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    10/14のwebオンリーで出すイバグン本のサンプルです!
    ざっくり全体的にこんな感じで進みますよというあらすじを波線グラフにしたものも後ほど載せますのでネタバレ見ておきたい方はそちらも併せてご覧下さい!
     →https://poipiku.com/502587/10687236.html

    #イバグン

    イバグン小説「あなただけに尽くします」サンプルプロローグ

     ぼくの名前はグンマ。ガンマ団という世界有数の暗殺軍団に所属している。父親はぼくが生まれる前に亡くなっていて、母親もいない。ぼくはこの十七年間、ずっと血の繋がりのない人に育ててもらっていた。彼の名前は高松という。
     高松はぼくの父親に見込まれて日本の香川県からこのガンマ団本部に移ってきて籍を置いている。彼は父の側近のような振る舞いをしていたため、そのままぼくの世話係になったようだ。
     突拍子もないが、ぼくは彼が好きだ。恋愛的な意味で。
     そもそもガンマ団内では出会う人間が限られているし、ぼくの父親は現総帥マジックの弟である。つまりぼくはガンマ団のトップに限りなく近い存在だ。もともと限られているのに更に出会う人間は限られる。生まれてから今まで基本的に身内にしか会っていない。
     そんな中で高松は唯一、よく会う身内でない人間だった。ぼくにとってはたった一人の家族だけど、肉親じゃない。そんな人を好きになるなと言われる方が無理な話だと思う。
     高松は育てられたぼくから見ても過保護すぎると思う。ずっとぼくのそばにいて、ぼくが泣けばすぐ親身になって話を聞いてくれる。ぼくが「高松」と名前を呼べばすぐにでも駆けつけてくれる。そうしてぼくに解決できない問題は全部高松が解決してくれる。過保護すぎると思うけど、その代わり高松から愛を感じない日はなかった。
     ぼくは高松のそういうところが好きだ。

     ガンマ団所属と言ってもまだぼくはなんの技術も身につけられていない。まぁガンマ団所属という肩書きは生まれた時からもっているのでまだ仕方ないとも言うべきか。ということで、これから先ガンマ団の一員として活躍出来るように十四歳になる年からぼくは日本にあるガンマ団士官学校に入ることになった。それまでは高松とマンツーマンで科学に特化した学習を受けてきた。これから先も高松は二人だけでいいと言ったが、叔父のマジック総帥が人との交流を深めた方が良いとのことでこうなった。マジック総帥の息子で、ぼくと同い歳のイトコのシンタローも同じタイミングで士官学校に入るからというのもあるだろう。
     士官学校は科が二つにわかれていて、イトコのシンちゃんは普通科、ぼくは開発科と別々の科に入ることになった。普通科と言っても暗殺に特化したプログラムとなっているのでよくある日本の学校の普通科とはかけ離れたものになっている。開発科はその名の通り理系の開発に特化したプログラムで、士官学校を出たあとはそのまま開発課に入ることを想定されたものとなっている。とはいえ開発課も遠征に出ることがあるため、ある程度の運動能力も求められており、体を動かすプログラムが多く用意されている。
     士官学校に入って三年半、ぼくは特になんの変哲もなく過ごしていた。シンちゃんは別の科だからあまり学校内でも会わないし、同級生からもぼくは現総帥マジックの甥として若干距離を置かれていた。浮いているわけじゃないけど、あまりみんな話しかけては来なかった。
     もうひとつぼくが距離を置かれている理由があって、それは青の一族であったからだ。青の一族とは、ぼくらの家系で先祖代々受け継がれている特異体質のようなものだ。ぼくら青の一族は絶対に金髪碧眼で生まれ、片目は秘石眼と呼ばれる強大な力を秘めた目である。感情的になると自身でもコントロールするのが難しく、周りを巻き込んでしまう恐れがあるという。ぼくはあんまりそういう経験もなくて、どちらが秘石眼なのか自分でも分からないぐらいなのだが、それを知らない周りから恐れられるのも無理はないだろうなと思う。
     特に現総帥マジック叔父貴は、通常片目しかないはずの秘石眼を両目に宿している。その分より強固な力で、コントロールするのも難しい。秘石眼を知る者は今まで以上にその力を恐れた。おじ様はコントロールが上手くてなんとかなっているけど。
     反対に、おじ様の息子であるぼくのイトコのシンちゃんは黒髪黒目で生まれ、秘石眼を持っていない。シンちゃんは強いし総帥の息子だから同級生からもちょっと距離を置かれていたけど、やっぱり秘石眼の恐ろしさはないみたいでなんだかんだ言ってみんなから慕われてる。シンちゃんの根が甘えん坊なのもあるのかも。

     まぁそんなこんなで今士官学校でやってる範囲なんてもうとっくの昔にやったことだけど、毎日暇だからなんとなく勉強しててずっと首席でいる。退屈だな〜なんて思いながら学校に通っていたら二年の後期になっていた。
     高松に恋をしていること以外、今まで楽しくもなければつらいわけでもない日々をなんとなく過ごしていたぼくの人生は、彼と出会って大きく変わったんだ。


    第一章

     開発科には一年生と二年生が合同に行う実習の授業がある。一年生と二年生各二人ずつの四人班となってロボットの設計から実際に組み立てて完成させる授業だ。班は成績順で組まれるため出来は班によって結構差があったりする。
     後期毎週水曜の三、四限を使って行われるこの授業はだいぶ大掛かりなものである。班員同士の相性も求められるので編成が不安だ。ぼくと同じ班になる同級生は普通に話せるぐらいだから大丈夫かなとは思うけど。
     とにかくぼくは今回の実習を一年生も楽しめるものにしたい。というのも、ぼくが一年生の時もこの実習をやったがあまり楽しいとは言えないものだった。自分が一年生なこともあってあんまり好きに設計できなかったからちょっと嫌な実習だったなという思い出。こんな思いを後輩にはしてほしくないから、今度こそぼくは先輩として後輩の意見も取り込んで一緒に作りたいと思う。楽しい実習になるかどうかは自分次第だよね、と言い聞かせて参加した。

     授業が始まり、先生から説明を受けて早速班行動の時間となった。
    「はじめまして、二年のグンマです。よろしく」
     ぼくの挨拶を筆頭に班のみんなが挨拶をしはじめた。ぼくの同級生も後輩のうちの一人も明るく自己紹介をしていたが、もう一人の後輩がえらく緊張しているようだった。
    「一年生のイバラキと申します。よ、よろしくお願いします…!」
     イバラキと名乗った一年生はその名の通り北関東特有の訛りを残したまま顔を引き攣らせて挨拶した。この班にいるということは一年生の中でも一、二を争うほどの成績の良さであるだろうに、どうしてこんなに緊張しているのだろうとちょっと不思議に思った。
     が、すぐに緊張している理由がわかった。どうやらぼくの同級生ともう一人の後輩はもともと仲が良いらしい。ずっと二人で楽しそうに話している。なるほど、彼はこの二人が仲良いのを知ってて、必然的にあまり面識のないぼくと話さなきゃいけないから緊張していたのか。面識がないだけならまだしも、ぼくはそれなりに名の知れた人間だし緊張するのも無理はないよね。ぼくから話しかけてあげなきゃだね。
    「イバラキくん緊張してるね、大丈夫?」
    「あっはい!大丈夫です!すみません!」
     急に話しかけられた彼は肩をビクッと揺らしながら答えた。別に謝らなくてもいいけど、と言ったらビビらせちゃいそうだなと思ってその言葉を飲み込む。
     そんな中ずっと話していた二人は突然ある提案をしてきた。
    「実はもう作ってきたんだよね設計図!どう?」
     えっなんでそんな勝手なことするの…?と出かかった言葉をグッと堪えて差し出された設計図を見る。細部まで書き込まれた設計図には二人分の筆跡があった。二人で話し合って書いたんだろうなぁ。
     別に二人が仲良い分には構わないしぼくは全然どうでもいいけど、イバラキくんはどうなるの?
     イバラキくんをちらっと見ると明らかに顔が緊張とは違う引き攣り方をしている。でも彼はすぐに笑顔になって「いいと思います!」と言葉を紡いだ。
     それが嘘だと分かってたけど、彼自身がそう答えているのでぼくも笑っておいた。イバラキくん、明らかに不満ありますって顔してたじゃん。
    「うん、いいと思うよー」
    「よし!じゃあ早速俺たちはこっちのパーツ作るから、そっちはこのパーツよろしく!」
     同級生はそう言いながら早速仲の良い後輩と別教室に行って作業をはじめた。置いていかれたぼくたちはポカーンとしながら彼らの背中を見送った。
    「えーありえなーい…」
     口からポロッと出てしまったぼくの独り言を聞いてイバラキくんは苦笑した。その表情を見てやっぱり不満があるんだなと思い、先程思ったことをそのまま口にしてみた。
    「納得いかないなら言えばよかったのに」
     イバラキくんは一瞬ドキッとしながらぼくの顔を見た。ぼくの飾らない言葉で怖がらせてしまったかと思ったが彼は苦笑いしながら答えた。
    「いや〜…言える状況じゃなかったので…」
    「まぁそうだよね」
     素直に納得いかなかったということを口に出した彼に少し驚く。おもしろい子だなこの子。半年間彼と実習をするわけだし、仲良くなりたいな。
    「改めて、二年首席のグンマです。よろしく」
    「こ、こちらこそよろしくお願いします!」
     ぼくが手を差し出すと彼は手を服で拭ってから会釈をして握手した。
    「イバラキくんも首席?」
    「えっと、はい、一応…」
     照れながら答える彼の笑顔は年相応で、かわいらしかった。

     一週間後の水曜日、また合同実習の日がやってきた。今日も先週と同じように二グループに分かれて別教室で作業を行なっていた。設計図を見ながらひとつひとつ部品を組み立てていく。この作業は集中できてなかなかに楽しい。…はずなんだけど。
     今日のぼくはあまり集中できていなかった。というのも、設計図で指示されている部品や技法に納得がいかないのだ。
     ふー…とため息をつくとイバラキくんは作業の手を止めてこちらを見た。
    「大丈夫(だいじ)ですか?何か飲み物買ってきますか?」
    「ん、大丈夫大丈夫。ちょっと休憩しようかな〜って思っただけだよ」
     彼は分かりましたと言って作業を再開する。ぼくはひと息ついて彼の手元をぼーっと眺めていた。
     きっと彼は相当機械に触れている。一年や二年そこらの手際の良さじゃない。それに彼の機械への触れ方には愛があった。きっとずっと彼は機械を好きで触れてきていたんだろう。彼の手付きはそれを物語っていた。
     そんな彼ならぼくのモヤモヤを少し取り除いてくれるのではないか、と思いぼくはイバラキくんに思っていることを打ち明けてみた。
    「ねぇイバラキくん」
    「はい」
     一週間前のような緊張の様子はもうみられず、手招きすると彼は作業の手を止めてぼくの近くに座った。
    「この部品さ、もっといいやつあるのになぁ…って思わない?」
     設計図と部品を見比べながらイバラキは困惑の表情を浮かべていた。
    「…言っていいんですか?」
     この言葉で確信した。彼はぼくの気持ちをわかってくれる。
    「いいよーこの設計図作ったのぼくじゃないし」
     ぼくがそう言うと彼は少し悩んでからこの設計図に対しての感想を述べ始めた。
    「俺も…あっ私も、この部品はアレの方が良いと思ってて…そうしたらあの技法が使えるので強度も増しますし動きももっとなめらかになるんじゃないかなって思います」
    「え、やっぱそう思うよね!」
     ぼくも絶対こっちの方がいいと思うんだ!と言うと彼もテンションが上がったようで嬉しそうに頷いた。
    「そもそも全体的に精密さに欠けるというか…や、悪くは無いんだけどなんか物足りないなって思うわけよ」
     イバラキくんはうんうんと頷きながらぼくの話を聞いている。
    「せっかくならさ、もっとこう…」
     ぼくが胸ポケットからボールペンを取り出すと彼は察したように白紙の模造紙を持ってきた。
    「こういう…ここも強度あるしここも細かい動作ができるっていうさ、こういうロボット作りたくない?」
    「あーいいですね!こりゃすげーっぺ…!」
     感嘆の声をあげて彼はぼくの書いた設計図に見入っている。それが嬉しくってさらに構想を練って模造紙に書き留めた。
    「それでここはこうでそこはああして…」
    「なるほど…あっでも、もしかしたらここはこっちの部品を使った方が…」
    「あっうんうん!それ使ってここをこうしてってことだ!」
    「そうですそうです!」
    「えっイバラキくん君すごいね!」
    「そんな…恐縮です」
     彼は謙遜しながらも嬉しそうにニッコリと笑った。
     こんなに話の合う人と初めて出会ったかもしれない。小さな頃にシンちゃんと最強のロボットを一緒に考えたことがあるが、その時の楽しいと思った感覚と似ている。幼かった頃の感覚を思い出せて純粋に嬉しかった。
     素直に疑問点があれば言う、全部説明しなくともぼくの言いたいことをわかってくれる。こんなに話しやすい人がこの学校にいるなんて!
    「ねぇこれさぁ…作れたらすごいと思わない?」
    「もちろんです!考えただけでもワクワクします!」
    「放課後さ、作業してみよっか?」
    「えっいいんですか!?」
     ぼくが提案するとイバラキくんは目をキラキラさせながらこちらを見た。
    「でもグンマさんは放課後もいろいろと忙しいんじゃ…」
    「や?ぼく放課後なんて常に暇だよ」
    「じゃあお言葉に甘えて…!」
     彼が嬉しそうにしていることがぼくにとっても嬉しかった。彼の素直そうな性格から考えると本当に喜んでいるのだろう。
     内蔵部分はどうしようか、という話をしようとしたところで授業の終わりを告げるチャイムが鳴る。そういえば今授業中だった!
    「わ、しまった!作業何にも進んでない!…まいっか」
    「えっ大丈夫なんですか」
    「平気平気~なんとかなるよ」
     ぼく手際良いしね。というとイバラキくんは流石です!と返した。尊敬してくれてるんだな〜と感じながらぼくらは作業途中だった部品を片付けた。二人で一緒に考えた設計図だけを持って教室を出る。
    「じゃあ今日の放課後は五階の空き教室に」
    「承知しました!」
     約束を取り付けてぼくらはそれぞれ別の教室へ向かって歩き出した。きっと彼と一緒に一からロボットを作ったら楽しいだろうな!と期待を胸に込めながら。
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    ◇ 今回のレギュレーション
    1.文字数
    5000文字

    2.言わせる言葉
    「怖くなんてない」

    3.登場させる小物
    懐中電灯🔦

    4.仕草、行動
    驚いて尻餅をつく
    コール、コール、コール 電話が鳴る

     ウルフウッドの暮らしに影がさす時、それは必ず訪れる。



     ウルフウッドがひとりの時を見計らうように電話が鳴る。
     聞きなれたコール音がたわんだように、多方向から強烈な圧力をかけ無理やり歪ませたように聞こえたらそれが合図だ。
     鳴り響く歪なコール音は今すぐ逃げ出したいような、逆に音の元に走りたくなるような焦燥感をウルフウッドに与えた。
     始めは無視しようと頑張るのだが、どうにも我慢できなくて受話器を取る。
     そんなことの繰り返しだ。
     この電話について誰かに話したことがない。話したかった相手とは電話を取った後、必ず会えなくなるためだ。
     

     ウルフウッドはしがないサラリーマンだ。主に大きな工場や病院向けの薬品を取り扱っている、いわゆるBtoBの企業である。それなりのシェアを占めているため業界の人であれば社名を知っている人も多いだろう。それ以外にも、これは社にとってみれば大変不本意なことであろうがブラック企業ということでも有名であった。
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