そこには愛なんてあるはずもなかった ㅤカタッと物音が微かに聞こえ意識が浮上する。
ああ、今帰ってきたのか。時間は、とベッド脇に置いていたスマホで時間を確認する。眩しい。
……4時半、まあ、今日は帰ってこられただけマシなのかと欠伸を一つ。
「変に目が覚めちゃったな……」
しかしリビングに出向く事は出来ない。何故なら、彼と鉢合わせてしまう可能性があるからだ。もう、半年程は顔を合わせていないなと覚醒しきっていない頭で考える。別に避けているわけではないが、会ったところで会話なんて続かない。向こうだって面倒だと思うだけだろう。
結婚して約1年。
最初から愛なんてものは存在していない。
「お前には明日、結婚をしてもらう」
あの日、父にそう言われ、“ああ、ついにこの時が来たのか“と特に感情が揺さぶられる事無くただその現実を受け入れた。
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