに至っている。
傑を誘ったのは飯を食うためだけじゃない。渡したいものがあるからだ。そのブツが手元にあることを確かめるため、ズボンのポケットに手を突っ込んで中をまさぐる。
ポケットを探った指先に当たる、冷たい金属の感触。落としていないと安堵したのも束の間、いよいよコレを隣に座る相手へ渡さなければならない緊張感が高まっていく。
どのタイミングで、どう声をかけて渡すのがベストなのか。脳内でシミュレーションを繰り返してみたが、逆に心音がバクバクと鳴り響いて正解へと辿り着けなくなっていた。
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