現在の山本冬樹の生活は基本的に、暇とそれに伴うストレスとの戦いがおよそ八割を占めている。
暇は良くない。暇があると考え事をしてしまう。考え事自体駄目だとは思っていないが、上手くいかない就職活動やら自分のかつての過ちにまつわることを考えていると思考は当然自分の存在意義に向かい、自分が生きる理由に向かい、そも生命が存在する意味に向かい、じゃあ自分死んでも別に良くないか、というゴールに帰結してしまうのだ。
とはいえ山本は自分を諦めていない。社会に存在意義のない自分をプライドの高さが許さない。自分を取り巻く世界に負けたくない。そういう自己矛盾は基本的に大いなる苦しみしか齎してくれない。こうなってくると、酒やら薬やらに頼る人の気持ちがよく分かる。薬による酩酊は幸い未経験だとはいえ、酒に酔っ払って時間が早回しになる感覚は何となく経験したことのあるものだから。
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