2月15日の攻防「ハァ────」
目の前に置かれた小さな赤い箱と睨めっこしながら、おれの口からこぼれ出たのは長い長い溜息だった。
今日はニ月十五日で、つまりバレンタインの翌日。そして手元のこの箱は、昨日渡すべき相手に渡されなかった悲しきチョコレートだ。
──いや、厳密には渦中の相手にはチョコを渡している。『ありがたく受け取ってよねェ』なんて言いながら、ショコラフェス用の手作りチョコをユニットメンバーと一緒に送り合ったし、ヒロくんも『ありがとう!藍良からチョコを貰えるなんてすごくうれしいよ!』と弾けんばかりの笑顔で受け取ってくれた。当然自分だって彼からちゃんとチョコを貰っている。そう、ユニットメンバーとしてのチョコレート交換はそこで終えてしまったのだ。そして、そんな出来事があったからこそ、もう一つ用意していたこの箱を渡す機会も──口実も、完全に失ってしまった。
2187