習作 スティックを握ってしまえばそれだけで全て忘れるこの手が憎い
苦しくてただ苦しくて手を取ったあの後悔を繰り返すまじ
死にたくないとは初めて言ったただあの音が恋しくて
たった100°Cで肉は焦げないそれでも傷は痛むもの
酸素があるなど知りたくなかった足には碇がついている
君がいるなら海底二万里遠いなどとは思わない
飲み干しきれない悲しみすべて潮は涙の味がする
かっぽりとまぬけな音を立てた卵がこちらを見て言う「まぬけな顔だ」
古びたラジカセ壊れたアンプ「再生」ボタンはどこへやら
藁と知りつつすがり狂ったものに命を燃している
肺を焼く重たいタールだけが、潮の匂いをかき消してくれた。