ずっと欲しかったもの「ん…?どこ?ここ?」
エッドは目覚めると、一つの窓と、ベットしかない牢屋のような暗い部屋にいた。
じゃらっ…
「え?足枷?」どうやらエッドは重りはついていないが鎖のみのすごく長い足枷がつけられていた。
「手は自由だけど、これ、外れるかな?」と右足に付いている足枷をカチャカチャといじり、外そうと試みる。しかし、外れない。
次に、せめてドアは開かないだろうかと先ほどのようにまたカチャカチャといじるも、開く様子はない。
「はぁ~…出れそうにないな。」諦めの声を漏らす。
「やることもないし、外でも見ようかな。」と窓に向かう。
どうやら朝のようで、きらきらと木漏れ日が暗い部屋の中にさす。外は雲一つない青空で、周りに何の建物もないが、堂々と立つ木や、風にあたってゆらゆらと揺れる草を見て、外に出たいなと思った。
ぼーっとそんなことを思いながら見ていると、突然ガチャッと音がした。その音が出たところを見ると
「トード?」
旧友のトードがいた。右腕がロボットの手になっていて、顔の右側も痛々しい。それでも相変わらず赤いパーカは似合う。
「トード!助けてくれ!出れなくて困っているんだ!」助けてくれるのではないかなんていう淡い期待を持っていた。が、そんな期待は打ち砕かれるかのように失われる一言をトードは放った。
「助ける?なんで助けなきゃいけないんだよ。それに、お前を監禁したのは俺だからな。そんなバカなことしねぇよ。」とエッドを嘲笑うかのように言う。
「じょ、冗談だろ?また前みたいに噓ついて俺を騙そうとしてるんだろ?」とエッドは恐怖と戸惑いの入り混じった声を出す。トードが少しずつ近づいてくる。そして、
「んなわけないだろ。」と冷たく言葉を吐く。
「やっとお前を手に入れることが出来たんだ!この気持ちに噓なんかいらないさ!」とトードは欲しかったおもちゃを買ってもらって、喜んでいる子供のように大きく手を広げ、目を輝かせて言った。
「お前はいろんな奴に好かれているもんな~?」と皮肉交じりに言う。
「でも、この先はずっと俺のものになるからな!」
エッドは恐怖のあまり呆然としていたが、逃げなきゃいけないと本能が察知したかのようにはっとする。そして、扉の方へと走ろうとする。けれど、それは叶わなかった。
「へ…?」
トードに手をつかまれていた。そして、トードはエッドの両手を片手でつかまえ、壁に押さえつける。
ドンっ
「いたっ…!」
頭への衝撃はなかったが、背中が痛む。その痛さに思わずしゃがみ込む。トードはもう片方の空いた手で、エッドの顎をつかみ、上を向かせて
「何逃げようとしてんだよ?」とドスのきいた低い声で言われる。エッドの体が強張る。
「え…あ…ちがっ…。」
「ま、いいや。どうせ逃げられないし。それに、俺だけしか考えられないようにしてやるよ。」とトードがにやりと笑った。
「どういうんぐぅっ⁈」
急にトードに口を塞がれる。
「んんっ…!むぅぅっ!」離せと言わんばかりに抵抗するも、それはむなしく終わる。
「んぇっ…⁈」
にゅるっ…と何か得体の知れないものがエッドの口の中に侵入する。それがトードの舌だと理解するのには、少し時間がかかった。
「んぁっ?!ふぅっ…やあぁっ…!」
じゅっぐちゅっにゅるっとトードの舌がエッドの口内で好き勝手に暴れまわる。ある時はエッドの舌を吸い、ある時は奥まで入れたりと、隅々まで堪能するかのようにキスをする。
エッドは、口の端から唾液をこぼす。力も抜けている。
(もう、やだ、きもちよくて、なにもかんがえれない)
エッドは抵抗もしなくなり、ただただ快感にびくびくと体を反応させて、喘ぐことしかできなくなっていた。
しばらくして、トードが満足したのか、口を離す。プツンと二人をつなぐ銀色の糸が切れる。
「ふはぁっ…はぁっ…はぁっ…。」
エッドが肩を震わせて、息をする。もうエッドは唾液と涙でぐしょぐしょだった。
「エッド。こっち向け。」とトードが指示する。
エッドはぽやぁっ…とするなかその指示に従い、トードを見るとぺろりと口の端に輝く唾液を舐められた。それにエッドはぴくんっと体を反応させた。そして、ようやっと両手が解放された。
けれど、エッドは逃げる気力はなかった。いや、正確に言えば、逃げるつもりがなかったのだろう。
「ん?エッド。逃げないのか?」と嬉しそうにトードが問う。
「うん…。もっと、トードが欲しい…。」と言い、トードの首に両手を巻き付け顔を近づけて、せがむかのように言う。もうエッドの目にはトードしか映っていない。
(さっきのエッドはどこに行ったんだか。ま、いいか。ようやっと俺しか考えられなくなったんだ。)と、トードは心の中で思った。
「ははっ。可愛いエッド。俺の可愛いエッド。」と愛おしそうにエッドの頬を両手で優しく包み、キスをする。
「ねぇ、トード。俺を、トードでいっぱいにしてくれる?」
「当たり前だろ。死んでも生まれ変わってもお前は俺のものだからな」と、トードは優しく微笑む。
「へへ、死んでもかぁ…。じゃあ俺も、トードのこと俺でいっぱいにする。」とにへら、とエッドは笑いながら言う。
「もちろんだ。」とトードは額をエッドの額に擦り合わせる。二人はお互い笑い合った。トードはこの愛は異常だとわかっていた。けれど、どちらも幸せであるならば構わない。と思った。
「ふふっ、俺がお前の寝てる間に洗脳させたとも知らずにな…。あいつからの本物の愛はもらえない。けれど、これでいいんだ。」
一人、部屋で嘆く赤いパーカーの男は暗闇の中、またにやりと笑った。