コーヒーにはスティックシュガーを「ココくんはイヌピーくんのどこが好きなんですか」
唐突な花垣からの質問に九井は、いささか驚かされた。東京卍會なんていうチームに属していても、しょせん中学生だ。恋バナもゴシップも大好きなのは理解している。千堂らを待つ間の時間つぶしにちょうどいい話題に違いない。理解はしているが、ふつうは本人を前にして聞かないのではないか。現に花垣は相棒の松野千冬に肩を叩かれている。
「おい、相棒。なに言ってんだよ」
「千冬が気になるって言ったんだろ」
「だからって本人に直接聞くかよ」
花垣と松野のやりとりは、本人たちは小声のつもりなのかもしれないが、どんどんとヒートアップしていき、ほとんど筒抜けだ。
わざとらしく、こほん、と咳払いをすると、花垣と松野は面白いくらい背筋を伸ばして押し黙った。なんか小動物っぽい。おもしろいな、こいつら、と思ったことは秘密だ。つけあがらせるのはあまりよくないが。
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