夕食後、江澄は客坊に留め置かれた。
藍曦臣がわざわざ足を運んでくれるという。
今までであれば寒室に招かれたはずだ。
江澄は己の腕をさすった。
机上に置かれた茶をすする。
寒々しく思うのは気のせいか。落ち着かない。
「お待たせして申し訳ない」
もう亥の刻になろうかという頃になって、ようやく藍曦臣は顔を見せた。
江澄は腕を組み、むっつりと黙り込む。
これは遠ざけられようとしているのか。
「ご用をおうかがいしましょう」
いつか聞いた言葉だ。
江澄はこめかみのあたりを殴られたような気分だった。
藍曦臣は穏やかな笑顔を顔面に張り付けて、あのときは感じられた切迫感もない。
たとえ自分が悪かったのだとしても、こんなふうに、他人のように、扱われるいわれはない。
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