11月11日①【こたりゅ】 ポキ……ポキ……と小さな音が、テレビから流れる音の合間に聞こえる。
かけっぱなしのチャンネルでは、今日起きた出来事をアナウンサーが淡々と伝えている。
「おい、んなもん食ったら、夕飯食えなくなるだろ!」
キッチンから聞こえる声に、音の主は視線を向けるも、すぐにテレビに視線を戻し、同じ音を立てる。
「おい、こた!聞こえてんだろ、返事ぐらいしろ!」
呼ばれた青年は、座っているソファからひらりと手を振った。その手をもう片方の手に持っている箱に伸ばし、そこから1本、チョコレート菓子を引き抜き、先ほどと同じように口へと運ぶ。
(俺も単純すぎるだろ……)
そう、胸の中で自分自身に呆れつつ、「こた」と呼ばれた青年、吉村虎太郎は咥えたそれをポキッと2つに折った。
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