反則「……………」
「……………」
超人気プリズムスタァ、高田馬場ジョージの楽屋にて、数時間前からこの状態が続いていた。お互い喋らない、沈黙の時間。正直気まずい。
スマショから目を離さないジョージにこちらが一生懸命話しかけても「ふーん」とか「あっそう」とか興味なさそうな、つまんなさそうな返事しか返ってこない。
ジョージが何をしたいのか何をしてほしいのか俺には分からない。テレビの収録を終えて、楽屋に入った途端、ソファに座らされ、無言で抱き寄せたかと思えば、そこからべったりくっついて離れないのだ。
いや、本当に訳が分からない。ジョージは何がしたいんだ…?なんかずっと無表情だし怒ってんのか拗ねてんのかそれすら分からない。ポーカーフェイス上手すぎるだろこいつ……。
「なぁジョージ…いい加減お前が何を考えてこうしてるのか教えて欲しいんだけど…」
何度目かの質問をする。永遠にこのままなのかと思っていたら頭上から盛大なため息が落ちて来た。
「お前さー。どんだけ鈍感なわけ?」
「はぁ!?なんだよそれ!鈍感も何も、お前が何も言わないと察することも出来ないんだよ!せめて何か言えよ!」
ため息を吐かれて、鈍感と言われて、何も話さずの無言の時間を過ごさせられたイライラがとうとう爆発した。
いつも嫌味っぽくてもちゃんと言ってくれるのに。
「ったくなんなんだよ…言いたいことがあるなら言えよ」
「…………チッ…」
あ、舌打ちされた。もうジョージなんて知らない。帰ろうかな。練習したいし。
肩に添えられてる手を退けようとした時、ようやくジョージの重い口が開いた。
「お前さ、今日一緒に出演したやつとスゲェ仲良しそ〜に話してただろ」
「え?あぁまぁ。一緒に仕事するんだし挨拶は大事だろ?」
「あいつ、お前に気があるって気付いてた?」
「はぁ?」
何を言い出すかと思えば、相手は男だしそんな感じ微塵も感じられなかったんだけど。
「気付いてねぇよな。だから鈍感だって言ってんの。もう少し危機感持てっつーの」
「で、でも好意を持たれるっていうのは悪いことじゃないし、危機感持てと言われても……」
ここまでひどく言われることはなかったけど、前から何回か似たような事でぐちぐち言われた事があった。
なんでジョージは俺が他の人と仲良くすると決まって危機感を持てだのうるさく言ってくるんだろ……あっ
「なぁ、ジョージ。ひょっとして……お前、嫉妬してるのか?」
「……は?」
「いや俺が他の人と仲良くしてるとさ、決まってぐちぐち言ってくるじゃん?だからもしかしてな〜って思ってたんだよ!それならそうと言ってくれよな!」
そうかそうかとジョージの肩をバンバン叩きながら言うとジョージは俯いて黙ってしまった。てっきり顔をタコみたいに真っ赤にして怒ってくるのかと思ったのに。
思ってたのと違う反応されて少し焦る。
「わ、悪い。強く叩きすぎた…?」
「…………だよ…」
「えっ…?」
ジョージはそのまますくっと立ち上がり、少し不機嫌そうな顔をしてこちらをまっすぐ見つめて来た。
「そうだよ。嫉妬してんだよ。俺のGSなら見て察しろよな」
そのまま背を向けて楽屋から出て行ってしまう。
ジョージの出て行った扉を暫く見つめていた俺は次第に顔が熱くなっていくのを感じ、ソファに横たわる。
「き、急に素直になるなよぉ…反則だろ……」
先程のジョージを思い出してはソファの上でバタバタと身悶えし、胸の高鳴りと顔の火照りが引くまで続いた。