その感情にタイトルをスリープモードから設定した時間に目を覚ます。
充電設備からボディを起こし、軽いストレッチをする。アンドロイドには必要ない行動だがストレッチをする事でボディの調子が良くなる気がするので今では朝の日課になっていた。
ストレッチを終え自室を後にして、流し台へと向かう。朝はコーヒーを飲むというのも日課の一つだ。お湯を沸かす為、電気ケトルに水を入れ、スイッチをつける。
インスタントコーヒーを支度している所で、扉が開く音が聞こえてきた。音の方へと移動すると、そこにはネクタイを締め、身支度を済ませたボーラさんが立っていた。
「おはようボーラさん」
「キオか」
声を掛けるとこちらに気付き、少し振り向く。
朝からちゃんと身なりを整えていて、流石はボーラさんと言いたい所だがこう見えて少しずぼらな所もあり、昨日だってロージーと一緒に夜遅くまで仕事をして、帰って来たかと思えばスーツを脱いで、ソファーにそのままかけておくもんだから、俺が洗濯をしてアイロンがけもしたし…。
そこまで考えてふと思う事があり、時計を確認すると、時刻は5時半を表示していた。
「昨日は夜遅くに帰ってきたのに起きるの早いね?今から仕事?」
「あぁ」
充電だって充分にできていないであろうに。こういう所もずぼらで少し心配になる。
「今お湯を沸かしている所だけどコーヒー飲む?」
「……いやいい。もう出る」
すぐに部屋を出ようとするので、そういえば昨日ロージーが言っていた事を思い出したので呼び止める。
「あっ、そうそう。スリープする前、ロージーが明日も仕事に着いて行くんだって張り切ってたけど起こそうか?」
ロージーが未だに起きてこない事からして、恐らくボーラさんがこんな早くに出掛ける事は予想外だったのだろう。
ボーラさんは少しの沈黙の後、すぐ口を開いた。
「必要ない。まだ寝かしておけ」
「へぇ〜…」
「……何か言いたそうだな」
「んー?いや、ボーラさんってロージーには甘いなーって」
途端、眉間にシワが寄り、睨み付けてきた。不機嫌ですと顔に書かれているのが見える。
「何を勘違いしているのか知らんが、1人でも充分な依頼内容だから必要ないと言ったんだ」
そう言って事務所を出て行ってしまった。
最近のボーラさん、ロージーを邪険に扱わなくなったし、なんなら雰囲気も柔らかくなったし、そしてなにより、ロージーが絡むといつもより表情がわかりやすい。
(自分では、気付いてないんだろうなぁ)
果たして、気付くのはいつなのだろうか。そしてその感情になんて名前が付くのだろうか。楽しみに思いながら、ふとある事に気付く。
「あれ?これ起こさなかった事、俺が怒られるんじゃ…?」
案の定、起きてきたロージーになんで起こさなかったんだと怒られてしまった。