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    ciruela4469

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    ciruela4469

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    うちよそ吸血鬼の現パロ+違う時空のお話でバーテン→社長のお話。
    バーテンが女々しいうえに、情緒がジェットコースター。
    尚、英語とスペイン語は翻訳アプリ使用なので、スルーしてください。

    【お題元】
    診断メーカー「こんなお話いかがですか」
    〈バーテンのお話は「誰かに会いたいと思うなんていつぶりだろうか」で始まり「何か言いたかったけれど、言葉がうまく出なかった」で終わります。〉

    Erante 誰かに会いたいと思うなんていつぶりだろうか。
     らしくない、そう感じつつ、抱えた感情に思わず小さく笑いが漏れた。

    ――――――――――――――――――――――

     いつものように店を開けると、いつもの客が顔を出す。
     いつものカウンター席で、最初はいつもの酒。それともその日の気分か。
     いつものように始まり、淡々と時間は過ぎていく。

     しばらくすれば、少ないながらも客足が増える。
     常連もいれば、たまに顔を見せる客、そんな彼らは連れ立ってやってくる時もある。
     一見客が訪れる日もあるが、繁華街から少し距離のある、なんの特徴もないバーには珍しい。
     そんな店と外の世界を隔てる年季の入ったドアから聞こえる小さなベルの音に、いつものように視線を向ける。

     いつものことなのに、なぜか今日は少し期待をしてしまう。

     そこに、思い描いた人物が居るわけでもないのに。

     貼り付けたような笑顔を浮かべ、やってきた客を席へと促し、他愛のない会話を交わす。
     その会話も相手から話しかけられなければ、短い相槌と共に消える。声をかけられればそれに応じ、そうでなければ、カウンターの内側で仕事をこなす。
     小さく狭い店内に流れるスタンダードジャスと囁くように聞こえる会話。話を振られた際に困らない程度にそれに耳を傾けながら、洗い置いたグラスを拭き上げる。

     いつもの仕事、光景、時間。

     最後の客を見送り、いつもと変わらぬ時間に店を閉める。「Open」と書かれ、ドアにかけられていたプレートを裏返し、「Closed」の文字へと変える。
     しん…と静まりかえり、自分の発する音しか聞こえない廊下の向こう。ふとこの階へと続く階段を見やる。

     何か期待して、待っている。

     やれやれと自分自身を笑いつつ、チカ…チカ…と揺らめくように灯る蛍光灯を見上げ、一つ息を吐く。
     店内へと戻り、電動ロックを掛け、簡単に店内を掃除する。カウンターの内側へと戻れば、置いてあるスマホを開く。どうせ何もない、と分かってはいても、画面に表示される通知に少しの期待をしてしまう。
     いつもと変わらぬ一日。特に何をするでもなく淡々と繰り返す毎日の中の僅かな期待に、何をしているんだか…と、自分自身に呆れてしまう。
     長い髪をまとめていた緩い三つ編みを解き、それを団子状にすると、カウンター下の冷蔵庫を開ける。ビールの瓶を取り出し、飲み慣れたそれを煽るようにして喉を潤す。
     スマホに表示された通知に、欲しかったものがないのはわかっていたし、ない理由はもわかっている。理解しているのに、どこか残念に思ってしまうのは、私自身がどこか浮かれているからなんだろう。
     恋を始めたばかりのティーンでもあるまいに、そう思うものの、今の自分はそれに近い。ただただ呆れ果て、思わず笑いが漏れる。

    「逢いたい」

     と言ってしまえば、簡単なのだと思う。
     しかし、それを言えないのは、年を重ねたことで生まれた面倒くさいプライドと、こんな想いを抱くことが少なかった長い人生のせいだろう。とは言い訳か。
     正直、苦手なのだ。薄っぺらい関係の薄っぺらい言葉ならいくらでも吐ける。だが、今回に限ってはそうではない。だから、こうも呆れ果てる。
     スマホをどれだけいじっていたのか、すっかり汗をかいた瓶に、温くなり始めたビールを飲む。独特の苦味と香り、じんわりとアルコールが体に染み渡る。
     
     最後に連絡をしたのはいつだったか。最後に連絡が来たのはいつだったか。
     忙しい相手のこと。開店休業にも近いバーで働くバーテンとは抱えているものが違う。下手に連絡をして、困らせたくもない。
     いや、単に、年下の相手に「逢いたい」などと甘えたことを言いたくないだけではないか。余裕のない自分を見せたくないだけではないか。簡単な一言すら伝えられず、無機質な文字と短い文章にそれ以外の言葉であれば、いくらでも綴ることができるのに。
     顔を合わせ、あの美しいゴールドの瞳を見つめれば、言葉が溢れるのに。その瞳がないだけで、こうも言葉にするのも、感情を出すこともできず怖くなる。

    ¿Por qué estas cosas tan sencillas son tan difíciles

     天を仰ぐ。簡単だ、本当に簡単なことなのだ。
     手に持ったスマホのディスプレイを冷たい指先でなぞる。表示される名前、それがプライベート用のものであるのを確認し、連絡用のアプリを開く。

    『Soy tuyo y sólo tuyo, recuerda.』

     スマホのガラス面を叩く指の音がした後、少しの間を置いて、メッセージの送信を知らせる電子音がする。気づかなければいい、見なければいい。なんなら、他の通知に埋れてしまえばいい。送ってしまえば、そんな都合のいい話なんてあるわけがない、と冷たさが欠片も残っていないビールを飲み干す。このアルコールが、早く回ってしまえばいい。そうすれば、言い訳になるかもしれない。いや、それに弱くはないことを知っているから無理か。
     そうこうしているうち、スマホからメッセージ受信の音とともに名前が表示される。ものの数分で返ってきたメッセージの通知に、トトッとスマホを指で叩く。

    『What's the matter I told you, I don't understand difficult Spanish.』

     わかってるから、送った。ただ、世の中は便利であるし、聡明な彼のことだ、すぐに言葉を理解してしまうだろう。なのに敢えてそう返ってくる。

    『Te necesito más a ti.』

     「くだらないことを送ってくるな」と呆れてはくれないだろうか。カウンター内で飲んだビールの瓶やグラス、ビールサーバーなどを洗い、自分の情けなさに何度目かの息を吐く。
     なんでこんなことになったのか。珍しく顔を出した客が、近況として話してくれた惚気を聞いたからか?そんなことで寂しさを覚えるような人間だっただろうか。
     洗い物を進めていれば、着信音に設定している古い電話のベルの音が響いたような気がした。濡れた手のままスマホを取り上げ、そこにある名前に少し驚きながら、電話に出る。

    「Buenas noches…こんな時間まで起きていて、大丈夫ですか?」

     肩と頬に挟むようにスマホを固定すれば、タオルで手を拭う。

    『…私を幾つだと思ってるんだ、お前は。それに、メッセージを送ってきたのはそっちだろう?』

     呆れたように耳に響く聴き慣れて、焦がれた声に自然と表情が緩むのがわかる。その声を聞き漏らすまいとスマホを持ち直す。

    「そうでした…失礼しました」

    『どうした?何かあったか?』
     
    「いえ、別に…。何もありませんよ…」

     あんなメッセージを送っておいて、何を言っているのだろう。それ以上何も言う気がないことを察してくれたのか、向こう側で小さな溜息が聞こえる。

    『……今、店か?』

    「ええ…片付けをして、部屋へ上ろうかと思っていたところです」

     言いながら、思わず視線を上へと向ける。店のすぐ上、外階段で続く場所に自宅がある。何度か訪れたことのある相手は『そうか…』と小さく返して、黙り込む。

    『…Be a good boy there for a while.』

     どうしたのだろうと耳を傾けていれば、聞こえた言葉に驚き、思わずスマホの画面を見つめ、聞き返す。

    「……はい?」

    『……You're not the only one who wants to see you. So be a good boy there.』

     少し抑え気味にぼそぼそと話す声は、どこか不貞腐れたようにも感じる。その声には聞き覚えがある。
     もちろん、その声で話すときの彼の様子も。
     だからこそ。
     何かを言いたかったけれど、言葉がうまく出なかった。
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    ciruela4469

    DONEうちよそ吸血鬼の現パロ+違う時空のお話でバーテン→社長のお話。
    バーテンが女々しいうえに、情緒がジェットコースター。
    尚、英語とスペイン語は翻訳アプリ使用なので、スルーしてください。

    【お題元】
    診断メーカー「こんなお話いかがですか」
    〈バーテンのお話は「誰かに会いたいと思うなんていつぶりだろうか」で始まり「何か言いたかったけれど、言葉がうまく出なかった」で終わります。〉
    Erante 誰かに会いたいと思うなんていつぶりだろうか。
     らしくない、そう感じつつ、抱えた感情に思わず小さく笑いが漏れた。

    ――――――――――――――――――――――

     いつものように店を開けると、いつもの客が顔を出す。
     いつものカウンター席で、最初はいつもの酒。それともその日の気分か。
     いつものように始まり、淡々と時間は過ぎていく。

     しばらくすれば、少ないながらも客足が増える。
     常連もいれば、たまに顔を見せる客、そんな彼らは連れ立ってやってくる時もある。
     一見客が訪れる日もあるが、繁華街から少し距離のある、なんの特徴もないバーには珍しい。
     そんな店と外の世界を隔てる年季の入ったドアから聞こえる小さなベルの音に、いつものように視線を向ける。
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