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    暗黒蒟蒻葡萄

    @DarknessGrape

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    暗黒蒟蒻葡萄

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    59分でかきました(中途半端)
    悪魔やそういう類の存在をぶっ○すのが存在意義みたいな自身と周囲の優しさや外の世界の常識に苦しむ兵祇致致ちゃんです

    聖者は井と檻の中2mをゆうに越す巨体が駆け足で空き教室に入ってきたかと思えば、その巨体は急いでドアを閉めた。……その男、下焔谷啞那兵祇致致は力なく、それに背を預けながらその場にへたり込む。
    (…………)
    何か恐ろしいものを見るような顔をしながら、下焔谷は自身の右手首に視線を移す。しばらくするとそれを掴み、戒めるように、苦しみを内に閉じ込めようとするかのように、力いっぱい握り締める。
    先程、下焔谷はとある上級生に絡まれ、相手の胸ぐらを掴み、『力いっぱい殴りかかろう』としてしまった。事もあろうか、いつも理性的で常識のあり、相手と自身の力量を見誤らない下焔谷が、だ。
    隣にいた宝剣や賽投のお陰で大事にはならなかったが、……その場の空気や自身に向けられる目、自責の念に耐えきれず、つい走り出してしまった。
    下焔谷はしゃがみ込みながらも、鳴り出した耳鳴りと頭痛に耐えるように頭に手を当てる。冷や汗が止まらないのか、頭に巻いている包帯も水を被ったかのようにぐっちょりと濡れていた。

    下焔谷は、悪魔や怪異の類いの半人前を苦手としている。その絡んできた上級生も、悪魔の半人前であった。
    なぜ悪魔が苦手なのかと言うと……側にいると「破壊」してしまいたくなるからだ。
    『悪はこの世に存在してはならない。塵の一つすら残さず、そこにあったという証すら破壊し尽くせ。』
    『破壊の聖者は、全ての悪を滅ぼし、全ての善を在るべきところへと還す。』
    ある村を支配している、過激な宗教の経典内に記されている一存在、それに命が与えられた結果、下焔谷啞那兵祇致致は過激なまでの強い『浄化』への欲望を、破壊衝動を胸に抱えたまま生まれ落ちてしまった。
    (……何故だ……何故俺は、こんなにも愚かなのだ?)
    下焔谷はこの広い外の世界に来るまでは、こんなに苦しい思いをした事はなかった。
    悪しき者は破壊する。それは下焔谷がいた村では当たり前の善行で、自身の存在する意義であると思っていた。破壊された悪を、命だったものを見て周囲は勇ましいと歓喜の声を上げ、下焔谷を褒め称える。
    しかし、一歩外の世界に出てみれば、そんなちっぽけな一村の常識は音を立てて崩れていった。村の中では勇ましい聖者だった物も、外の世界ではただの殺人鬼、ただの処刑器具にしかすぎない。
    悪魔でも、天使でも、誰でも死ぬことはなく、誰も生きる事を否定されず、肯定もされず、平等に生きられる世界。これが自分達以外の人間が思う理想郷というものなのだろう。
    これでは、ここにいては、自身が。……破壊する聖者である自分自身が、悪そのもののようではないか、と。
    それを感じるたび、下焔谷は怖くなった。胸が、拳が痛んだ。身体が沸騰して、張り裂けて、痛みのあまり消えてしまいそうだった。
    ここは、自分が居られる場所ではない、居ていい所ではない。
    ここでは、普遍的でない正しさの元、その拳を……罪のない者達の血で濡らした物が、存在できる場所ではない。そのことに気がついた途端、もう、まともではいられなかった。
    下焔谷は、色んな半人前の生徒や教職員の笑顔を見るたび思うのだ。
    自身はどうしようもない破壊者なのだと。ここと相容れぬ部外者なのだと。
    (俺は、俺でなくなってしまいたい)
    (外の世界がこんなに苦しいのなら、こんなに脆い幸せなのなら)
    (いっそのこと、掴み取る前に全部壊してしまえばよかった)
    下焔谷は頭を抱える。情けなさが胸から込み上げて、それが涙となって瞳から溢れ出る。故郷に帰りたいと思うし、もうここで全て閉じてしまいたいとも思ってしまう。下焔谷はただ泣くことしか出来なかった。

    「へぎちー氏〜?どこ行ったんでござるかァ〜?」
    「下焔谷先輩、先生が呼んでるのに。どこに隠れているんだろう」
    下焔谷ははっとする。友が呼んでいるのだ。悪魔でも怪異でもない、ただの友が。
    押し殺した泣き声を飲み込んで、下焔谷は立ち上がる。……村の血統の濃さを薄めるために、外から人間を村に呼ぶために村の外に出てきたのだ。……しっかりしなければならない。覚悟を決めて教室の扉を開ける。するとそこにはちょうど、驚いた顔をした賽投と宝剣がいた。
    「……あぁ、すまない。ここにいる」
    「おァ〜、こんな所にいた!よかったよかった。へぎちー氏のクラス担任が呼んでましたぞ」
    「そうか、……行ってくる。」
    「気をつけてね、下焔谷先輩」
    「あぁ」
    下焔谷が無理をして笑うと、宝剣と賽投は心配なのか微妙そうな顔をする。
    それを察して胸を痛めながらも、下焔谷は一人、後ろ暗い何かから逃れるように、担任の元へと駆けて行ったのだった。
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