Recent Search
    Create an account to bookmark works.
    Sign Up, Sign In

    __saku___23

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 2

    __saku___23

    ☆quiet follow

    1年前に書いた駄作をここに。
    素人が書いた小説モドキです。

    #素人
    amateur
    #創作
    creation
    #オリキャラ
    original characters
    #小説
    novel
    #物語
    story
    #駄作
    sendagi

    エゴ5歳
    僕は5歳から前の記憶がない。
    そして僕の血が繋がった親も居ない。
    だから孤児院に入れられたんだ。

    シスター「今日は新しいお友達が来ました!みんな仲良くしてあげてね」
    A「おはよう!アイオくん!これからよろしくね!」
    アイオ「うん。」

    数日後
    B「アイオくんって全然笑わないし話しづらいよね。」
    C「だよね。……」

    シスター「アイオくん、もっとみんなみたいに遊んでごらん!」
    アイオ「みんなみたいに、、」

    シスター「みんなみたいに笑ってごらん?」


    (夢の中)
    ザザッ
    M「ア…オ!ベッドの下に隠れ…さい!」
    ゴン
    謎の男「アヒャヒャ…ヒャァ‪w‪w
    これで…に…ことも……だなァ!」
    キャァァー
    バタバタ

    ザザッ

    10歳
    孤児院に大学の教授や学者達がたくさん来た。
    子供の学習能力の向上について研究をするそうだ。

    その次の日から食べ物が豪華になり、孤児院の建物の壊れた部分を直しはじめた。
    服も布切れから平民が着るような服になった。

    研究1日目
    薬を腕にうち、授業を行った。
    (薬は危険性はなく、記憶の定着をしやすくさせる効果があると説明があった。)
    子供達は字の読み書きができるようになった。

    研究5日目
    薬の副作用はまだ現れない。
    薬は安全だと思われた。
    子供たちは読み書きができるようになって勉強の楽しさを知った。

    研究1年目
    研究はまだ続いた。
    難易度が高く(現代の中学レベル)なりみんなついて行くのが大変になった。
    順位も発表され、順位が低いものは罰が与えられた。
    順位
    1位_ジェシカ
    2位_ツヴァイ
    3位_ジョン
    4位_イアン
    5位_アイオ




    子供達の成績が下がる事に薬の量が増えて行った。

    研究2年目
    成績がどうしても上がらない子供は研究対象から外されていき残り20人になった。
    外された子供の中から体調不良を訴えるものが出てきた。

    研究3年目
    体調不良を訴えた1人の子供が死んだ。
    しかし、大学の責任者は子供の体が弱く、運が悪かったということにして事実を隠蔽し、研究を続けさせた。
    (研究続行中の)子供が研究を止めるように取り合ったが話にならなかった。
    順位
    1位_シリル
    2位_ジェシカ
    3位_マシュー
    4位_アイオ
    5位ツヴァイ

    研究5年目
    脱落した子供たちの半数が死んだ。
    研究対象残り3人。
    大学側はこのことを隠そうとした。
    順位
    1位_アイオ
    2位_ツヴァイ
    3位_ジェシカ

    研究8年目
    脱落した子供たちみんなが死んだ。
    このことが世にではじめた。
    30人弱の子供が亡くなった事実が問題になり、研究は打ち切りになった。

    研究は終わったが子供たちの精神はボロボロになり、子供たちの体力も衰弱して行った。

    研究が終わって数日
    ツヴァイは精神的ダメージと薬によって体力の限界がきていた。
    ジェシカ「ツヴァイ!ツヴァイねぇ…ウッ」
    ツヴァイ「…大丈夫だよ…。俺はこのまま生き残って悪い大人達を見返してやるんだ…」
    アイオ「ツヴァイ…」
    ジェシカ「そうよ!私たちはそのまま生きてやるんだ!」

    しかし、医者はもっても数日だろうという意見だった。
    ツヴァイ「アイオ、お前はいつも笑わないよなぁ。今くらい笑ってくれよ。」
    アイオ(不格好な笑い)
    ジェシカ「アハハ…変なの。」

    数日後
    ツヴァイは目を覚まさなかった。

    ジェシカ「シスター、この研究で犠牲になった子供たちに哀悼の意を表してお墓を作りたいです。」
    シスター「そうね、」
    シスターも精神的にこたえているようだった。
    アイオ「僕からもお願いします。」
    ふと気がついた。
    心の中がふつふつと熱くなっていることを。
    アイオ(なんだろう?この感覚…)

    僕達は子供たちのお墓を作り、追悼式が行われた。

    ジェシカ「アイオ、こんな顔(複雑な顔)してどうしたの?」
    アイオ「ねぇ、今どんな気持ち?(真剣)」
    ジェシカ「…? そうね、みんなが居なくなって寂しいし、研究者達に怒ってる…かな」
    アイオ「怒る…かぁ。」

    式は無事に終わった。

    15歳
    ジェシカは命に別状はないものの、体が弱っていた。
    仲間たちを失ったストレスもあるのだろう。
    (ジェシカはベッドで寝ている)
    ジェシカ「アイオ、もう勉強はしなくていいのよ?なんでそんな本ばかり、」
    (アイオはベッドの横の椅子に座っている)
    アイオ「僕はもっと頭が良くなってアイツらを見返してやるんだ。(薄笑い)」

    アイオはある時からとある感情が吹き出してくるような感覚に襲われていた。
    アイオ(あつい。あつい。なんなんだ?この感覚は。これが…怒り…?)

    (夢の中)
    ザザッ
    M「ア…オ!ベッドの下に隠れ…さい!」
    ゴン
    謎の男A「アヒャヒャ…ヒャァ‪w‪w
    これであいつらに邪魔をされることもないなァ!」
    キャァァー
    バタバタ
    謎の男B「そうだなぁ‪w‪w‪w
    お前の怒りも冷めるといいなぁ‪w‪」

    ザザッ

    (布団ガバッ)
    アイオ「はっ!今のは…?」

    アイオ「…そういうことか。」


    《書き置き》
    今までありがとうございました。
    あとは自分自身で生きていきます。
    アイオ


    アイオはそう書き置きを残して夜の闇へと消えていった。
    しかし、本当は1人で生きていける術などなかった。

    でも心が熱くて熱くて、憎くて仕方がなかったのだ。
    そして、もうここにいてはいけない気がした。

    アイオは孤児院を出て数十日間、この事件のことを聞き回った。
    しかし誰がどんな目的で行われていたか、何一つの情報も手に入れることが出来なかった。

    そして、孤児院から持ってきた食料は尽き、体力もなくなり、もう道端で座っていることしか出来なくなっていた。

    通行人A「おい、邪魔なんだよ。」
    バシッ
    アイオ「…っ。」

    アイオ(あぁ、俺は何も出来ないのか。ツヴァ イに笑いかけることも。みんなのために復讐をすることも。)

    アイオは自分の無力さをこの世界を呪った。


    ある日赤毛の男が話しかけてきた。
    赤毛の男「君、大丈夫かい?」
    アイオ「…」
    アイオと同じくらいの歳だろうか。
    しかし、雰囲気は落ち着いていて大人びている不思議な人だった。

    赤毛の男「とても弱っているみたいだね。これ
    をお食べ。」
    アイオ ガツガツ ガツガツ ゴクッ

    アイオ「…ありがとう……ござい…ます。」
    赤毛の男「大丈夫かい?何かあったのか?話してくれるなら相談にのるよ。」

    アイオは初対面の人にこれまであったことを話すのは気が引けたがこの人なら話してもいいような気がした。

    アイオはこれまであったことをぽつりぽつりと話し始めた。
    赤毛の男「…そうだったのか。それは大変だったね。」

    アイオは赤毛の男に話したことでこれまで背負って来たものが軽くなったような気がした。
    気が付くとこれまでの疲労と赤毛の男の安心感で意識を手放していた。


    アイオ「…っ、ここは…?」
    赤毛の男「おはよう。気分はどうだい?ここは僕が世話になっている教会さ。」
    アイオ「教会…?」
    赤毛の男「そう、教会。君は魔女を知ってるかい?」
    アイオ「超自然的な力を使うとされる人間…」
    赤毛の男「そう。よく知っているね。魔女は本当に存在する。しかし魔女はこの世界にいてはいけないものなのさ。君もそう思わないかい?」
    アイオ「…?」

    赤毛の男「そういえば自己紹介がまだだったね」
    赤毛の男「僕はアデム。みんなに勘違いされるんだがこれでも17歳さ。僕は教会の管理をしているよ。」
    アイオ「俺はアイオです。俺は15歳です。えっと、」
    アデム「敬言はいらないよ。アデムって呼んでもらって構わない。」

    アデム「アイオ、君はこれからどうするつもりだい?行く宛てはあるのかい?」
    アイオ「…」
    アデム「そうか。それならここで暮らすのはどうだい?」
    アイオ「ここで?助けて貰ってそんな…」
    アデム「大丈夫だよ。ちょうど話し相手が欲しかったところなのさ。」

    アイオはアデムに色々なこと教わった。
    この街のこと、人々のこと、物がどう回っているか。
    時には街を駆け回って今までの思い出さないくらい楽しんだ。
    まるで友達のように。


    アイオがこの教会に来て数ヶ月が経った。

    アデム「アイオはここでの生活になれてきたかい?」
    アイオ「まぁ。アデムのおかげでね。」
    アデム「なら良かった。アイオ、少し仕事を引き受けてくれないかい?」
    アイオ「うん。いいよ。」
    アデム「こっちにおいで。」

    アデムに案内されたのは教会の地下だった。
    しかし、街の端の廃れた教会とは思えないくらい綺麗に整った空間がアイオの前に広がっていた。

    アイオ「ここは…?」
    アデム「うーん、病院みたいなものかな。」
    アイオ「みたい?」
    アデム「ここは病気のせいで親に捨てられた子供たちが来る場所なんだ。」
    アイオ「…」
    アデム「アイオ、君にお願いしたい仕事はここにいる子をお世話することなんだ。」
    アデム「僕はこの後大事な用事があるからそこの研究員に詳しく聞いてくれるかい。それじゃあ。」

    そこには中年くらいの男が立っていた。

    中年の男「やぁ。エゴくんだったかな。話は聞いているよ。院長の大事な友達だとか。」
    アイオ「エゴ、?」
    中年の男「あぁ。ここではコードネームで呼び合んだ。」
    アイオ「そうなんだ。」
    中年の男「じゃあ君の仕事の説明をしよう。君はここにいるモルモッ…ゲフンゲフン少女の世話をするんだ。」
    アイオ「世話を?」
    中年の男「そうだ。コードはイザベル。それじゃあなにか分からないことがあったら僕に聞いてくれよ。」


    そこに居たのは少女だった。
    しかしその少女は表情がくらい。
    アイオが孤児院に来た時のような雰囲気があった。
    少女「あなたが私をお世話してくれる人?」
    アイオ「あ、あぁ。そうだよ。」
    少女「アデム先生は?」
    アイオ「急ぎの用事があるみたいで忙しくしてたよ。」
    少女「そう…」
    アイオ「俺はエゴ。」
    少女「エゴ先生…?」
    アイオ「うん。そうだよ。」
    少女「…私はイザベル。」
    アイオ「よろしく。イザベル。」

    次の日

    イザベル「エゴ先生、悪い人じゃない?」
    アイオ「悪い人じゃないよ。」
    イザベル .。゚+.(*゚▽゚*)゚+.゚
    イザベル「エゴ先生、実はね、私、歌うことが大好きなんだぁ!」
    アイオ「そうなんだ。」
    イザベル「私ね、小さい頃は路地裏で過ごしてたの。お母さんだけは私の味方をしてくれて…」
    アイオ「うん。」
    イザベル「でね?その路地裏の近くにコンサートがあったみたいで貴族の人達がいっぱい中に入っていくの。」
    アイオ「うん。」
    イザベル「そしたらね凄い音楽が聴こえてきたんだぁ。とても高い声なのにキンキンしなくてむしろ心地よかった…。」
    イザベル「だからね!私、歌の練習をいっぱいしたんだよ!」
    アイオ「そうなんだね。」
    イザベル「エゴ先生、私の歌を聴いてくれる?」
    アイオ「いいよ。」
    イザベル 〜♪

    イザベルの歌は本物だった。
    イザベルの歌を聴くと心が優しい何かに包まれるような、とても美しい歌声だった。

    アイオ「凄いよ。」
    イザベル「えへへ。私の夢はね、天使になることなの!」
    アイオ「天使に?」
    イザベル「うん!あのコンサートから帰っていく貴族達がみんな口を揃えて『 あれは天使の歌声だった』って言ってたの。だから私も天使になりたいんだ。」

    別の日

    イザベル「エゴ先生、私の病気っていつ治るのかな。」
    アイオ「どんな症状なの?」
    イザベル「時々、耳がおかしくなるの。」
    アイオ「耳が、?」
    イザベル「うん。なんか…、変なの。ずっとキーンって鳴ってて鳴り止まないの。」
    アイオ「どんな時になるかわかる?」
    イザベル「いつも歌の練習が終わった後に変になるの。」
    アイオ「…そうか、。」
    イザベル「治らなかったらどうしよう。怖いよ…。」
    アイオ「……きっとアデムが治療法を見つけてくれるよ。」

    ある日の夜、アイオはアデムが誰かと話しているのが聞こえてきた。

    アデム「…さん、いつもありがとうございます。」
    ???「いえいえ、こちらこそいつもご贔屓にしていただいて…」
    ???「ところでアデムさん。ここにいる子達を研究に使わせて頂けませんかね。」
    アデム「研究に…?」
    ???「はい。私達に協力して頂けるなら病気の治療費をこちらで負担しましょう。」

    アイオ(子供たちを研究に!?)

    アデム「わかりました。」
    ???「さすがアデムさん。話がわかる。」

    アイオ(アデム!?なんで…!)


    話が終わるとアイオはアデムに問いただした。
    アイオ「アデム、さっきの話はなんだ。」
    アイオは声が少し低くなる。
    アデム「さっきの話?僕達の治癒を手伝ってくれる人と話していたんだよ。」
    アイオ「そうじゃない。子供たちの研究のことだ。」
    アデム「あぁ、聞いていたのか。」
    アイオ「なぜ子供たちを研究に出すんだ。」
    アデム「治療費を出してもらえば多くの子をここで看ることができるからさ。」
    アイオ「でも子供たちが犠牲に!」
    アデム「いい事には犠牲が付き物なのさ。アイオ、君は多くの犠牲を払って少ない人数を守るか、少しの犠牲で多くの人を助けるか。どっちが正しいと思う?」
    アイオ「それは…でもっ!」
    アデム「僕は綺麗事を並べてるんじゃない。現実的にどうしたらみんなを助けられるかが大切なんだ。」
    アイオ「…」


    アイオはその日夢をみた。
    ザザッ
    ツヴァイ「アイオは研究に協力するの?」
    ジェシカ「また犠牲者を出すの?」
    アイオ「…」
    (声が出ない。)
    ツヴァイ「そうか…。俺達との約束を破るんだな…。」
    アイオ(違うんだ)
    ジェシカ「せっかくもうこんなことが起こらないようにって誓ったのに。」
    他の子供「許せない。」
    「そうだ!そうだ!」
    子供達「「裏切り者」」
    ザザッ

    アイオ「はっ!夢…」
    (もう朝か…)

    今日もいつも通り仕事をする。
    イザベルの食事を運び、薬を投与し、彼女の話を聞く。
    しかし、昨日の話が頭から離れず仕事に集中出来なかった。

    イザベル「…エゴ先生?」
    アイオ「…ん?どうした?」
    イザベル「なんか、いつもよりボーっとしてるように見えたから。」
    アイオ「そうかな?大丈夫だよ。」
    イザベル「そう?」

    数日が経ち、本格的に研究が始まった。
    この研究は身体能力を向上させる薬を投与し、その反応を見るそうだ。
    孤児院で受けた研究に似ていて、アイオは不快感を覚えた。

    アイオ(アデムが言うことも正しいと思うけど…研究をしてはいけないんだ。ダメだ考えがまとまらない。)

    アイオ「イザベル、今日から新しい薬を投与することになったから何か変わったことがあれば教えて欲しい。」
    イザベル「うん!わかった。」

    数日後、
    イザベル「エゴ先生!私凄いよ!体が凄く軽いの!変なのも聞こえなくなったし!」
    アイオ「…そうか。」
    イザベル「エゴ先生?大丈夫?」
    アイオ「あぁ、最近疲れてるみたいで、」
    イザベル「どうして?」
    アイオ「最近悪夢を見ていてさ…。」
    イザベル「どんな夢なの?」
    アイオ「昔の仲間が裏切り者って責め立てて来るんだ。」
    イザベル「そっか…それは辛いね。」
    アイオ「うん。」

    研究が始まって数週間が経った。

    イザベル「エゴ先生!やっぱこの薬凄いよ!体は軽いし遠くの音まで良く聞こえるんだよ!病気ももう治った気が する!」
    アイオ「…」
    (薬物症状が出ている…もうダメだ。我慢出来ない。)

    仕事が終わるとアイオの足はアデムのところに向かっていた。

    アイオ「アデム!研究はもうやめてくれ!」
    アデム「どうしてだい?アイオ。みんな元気そうじゃないか。」
    アイオ「あれは元気なんじゃない!薬物症状だ!」
    アデム「そうなのか…でも研究を止めることは出来ない。」
    アイオ「なぜ!」
    アデム「ここで薬を作らなければ患者…魔女は増えるばかりだ!」
    アイオ「魔女…?」
    アデム「そうだ。あの子たちは魔女だ。魔女は普通の人とは違う[個性]を持って生まれてくる。ただそれだけなのに周りから罵倒され、敬遠される…!」
    アイオ「それでもあの薬を使えば子供達は一生苦しまされることになる!アデム、どうして薬を作ることに執着するんだ?」
    アデム「それは…」
    アデムは何か、動揺しているようだった。

    ジリリリ
    その時突然、電話の音が部屋に響き渡った。

    アデム「こちらサルヴァ教会です。
    そうですか…。わかりました。今すぐ伺います。」

    アデム「急用だ。僕は出かけるけどアイオはもう休んでくれ。
    あと、すまないがさっきの話は聞き入れられない。」
    バタン
    アイオ「…」
    (あぁ、やっぱり俺は何も守れないのか。)

    ザザッ
    少年「母さん!みてみて!」
    母親「あら、上手にできたじゃない!」
    父親「おお!ア…オ、これはなにをしてるんだい?」
    少年「これはね、父さんと母さんと……と僕でピクニックしてるの!」
    父親「そうか。それなら明日はピクニックをすることにしよう!」
    少年「うん!」
    ザザッ

    アイオ(…なんだか懐かしいような夢だった。あれは誰なんだろう。)

    アイオはアデムを待っているうちに寝てしまっていたようだった。

    そして今日も仕事が始まる。

    イザベル「エゴ先生!おはよう!」
    アイオ「あぁ、おはよう。」
    いつものようにたわいもない会話をし、イザベルのお世話をする。
    イザベル「んふふ。私ね!昨日、神様に会ったんだぁ!」
    アイオ「神様?」
    イザベル「うん!神様!私を天使にするために迎えに来たんだって!」
    アイオ「そうなんだ。」
    (薬物の症状が悪化してるみたいだ。)
    イザベル「でもね…天使になるには身体が重すぎるんだって。」
    アイオ「重い?」
    イザベル「うん。神様がそう言ってたの。」

    イザベル「だから………重い身体は置いていかないとね。」
    アイオ(何を…?)

    イザベルはアイオのポケットから黒いナイフを取り出す。
    イザベルは薬のおかげで無駄のない動きをしていた。
    その黒いナイフとはアイオが大切な人(思い出せない)から護身用としてもらったものだった。

    アイオ「イザベル…?」

    イザベル「エゴ先生、今までありがとう!」

    イザベルは今までで見せたことがないくらいの満面の笑みを浮かべていた。
    そして喉元にナイフを突き立てる。

    イザベル「さよなら…。」

    その後は生暖かく鉄臭い、真っ赤な世界が広がった。

    アイオ「何が…起こった…?」

    ザザッ
    ジェシカ「あーあ。死んじゃった。」
    子供「やっぱり俺たちを裏切るんだな。」
    ザザッ

    アイオ「そんな…。俺は…!」

    ザザッ
    ツヴァイ「はははっ。何言ってんの?」
    「「お前が殺したんだよ。」」

    ツヴァイの声が頭の中で反響する。
    頭がおかしくなるようだった。
    ザザッ

    アイオ「やめてくれ!やめてくれよ…。」

    アイオはそこで意識を手放した。

    ………


    ボコボコ
    体が重い。
    なんだか水の中にいるようだった。

    少年「…なの?僕はただみんなといたいだけなのに!」

    誰かが喋っているような気がした。

    少年「僕がいると周りが不幸になるの?いつもそうだ。みんな僕のことを置いていくんだ。」
    謎の男「そんなことはない。みんな運が悪いだけさ。」
    少年「どうしてそんなこと言えるの?もう嫌だよ。こんな世界。」
    謎の男「それならもう君だけの世界で生きればいい。」
    少年「僕だけの?」
    謎の男「君がいると周りが不幸になるならそこから離れればいいだけさ。」

    なんだか謎の男の声を聞くと懐かしいような心地いいような気がする。

    謎の男はアイオの方を向く。

    謎の男「なあ、アイオ。お前はもう周りを気にかけなくていいんだよ。」
    アイオ「お前は誰だ…?」
    謎の男「俺か?やだなぁ。忘れたのか?」
    アイオ「…?」
    謎の男「俺だよ。ライトだよ。」
    アイオ「ライト?」
    ライト「あぁ。そうだ。お前が子供の時に受けた心の傷を守ってやっただろ?」
    アイオ「子供の時?」
    ライト「あぁ、記憶がないのか。ほら。」

    ライトは古い新聞のようなものを放る。

    《記事》
    昨日未明、イーナシティでマリー・チャロとその家族と思われる遺体が発見されました。
    マリー・チャロは魔女と疑われており、反魔法団体の犯行とみて調査を進めています。
    奇跡的に生存した息子のアイオくんは精神的ダメージが甚大なため、一時的に病院で保護されるようです。
    ……


    アイオ「俺の家族…?」

    ザザッ
    職員「…あんなことがあったら…辛かったね。」
    アイオ「…」
    職員「ここは安全だから落ち着くまでゆっくりしていっていいわ。」
    パタン
    アイオ「ウウッ…。やだよ。置いてかないでよ…。」
    グスッ
    アイオ「僕がピクニックに行こうなんて言うからいけないの?僕のせいなの?父さん、母さん!」

    アイオ「嫌だ嫌だ嫌だ…」

    「フフフ…辛いか?苦しいか?」
    アイオ「…誰?」
    「俺?そうだなぁ…らいと。俺はライトだ。」
    アイオ「…ライト?」
    ライト「あぁ。そうだ。」

    アイオは敵意に満ちた目でライトを睨む。

    ライト「そんなに睨むなよ。俺はお前の敵じゃない。」
    アイオ「?」
    ライト「お前、辛いんだよなぁ?」
    アイオ「うん…。」
    ライト「それを無くす方法があるんだか…」
    アイオ「教えて。」
    ライト「タダでそれを教えるのはなぁ。何か対価がないと。」
    アイオ「たいか?」
    ライト「物を買う時にお金を払うようなものだ。」
    アイオ「僕お金持ってない…。」
    ライト「お金じゃなくていいさ。」
    アイオ「じゃあどうしたら…?」
    ライト「そうだな。お前の体を半分貰おう。」
    アイオ「どういうこと?」
    ライト「ククク。今は分からなくてもいい。」
    アイオ「…どうやるの?」
    ライト「じゃあお前の体を半分くれるか?」
    アイオ「…いいよ。」
    ライト「大切な人が殺された記憶があるから苦しんでるんだろ?それなら俺が今までの記憶を預かっていよう!然る時が来るまで。」
    ザザッ

    アイオ「頭が…今のは、?」
    ライト「思い出したか?ククク…」
    アイオ「体を半分貰うってどういうことだ。」
    ライト「そのままの意味さ。もう分かってるんだろ?俺がもう1人の人格だってことを。」
    (※アイオくんは頭がいいです。)


    ライト「約束だ。これから俺が好きな時に好きなように使わせてもらう。お前の邪魔はしないから安心しろ。ククク…」
    アイオ「…本当か?」
    ライト「本当だよ。」
    アイオ「……わかった。」
    ……


    ボコボコ

    アイオ「…っ、」
    (なんだかとても長い夢を見ていたような気がする。)
    アデム「アイオ!僕がわかるかい」
    アイオ「アデム…?」
    アデム「あぁ、よかった。」
    アイオ「俺は…?」
    アデム「僕が帰って来た時に倒れていたのを見つけたんだよ。」

    イザベル(今までありがとう!さよなら…。)
    イザベルの言葉が頭をよぎる。

    アイオ「イザベルは無事なのか!?」
    アデムは残念そうに首を振る。
    アイオ「そっか…。」
    それ以上言葉が出てこなかった。

    アデム「アイオ、痛いところはないかい?怪我をしているところは?」
    アイオ「…大丈夫。」
    アデム「あの時何があったのか話せるかい?」
    アイオ「…。」
    アデム「…そうか。それじゃあ時間を空けてまた来るとしよう。ゆっくり休んでくれ。」

    アデムは立ち上がる。

    アイオ「……アデム、もう薬は使わないでくれ。」

    アデム「すまない。」
    パタン

    今まであったことを頭の中で繰り返す。

    様子がおかしいとわかっていたのに動揺して止められなかった。
    あの時だって薬物症状が出てたのにもかかわらずアダムの指示というこのを言い訳に薬を投与し続けた。

    どうして俺は…。

    こんな後悔が頭の中をぐるぐる回る。


    ふと、アイオは何かに縋るように部屋を後にした。

    向かったのはイザベルの部屋だった。
    ドアを開ければ
    イザベル「エゴ先生!おはよう!」
    そんな元気な挨拶が聞こえてくる気がしたからだ。

    しかしそんなことはなく、
    イザベルがいた事さえ嘘だったと思えるような綺麗に整った部屋が待ってた。
    血で真っ赤になっていた壁も真っ白になっていて、あるのは机とその上に置いてある黒いナイフと絵本だけだった。

    アイオ「イザベル…?」
    ライト「イザベルは死んだんだ。お前もこの目で見ただろ。」
    アイオ「…っ。」

    アイオ「…ん?絵本?」

    《絵本》
    むかしむかし、ある小さな村に少女がいました。
    その少女は美しい目を持っており、村のみんなから愛されていました。
    しかしその村は飢饉に襲われており、潤うことはありませんでした。
    ………
    ………
    ついに大共作が起こってしまいました。
    祟りだ。神様のお怒りだ。と村のみんなは絶望してしまいました。
    しかし、少女は諦めていませんでした。
    少女は大事な「美しい目」を神様に捧げ、村が潤うことを願いました。
    少女は目が見えなくなりましたが、
    少女が大事な「美しい目」を捧げたことで、村が潤い続けましたとさ。
    めでたしめでたし。


    アイオ「神様に捧げる…?」
    ライト「イザベルはこの本を読んだみたいだな。そしてあんなことをしたんだろ。」
    アイオ「薬で正しい判断が出来なかったのかもしれない…。俺が気づいていれば…!」
    ライト「もう過ぎたことだ。後悔したって時間の無駄だ。」
    アイオ「…。」


    あの後、どうやって部屋に戻ったのかわからない。
    気がつくと部屋の壁をじっと眺めていた。

    コンコン
    アデム「入るよ。」
    アイオ「…。」
    アデム「アイオ、心の整理がついたかい?あの時、何が起きたのか教えて欲しいんだ。」
    アイオ「…どうして話さなければいけないんだ?」
    アデム「僕はここの管理者だ。起こったことに対して対処をしなければならないんだ。」
    アイオ「…………わかった。」

    アイオはアデムに話し始める。
    イザベルの様子がいつもと違かったこと。
    神様にあったと言っていたこと。
    イザベルがアイオの短剣で自分の喉を刺したこと。
    ………
    ……


    アデム「そうだったのか。」
    アイオ「…なぁアデム。本当に子供たちの研究を辞めることは出来ないのか?
    俺はあの子たちを見ていると孤児院の仲間を思い出すんだ。研究によって殺された仲間たちを…。」

    アデムは少しの間何かを考え、真剣な顔でアイオに向き直す。
    アデム「大事な話があるんだ。この後僕の仕事部屋に来て欲しい。」
    アイオ「…?」

    パタン

    アイオは赤い染みの着いた白衣を着て部屋を出る。
    廊下に出ると綺麗な夕日が差し込んでくる。
    アイオ(まだこんな時間か。いつもなら真っ暗なのにな……。)
    何回も通った廊下だが今日は足が重い。
    アイオ(なんだか嫌な予感がする。)

    コンコン
    アイオ「アデム?」
    アデム「入っていいよ。」
    ガチャ
    アデム「待っていたよ。」
    アイオ「大事な話って?」
    アデム「あぁ。大事な話。と、その前に1つ。イザベルに使った薬は失敗作として処分されるそうだ。」
    アイオ「…それだけなのか?」
    アデム「…?」
    アイオ「研究者から謝罪の言葉すらないのか?罪のない子供たちを実験に使い、失敗もしたのに。」
    アデム「…」
    ライト(そもそもあいつが研究を許したからこうなったんだろ。)
    ライト「…そうか。で、大事な話ってなんだ?」
    アデム「君はここでの仕事をやめてもらう。」
    アイオ「どうして、?」
    アデム「君に辛い思いをさせたんだ。それかここが嫌なら出ていっても構わない。」
    アイオ「………」
    ライト「そうだな。出ていくよ。」
    アイオ(ライト!?)
    アデム「そうか。…わかった。」

    アデムは下を向いていて髪で表情が読み取れない。
    しかし、何かを抑えているような震えた声をしていた。

    ジャラ
    アデムは小さな布袋を差し出す。
    アデム「ここには3ヶ月は暮らしていけるお金が入っている。暮らしが安定するまではこれを使うといい。」
    アイオ「なっ……。」
    アデム「すまなかった。アイオ。………イザベルも。」








    あれから朝日が昇る頃には準備を終え、教会を出た。
    アイオ「…まずは泊まれるとこを探さなきゃ。」
    ライト「そうだな。」
    アイオ「なぁライト、アデムはどうして俺を引き入れたんだろうな。あの教会に。」
    ライト「さぁな。」

    アイオ「はぁ。」
    ライト「おい、また後悔か?」
    アイオ「うっ…。」
    ライト「はっ。後悔をしたって何も始まらないんだよ。」
    アイオ「でも…。」
    ライト「面倒な奴だな。少し寝てそのネガティブ思考をどうにかしたらどうだ。」
    アイオ「でも、まだ泊まるとこも見つけてないのに。」
    ライト「俺がどうにかする。くよくよしてるより寝ていてくれた方がマシだ。」
    アイオ「……わかったよ。」

    ポコボコ…
    いつもなら悪夢を見るはずなのに今回は違っていた。
    信頼している人に守られているような安心感があった。
    そしてとても暖かい。


    アイオが目を覚ますと知らない天井を眺めていた。
    アイオ「ここは…?」
    ライト「居酒屋だ。」
    アイオ「居酒屋、!?」
    ライト「そうだ。」
    アイオ「宿はどうした。」
    ライト「はっ。あんなとこ泊まりたくもない。」
    アイオ「何があったんだ?」
    ライト「3日で手持ちの金を全部出せと言われたんだ。ぼったくりにも程がある。ふん。」
    アイオ「そう…だったんだ。じゃあなんでここに?」
    ライト「あぁ、お前の知り合いに会ったんだよ。」
    アイオ「俺の知り合い?」
    ライト「そうだ。」

    コンコン
    「入るぞー。」

    「よー、アイオ。体調が悪いって言ってたけど大丈夫か?」
    ライト「うん。休んだら良くなったよ。ありがとう。^^」
    「いいってことよ。なーなー。俺の事覚えてないって言ってたけど、ちょっとは思い出たか?」
    アイオ「………もしかしてゼンなのか、、?」
    ゼン「そうだよ!俺だよ俺!よかった〜!」
    ゼン「……実は俺、お前の家族があんなことになって、ずっと心配だったんだ…。」
    アイオ「…うん。」
    ゼン「お前だけでも生きていてよかったよ。」
    ゼン「今までどこにいたんだ?辛い思いはしてなかったか?」
    アイオ「…大丈夫だよ。」
    ゼン「そうか…。ならよかった。それにしても懐かしいな。お前とまたこうやって話せるなんて。」
    アイオ「そうだね。……懐かしい。」
    ゼン「そうだ!俺、父さんの手伝いに行かなきゃなんだ!今日はゆっくり休んでお前も明日からよろしくな!」

    バタン

    アイオ「ははっ。やっぱり台風のような人だな。」
    ライト「それは俺も同感だ。」
    アイオ「…で、どうしてここに?」
    ライト「昼食をとろうと近くにあったこの店に立ち寄ったんだ。そしたらあいつが声をかけてきて、ここで働くのを条件に部屋を貸してくれることになったんだ。」
    アイオ「そうだったのか。」




    アイオ(それにしても懐かしいなぁ。よく僕のうちに来て、僕とゼンとあの人と遊んだな。)
    アイオ(あの人って、誰だ……?)

    アイオはそんな謎を抱いたが体は疲れていたようで気がつくと眠りについていた。





    アイオは日が昇る頃に起きる。
    今までの生活が染み付いているようだった。
    持ってきた服を着て寝癖を整えてピンを付ける。そして大事なナイフを仕舞う。
    (イザベルを刺したナイフは手放そうとしたが何故か出来なかった。)


    ガチャ
    ゼン「起きろー!いい朝だぜ!」
    アイオ「あっ、ゼン。おはよう。」
    ゼン「え、もう起きてるのかよ。ちぇー。びっくりさせてやろうと思ったのによー。」
    アイオ「いつもこうだったからさ。」
    ゼン「今までどんな生活してたんだよ!w」
    アイオ「別に普通だよ。」
    ゼン「そうかぁ。」
    アイオ「うん。」
    ゼン「用意したら下に降りてこいよ。朝飯あるから。」
    アイオ「はーい。」
    ガチャ


    ライト「少しはリラックスしたようだな。」
    アイオ「そうかな。」
    ライト「ジメジメする感覚が無くなった。」
    アイオ「そういうものなのか?」
    ライト「あぁ。俺の感覚は普通と少し違うらしいからな。」
    アイオ「へぇ。」

    支度が終わると1階に降りる。

    トントントンジュワー
    階段を降りている途中でいい匂いがしてくる。
    ゼン「おっ!来たか!」
    ゼンの母「おはよう!アイオくん。」
    アイオ「おはようございます。」
    ゼンの父「おはよう。よく眠れたかな?」
    ライト「はい。お陰様で。」
    ゼンの父「そうかそうか。」
    ゼン「おいアイオ、お前も運ぶの手伝ってくれー!」
    アイオ「わかった。」

    朝食の支度が終わるとみんなで席に着く。
    食事だ。
    なのにみんな楽しそうな顔をする。
    ただの食事なのに。
    ただエネルギーを摂取するだけの行為。
    なんでこんなに楽しそうな顔をするんだ?

    ゼン「アイオ、どうしたんだ?」
    アイオ「…ん?」
    ゼン「不思議そうな顔してるけど。食べないのか?」
    アイオ「あぁ。なんでもない。美味しそうだね。いただきます!」
    ゼン「おう。」

    みんな幸せそうだ。
    孤児院に入ってから食事はエネルギー摂取のための行為になっていた。
    効率よくエネルギーをとり、テストで良い結果をだす。
    そんな生活をしていた。
    教会で生活するようになってもその習慣は変わらなかった。
    だからなぜみんながそんな顔をするのかわからない。
    5歳までの頃は俺もこんな顔をしていたのだろうか。
    そんな感情、もう覚えてない。

    ゼンの母「どう?口に合ったかな?」
    ライト「はい。美味しいです。」
    ゼンの母「それは良かったわ!」
    ゼンの父「アイオくん、君の好きな食べ物はあるかい?」
    アイオ「好きな、食べ物…?」
    ゼン「お前、小さい頃はビーフシチューが好きだったよな。」
    ライト「あぁ。そうそう。ビーフシチューが好きです。」
    ゼンの父「そうか。じゃあ今夜は歓迎会としてビーフシチューを作ろうか。」
    ゼンの母「そうね!」

    朝食を食べ終わるとみんなはせっせとお店の準備を始める。
    ゼン「アイオー!こっちこっち。」
    アイオ「はーい?」
    ゼン「アイオはここで母さんと一緒に調理をしてくれ。簡単だからお前にも出来ると思うよ。」
    アイオ「やってみる。」

    ……

    ゼン「まっずっっっ!」
    アイオ「え?」
    ゼン「どうしたらこんなに不味い食べ物ができるんだよ!」
    アイオ「俺は、レシピ通りに…。」
    ゼン「はぁ?まじかよ。俺にだって出来るぞ(引)」(悪気なし)
    アイオ「…」
    ゼン「やめだやめ。もうお前は配膳をやってくれ。」
    アイオ「わかったよ…。」


    そんなこんなでアイオの居酒屋での仕事は始まった。

    俺にも家族がいたらこんな生活をしていたのかな。
    家族が生きていたら…
    アデムは今どうしているのだろう。
    子供達は無事だろうか。
    そんなことを考えることもあった。
    しかし、月日は流れ、辛い過去を思い出さないほどにはこの生活に慣れてきていた。

    アイオ「いらっしゃいませ!」
    アイオ「お待たせしました。」

    アイオがここに来てから3年が経とうとしていた。
    (ちなみに料理は上達せず。)

    D「おい、最近ここの近くにギルドが出来たの知ってるか?」
    E「あーあれだろ?あの反魔法団体が設立したっていうギルドだろ?」
    D「そうそう。あれ凄いぞ。」
    E「どこが?」
    D「報酬がいつもの倍、いや、倍以上なんだってよ。」
    E「まじか。でも魔女殺しの反魔法団体だろ?危険なんじゃないか?」
    D「でもいい話にはリスクってもんがあるだろ。」
    E「確かに…。」
    D「俺の知り合いがあのギルドに加入したらしいんだけどよー、結構稼いでるらしいぜ?」
    ……


    ライト(反魔法団体か。最近よく聞くな。)



    今日の皿洗い担当はアイオとゼンだった。
    ジャー
    ゴシゴシ
    ライト「なぁ、ゼン。反魔法団体ってなんなんだ?」
    ゼン「それは……。」
    ライト「大丈夫。家族を殺したのは知ってる。」
    ゼン「そうか…。でも、!」
    ライト「頼む。」
    (ゼンを真剣な顔で見つめる。)
    ゼン「……わかったよ。」
    ゼン「反魔法団体は…魔女を殲滅するために集められた集団だ。ここまでは知ってるだろ?」
    アイオ「うん。」
    ゼン「それで魔女を恐れる人が多いからその団体に自ずと資金が集まってくるらしいんだ。」
    ゼン「だから色々な企業で1枚噛んでるっていう噂も多くある。」
    ライト「そうなのか。」
    ゼン「あぁ。あの街外れにある教会か孤児院かよく分からないところにも投資してるって聞いたこともあるしな。」
    アイオ「あの教会にも、?」
    ゼン「噂に過ぎないけどな。」
    ライト「そうか。ありがとう。」
    ゼン「なぁ…アイオ。変なことを考えてるんじゃないだろうな。…復讐とか。」
    ライト「そんなことないよ。」
    ゼン「せっかくお前だけでも生き残れたのに。お前まで何かあったら…。俺は、コーディに恨まれてしまうからな。あはは…。」
    アイオ「…?コーディって、誰だ?」
    ゼン「…はぁ?おい、冗談か何かか?w」
    アイオ「…?」
    ゼン「ガチのやつ、なのか…?」
    ゼンを動揺しているようでこれ以上話を聞くことは出来なかった。

    皿洗いが終わるといつものような会話はなく各自の部屋に戻った。

    アイオ「コーディって誰なんだ………?」
    ライト「さぁな。」
    アイオ「ライト、まだ俺に返してない記憶はないのか?」
    ライト「あの時全て返したさ。」
    アイオ「そうか…。じゃあどうして…。」
    ライト「気になることが2つあるんだが。」
    アイオ「なんだ、?」
    ライト「まず1つは家族との記憶で曖昧なところがあることだな。」
    アイオ「10年以上前の事なんだ。曖昧になることもあるんじゃないのか?」
    ライト「いや、不自然に記憶が無いところがあるんだ。」
    アイオ「そう…なのか。」
    ライト「あぁ。あともう1つ。なんで俺の人格を作り出したんだ?」
    アイオ「それは、寂しくて……だと思う。」
    ライト「本当にそれだけか?」
    アイオ「それだけって?」
    ライト「寂しかったなら両親に似ている人格を作ればいいだろ。なんで俺なんだ?」
    アイオ「…確かになんでなんだろう。」
    ライト「俺の人格が生まれる前に何かあったのかもな。」





    コンコン
    ガチャ
    アイオ「…んん。」
    ゼン「おはよう。アイオ。何かあったのか?」
    アイオ「…あれ?ゼン?どうしたの?こんな早くに。」
    ゼン「何言ってんだ。もう8時だぞ。」
    アイオ「…え!?8時!?」
    ゼン「そうだぞ。ほら早く起きて。」
    ゼンはアイオを起こそうと腕を掴む。
    ゼン「熱っ。アイオ、風邪引いてるのか?」
    アイオ「風邪?…大丈夫だよ。ほら、、こんなに元気に動けr…」
    バタッ

    ゼン「…イオ!アイオ!大丈夫か?!」
    アイオ「あれ…なんか体が動かない。」
    ゼン「やっぱり風邪だろ。治るまで安静にしてな。」
    アイオ「でも、仕事をしなくちゃ。」
    ゼン「病人に仕事をさせるやつなんていないよw」
    アイオ「でも…。」
    ゼン「体が動かなかったら何もできないだろ?そんなに働きたいなら安静にして早く治すんだな。」
    アイオ「…ん。」






    ザザッ
    母親「ア…オ!ベッドの下に隠れ…さい!」
    ゴン
    謎の男A「アヒャヒャ…ヒャァ‪w‪w
    これであいつらに邪魔をされることもないなァ!」
    キャァァー
    バタバタ
    謎の男B「そうだなぁ‪w‪w‪w
    お前の怒りも冷めるといいなぁ‪w‪」
    ザザッ

    アイオ「…っ。」
    アイオ「はは…。またこの夢を見るとはな。」

    コンコン
    ガチャ
    ゼン「アイオ?大丈夫か?」
    アイオ「……ん?ゼン?」
    ゼン「母さんがお粥を作ってくれたから食べろよな。」
    アイオ「ありがとう。」
    ゼン「あぁ。早く良くなれよ。」
    アイオ「うん。伝染したら悪いからそこに置いておいてくれないか?」
    ゼン「そうか。分かった。」
    ガチャ

    それから1週間。
    アイオは熱と悪夢に襲われ続けた。

    ザザッ
    そこには2人の少年がベッドの下で隠れていた。
    1人は父親に似た黒色の髪の毛をした男の子。
    もう1人は母親に似た栗色の髪の毛をした男の子。
    a「兄ちゃん、怖いよ……。グスッ。」
    c「しーっ。大丈夫。兄ちゃんが守るから。」

    謎の男A「クッソ、あのガキ。どこに逃げやがったんだ?」
    謎の男B「あっちの方から物音が聞こえなかったか?」

    c「アイオ、何かあったらこのナイフを持って逃げろ。」
    a「兄ちゃんは?」
    c「大丈夫。何かあったらこのナイフで自分の身を守れ。」

    そう言いながら黒髪の少年はベッドの下で栗色の髪の少年を守るように抱いていた。

    ガチャ
    キィー
    謎の男B「あとはこの部屋だけだな。」
    謎の男A「あー!早く殺したくてしょうがねぇ。」
    謎の男B「クフフ。お前、ほんとに魔女と子供は毛嫌いするよなww」

    謎の男A「おっと、ここに1人いるじゃねぇか。」

    カチャ(ナイフを出す音)

    c「うっ……。」
    c「はぁ、はぁ。ぐっ……」
    a「にいち……。」
    c「しー。」
    黒髪の少年は首を振る。

    謎の男A「あれ?他にはいなかったっけ?」
    謎の男B「もういないんじゃねぇの?早く戻って酒飲もうぜ。」
    謎の男A「そうだな。やっぱ仕事のあとの酒は美味ぇからな。アヒャヒャヒャ」

    ガタン
    ドアの音が家の中に響き渡る。
    そして静寂。
    いや、ひとつ音が聞こえている。
    ヒュウヒュウという袋から空気が抜ける音。
    それは不安になるような不快な音だった。

    c「だ……大丈、夫か、、?」
    a「僕は大丈夫だけど…兄ちゃんが…!」
    c「あぁ…。俺の体はもうダメみたいだ…。」
    ヒュウヒュウ…
    c「…あれ? ゲホゲホ アイオ?どこにいるんだ?」
    a「兄ちゃん!僕はここだよ!ほら!」
    栗色の髪をした少年は黒髪の少年の手を握ってみせる。
    a「冷たい…。」
    いつもは暖かい手で僕を握ってくれるのに。
    c「……おかしい、な…。」
    ヒュウヒュウ
    c「、、アイオの…声は、聞こえるのに…。」
    a「兄ちゃん!嫌だよ…。冗談、だよね?」
    c「……だ。だい……だから…。お前は…ひとりじゃ、い…。ゲホゲホ」
    a「……うぅ。」
    c「あ…してる。おれ、の、大事な…………。」
    ヒュウ、ヒュウ

    ………
    ……


    ついには手の温もりも、空気が袋から抜ける音も無くなった。
    あるのは本物の静寂。

    ザザッ

    アイオ「……。」
    ゼン「大丈夫か?」
    アイオ「……うん。」
    右目から涙が伝ってくる。
    ゼン「熱は下がってきたけどまだ顔色が悪いな。」
    アイオ「……ねえ、兄ちゃんってどんな人だった?」
    ゼン「急にどうしたんだよ。って、兄ちゃん!?コーディの事、思い出したのか!?」
    アイオ「分からない。」
    ゼン「そ、そうか。うーん。そうだな、弟想いの良い奴だったぜ。たまにお前にイタズラしてたけどな。」
    アイオ「そうなんだ。」
    ゼン「あとかっこいいやつだったよ。」
    アイオ「…うん。」
    ゼン「まだ顔色が悪いからな。ゆっくり休めよ。」
    アイオ「ありがと。」



    ……
    ライト「…殺してやる。」
    アイオ「えっ?」
    ライト「はははっ。お前は反魔法団体が憎くないのか?」
    アイオ「それは…。憎いと思う、。」
    ライト「そうだよなぁ。クククッ」
    アイオ「…でも、どうにかしようとは思わない。」
    ライト「は?何言ってんだよ。」
    アイオ「復讐したって何もならないと思うんだ。」
    ライト「あ?」
    アイオ「反魔法団体に復讐したって他にもそんな人間は何万といるんだよ?」
    アイオ「…何をしたって変わらないさ。」
    ライト「ククッ。怖気付いたのか?」
    アイオ「そうじゃない。」
    ライト「じゃあお前は反魔法団体が何をしていても見逃すって言うのか?」
    アイオ「それは…」
    ライト「俺は他の人間がどんな目にあおうがどうでもいい。でもな、どうしても反魔法団体が許せないんだ!」
    アイオ「ライトは反魔法団体から何もされてないだろ?どうしてお前が…。」
    ライト「クククッ、何言ってくれてんの?w俺があの記憶を預かってからあれが俺の全てなんだよ!」
    アイオ「?」
    ライト「俺はあの記憶を繰り返して繰り返してそれなのに『アイオを守れ』という声は消えなくて…!」
    アイオ「何を、言ってるんだ、?」
    ライト「お前は分からないだろうな。あの記憶の辛さを。」
    アイオ「…わかっているよ。」
    ライト「はっ!wじゃあ何故復讐しない!」
    アイオ「気づいたんだよ。俺は弱くてちっぽけで何も出来やしない。復讐なんて馬鹿げてる。」
    ライト「力があれば出来るのか?」
    アイオ「…」
    ライト「教会には考えもしない力が眠ってると思うけどな。」
    アイオ「え?」
    ライト「あそこには魔女を集めている頭のおかしいやつがいるだろ?」
    アイオ「アデムの事か、?」
    ライト「そうだな。あいつが魔女を集めているおかげでお前の何百倍もの力があると思うんだが。」
    アイオ「子供たちを利用するのか!?」
    ライト「利用だなんて人聞きの悪い。自衛だよ自衛。力を持っているのに人様に守ってもらうなんて贅沢すぎるだろう?」
    アイオ「そうかもしれない。でも…」
    ライト「文句あんのか?」
    アイオ「でもアデムは魔女の症状を治そうとしてるのに魔法を使わせるなんて…」
    ライト「はっ!wアデムだって研究と言って魔法を使わせてるだろ。目的が違うだけで何も変わりゃしない。」
    アイオ「……。」
    ライト「決まりだな。」




    あれからまた半年。

    ゼンの母親「アイオくん、最近目的が出来たみたいに生き生きしてるね。」
    ゼンの父親「そうだね。よかった。」

    アイオ「行ってきます。」

    アイオは最近、休みの日は図書館に通っている。
    反魔法団体に××するために。

    居酒屋の客に聞けばいいって?
    いや。
    昔からある反魔法団体や魔女の情報は噂よりも本の方がより事実に近いことが載っている。

    図書館はこの街にしては大きく、色々な本を取り扱っている。


    ガチャ
    アイオ「ただいま。」
    ゼン「おっ!おかえり!」
    ゼン「アイオは偉いな。勉強なんて。」
    アイオ「そんなことないよ。」
    ゼン「いや凄いって。俺より多くのことを知ってるんだもん。」
    アイオ「あはは。」

    ゼン「そうだ。ゴミが溜まって来たからごみ捨てを手伝ってくれないか?」
    アイオ「いいよ。」

    ゴミ箱の横にはゴミ袋が3つ置いてあった。
    ゼン「お客さんが増えてきてな。その代わりゴミも多くなってきたんだよなー。」
    ゼン「だから結構重くて。」
    アイオ「ほんとだ。」
    ゼン「助かるよ。ありがとう。」

    ゴミ捨て場には5分程度歩けば着いた。
    ゼン「最近ゴミが荒らされてるらしいんだ。」
    アイオ「ゴミが?今までもあったのか?」
    ゼン「ちょこちょこな。近所の人が言うには野良の動物の仕業だってさ。」
    アイオ「そうなんだ。うーん。」

    ゼン「…まて、ゴミ袋の方から音がする。…白猫?コイツが悪さしてたんだな。」

    ゼン「生きるのに必死なのはわかるが、俺達もゴミを荒らされちゃ困るんだ。退いてくれないか?」
    ゼンが声をかけるとその猫はこっちをじっと見て路地裏に消えていった。
    でも、そこに居たのは1匹だけじゃなかったようだ。
    ゼン「まだいたのか。」
    アイオ「…?猫にしては大きいな。」
    ゼン「聞いてるのか?お前も別の場所に行ってくれ。」
    アイオがその動物の様子を見ようとするとその動物は顔を上げる。
    その動物は……白髪の少女だった。
    アイオ「に、人間、、?」
    ゼン「おい、冗談だろ?」
    アイオ「いや、。」

    よく見るとその少女の顔や腕には石のようなものが刺さっていた。
    いや、生えていたという表現の方が正しいかもしれない。

    身の毛がよだつ。
    ライト「アイオ、離れるぞ。」
    アイオ「えっ?」
    ライト「あいつから魔女特有の嫌な気配がする。」
    アイオが1歩後ろに下がろうとした時、

    キィィィィーーン

    頭の中で甲高い音が鳴り響く。
    この世界の音がこの音を除いて、なくなってしまったようだ。

    そして目の前の少女だと思っていたものは
    あの、イザベルの容姿へと変わっていく。

    イザベルは楽しそうに歌っていると思えば急に悲しそうな表情を浮かべる。
    そして満面の笑みを浮かべて
    イザベル「 」
    ( さ よ う な ら )
    喉元にナイフを突き立てる。

    気がつくと目の前には孤児院の仲間たちがいた。
    アイオ「みんな…?」
    A「アイオくん!一緒に遊ぼう!」
    体が動かない。
    A「こっちにおいで!」

    B「アイオくんって面白くないね。」

    机の上にテスト用紙が置かれている。
    大学の教授達は成績が悪い子供に厳しい罰が与えていた。
    C「嫌だ。痛いよ。」
    D「苦しいよ。もうやりたくないよ…。」
    子供達が1人、2人…と次々に倒れていく。

    誰かからの強い視線。
    兄、コーディが僕のことを睨んでいた。
    コーディ「お前を守らなければ俺はまだ生きられたんだ。」
    コーディ「お前さえ居なければ…!」

    キィィィィーーン

    ゼン「アイオ!」
    肩が揺さぶられる。
    ゼン「大丈夫か?!」
    体の力が抜けて地面に膝をつける。
    アイオ「ハァ、ハァ、。」
    アイオ「…忘れたと思っていたのに。ボソッ」
    ゼン「えっ?」
    アイオ「あの子は…?」
    ゼン「あの後どこかに逃げていったよ。」
    アイオ「そう、なのか…。」


    あれから1週間。
    あの子はゴミ捨て場に来ることはなかった。
    ライトに止められるけど何故か気になっていた。

    アイオ「ゼン、あの子はもうゴミ捨て場には来ていないのか?」
    ゼン「そうみたいだな。」
    アイオ「そっか。」
    ゼン「なぁ、もし見つけたらどうするつもりなんだ?」
    アイオ「えっと、」
    ゼン「もし見つけたとしてもうちにはその子を養う余裕もないし、あんな痩せた体じゃうちでは働けないと思うぞ。」
    アイオ「…そうだよな。」

    ゼン「アイオ、今日も図書館に行くのか?」
    アイオ「まあ、そうだね。」
    ゼン「雨が降ってるのに?」
    アイオ「午後には止みそうだし、大丈夫だよ。」
    ゼン「そうか。気をつけて行ってこいよ。」
    アイオ「あぁ。」

    アイオ(今はさほど降ってないし帰りは止むだろう。)

    図書館に着くといつもの席に座る。
    アイオ(今日は利用客が多いみたいだな。)
    今日も薬学の本、化学の本、そして歴史の本を読む。歴史は魔法と帝国についての本だ。

    少しすると、全身黒ずくめでフードを被った男がこっちにやってきた。
    黒男「いやぁ、今日は人が多いですね。相席いいですか?」
    ライト「そうですね。どうぞ。」
    ライト(どう見ても怪しいな。)
    アイオ(だよな。)

    しかし、その男は変なことは何もせず帰って行った。
    ライト(なんだったんだ?)
    アイオ(ただの利用客だったのかもな。)

    ライト(ん?あいつ、なにか忘れていったみたいだな。)
    アイオ「なんだこれ………?…っ!」
    ライト「クスッ あいつ、なかなかやるじゃないか。」
    それは

    『反魔法団体の幹部の名簿』と『顧客リスト』

    だった。

    『反魔法団体の幹部の名簿』
    ・ ナイン(情報が伏せられている)
    ・ 37番 管理人のボディガードの中で一番強いと言えるだろう。特徴は銀髪。スピード系。名前がない。
    ・レナード 管理人のボディガード。パワー系。
    ・サーシャ ……
    ・クリストフ ……
    ・ヨアヒム ……
    ……
    ……

    『顧客リスト』
    ・ エリック・フォン ギルドの責任者。
    ・ テオ・オスター 大学教授。薬の売買。
    ・ラインハルト・グラヴナー
    ……
    ……
    ……
    ・ アデム・クルーガー 神父?実験材料(モルモット)の提供。
    ……


    アイオ「…アデム……。」

    ライト「今日はいい収穫だったなww」
    アイオ「そうだな。予想もできなかったよ。こんなにも早くピースのひとつが集まるなんて。」
    ライト「これで……!クスッ」
    アイオ「あぁ。」
    ※あの男はクビになりました。

    アイオ(あれっ?)
    ライト(外、土砂降りだな。)
    アイオ ( ˙-˙)
    ライト「仕方ない。このまま帰るしかないな。」
    アイオ「そうだね……。(´・ω・`)」

    アイオは名簿と顧客リストを抱えて土砂降りの雨の中を走る。
    アイオ「はぁ、はぁ。この路地裏を通った方が早いよな。」

    そこは雨のせいで地面がぐちゃぐちゃになっていた。
    ライト「俺、汚れるの嫌いなんだけど。」
    アイオ「しょうがないだろ。あと少しだから我慢してくれ。」
    ライト「チッ」
    アイオ「もうすぐだ。」
    アイオは路地を抜ける手前で見覚えのあるものを見た気がした。
    立ち止まって振り返る。
    そこにはびしょびしょになった布を体に巻いて震えてる白髪の少女がいた。
    あの時の少女だ。


    アイオ「君は…」
    ライト(やめろ。近づくな!)
    アイオはライトの忠告を無視して少女に近づいていく。頭よりも先に体が動いていた。
    少女「だ、だぁれ?」
    声がかすれている。
    少女「…死神さん?」
    近づいてみると少女の顔は赤い。
    アイオ「君、大丈夫?」
    少女「…死神さんなら……ヴォイドを殺して。」
    会話が成り立たない。
    少女は震えた手でアイオの腕を掴む。
    熱い。
    アイオ「熱でもあるのか、?」
    ライト「こんな雨の中、布を巻いてちゃ当然だろ。」
    ライトは無愛想に答える。
    少女「違うの。ヴォイドは、もう生きる意味がないの。かあさんにも…。」
    熱のせいで幻覚を見ているのだろうか。
    少女「死神さん。だから、ヴォイドを殺して!」
    ライト「フフっねぇ君、どうしてそんなに死にたいの?」
    少女「どうして、?」
    ザァーッ(雨の音)
    少女「…えっとね、ヴォイドはいつも…かあさんのために生きてて…ケホケホ。だけど、もういらないって言われて、追い出されたの。だから、」
    ライト「そうか。」
    ライト(この気配は確実に魔女だろう。今のうちに処理しなければ。)
    ライト「ヴォイドって言うのは名前か?」
    少女「…うん。ヴォイド・ドゥフル。」
    ライト「クククッそうだな、お前の願いを叶えてやるよ。」
    ライトは黒いナイフを取り出して、それを振り上げる。
    アイオ「ダメだ」
    ……
    アイオは目を開ける。
    アイオ(血はついてない。)
    アイオ「はぁ、はぁ。間に合った、?」
    ナイフは少女のギリギリ手前のところで止まっていた。
    少女は気絶しているようだった。
    ライト「何をする。」
    アイオ「それはこっちのセリフだ!」
    ライト「あ?」
    アイオ「どうしてこんなことを…」
    ライト「頼まれたからだ。こいつの願いを叶えてやろうとしたんだ。偉いだろ?」
    アイオ「この子を殺したら、やってることが反魔と同じになるだろ…」
    ライト「は?クズ共と同じにするなよ。俺はこいつを助けてやったんだ。」
    アイオ「結果的には変わらないじゃないか。」
    ライト「…」
    アイオ「おい!聞いてるのか?」
    その後、ライトの返事は無かった。
    そんなことより、早くこの子を暖かいところに連れていかなければ。
    アイオはこの子を抱きかかえて走り出す。

    ガチャ
    ゼン「おかえり、土砂降りだっただr……。」
    母親「おかえりなさい。心配してたのよ?」
    父親「おかえり。大丈夫だったか?」
    ゼンの両親もアイオが遅かったから心配してくれていたらしい。
    ゼン「お前!なんでこの子が!」
    アイオ「…道端で倒れていたんだ。」
    ゼン「だからって…!」
    アイオ(ゼンのこの反応は魔女への拒絶反応だろうな。)
    母親「アイオくん、この子は誰?」(困惑)
    アイオ「えっと…」
    父親「風邪をひいちゃうし中に入って話そうか。」
    母親「…そうね。」

    母親「アイオくん。まずは着替えて来なさい。この子は私が見ておくわ。この後、この子についてきちんと説明してちゃうだい。」
    アイオ「…はい。」

    アイオは自室へと向かう。
    着替えようとすると
    バサッ
    何かが落ちる音がした。
    アイオ「あぁ。あの時のリスト、」
    雨でびしょ濡れになっているかと思っていたが、とても大事なものだったのだろう、撥水加工がされていた。
    ライトだったらこんな大事なものを忘れていくなんて馬鹿なのか?とか言いそうだなと思いつつ、着替えた。

    アイオが戻ると、少女はうつむいて座っていた。
    そして少しぶかぶかの服を着せられ、髪も乾かしてもらっていた。
    母親「…ゼン。この子は熱があるみたい。ゼンの隣の部屋で寝かせてちょうだい。」
    ゼン「っ!なんで俺が!」
    母親「アイオくんと大事な話をしなければならないの。お願いよ。」
    ゼン「…かったよ。」

    ゼンは少女を抱えて部屋に連れていく。

    母親「アイオくん、どうしてあの子を連れてきたの?」
    アイオ「道端で倒れていたんです。だから…」
    母親「そう。でもだからって急に連れてきてはどうしようもできないわ。せめて相談はしてちょうだい。」
    アイオ「…ごめんなさい。」
    母親「うん。それで、この子は誰?」
    アイオ「えっと、名前はヴォイド・ドゥフルだそうです。」
    父親「ドゥフル…どこかで聞いたことがあるな、。」
    母親「知ってるわ。あの人表向きはとてもいい人なんだけど、あの家に毎晩違う人が入って行ったっていう噂や奇声が聞こえるなんかの噂を聞いたことが…」
    母親「周りの住人は怖くて立ち寄れないって言ってたわ。」
    父親「じゃあ、あの家の娘さんってことだよな。」
    母親「そうね。アイオくん、他に知ってることはあるの?」
    アイオ「母親にもういらないと言われたと。」
    父親「そうか。それは躾のためなのか、捨てるという意味なのか…。わからないな。」
    母親「うん。でも私はあの子を返さない方がいいと思うわ。」
    父親「どうしてだい?」
    母親「服で見えなかったんだけど、体を拭いていた時に体中の痣を見てしまったの。」
    父親「本当か!?」
    母親「うん。多分あの子は虐待されてると思うわ。」
    父親「そうか。」
    母親「他になにか知ってる?」
    アイオ「えっと…その…」
    父親「なんだい?」
    アイオ「…魔女だと思うんです。」
    ゼンの両親は驚き、困った顔をした。
    父親「魔女、かぁ。」
    母親「反魔法団体は魔女を探し回っているわ。あの子をかくまっていれは私達も殺されてしまうかもしれない…。」
    アイオ「…」
    父親「すまない。アイオくん。私たちはあの子を助けられないかもしれない。」
    アイオ(もう大切な人を反魔に殺されるようなことはしたくない。僕の家族のように。)
    アイオ「僕は魔女を助けてくれる所を知っています。」
    アイオ「だから、雨が止むまでここに置かせてください。」

    沈黙

    父親「それだけなら、」
    母親「…わかったわ。」
    父親「うん。」


    それからゼンの母親が少女に暖かいご飯を作ってくれた。
    母親「これをあの子に持って行ってくれるかしら。」
    アイオ「はい。」

    コンコン ガチャ
    少女「…。」
    少女は壁を睨んでいた。
    少女「…どうしてヴォイドを殺さなかったの?死神さん。」
    アイオ「…えっと、」
    少女「……もう生きている意味が分からないの。どうしたらいいの?」
    少女の瞳から宝石のような大粒の涙がこぼれていく。

    沈黙

    アイオ「それじゃあ君は死んだということにしよう。」
    少女「…え?」
    アイオ「母親のために生きた『ヴォイド・ドゥフル』は死んだ。だから新しい君として生きるんだよ。」
    少女「新しい? グスッ」
    アイオ「そうだな……たとえば名前を変えて『ヴァイン』とか?これは適当に考えただけだからもっとちゃんとした名前を」
    少女「ううん。『ヴァイン』……いいね。」
    アイオ「そうか、?」
    ヴァイン「うん。でも、ヴォイドには生きる意味がないから……」
    アイオ「『ヴァイン』はまず何をしたいのかを見つけるところから始めればいいんじゃないかな。」
    ヴァイン「何を、したいか…?」
    アイオ「あぁ。世界は広いから君の知らないことがたくさんあるんだ。その中から1つだけでも興味を持ってみればいい。」

    アイオ「まぁ、まずはこれを食べて風邪を治すんだ。」
    ヴァイン「……うん。」
    アイオ「俺は2つ隣の部屋にいるからなにかあったら教えてくれ。」

    パタン

    ゼン「あっ、アイオか。……夕飯出来たってよ。」(気まずそうに)
    アイオ「わかった。ありがとう。」

    夕飯をとって自室に戻る。

    ガチャ
    アイオ「ふぅ。」
    アイオ(生きる意味か。)
    ライト「クフフ。あんなガキが生きる意味を考えるとは……クスッ」
    アイオ「ライト?今までどこにいたんだ?」
    ライト「記憶の整理をしていただけだ。」
    アイオ「…そうか。」
    ライト「それよりも、これからどうするつもりだ?」
    アイオ「まずはあの子を教会に連れていく。アデムは魔女なら拒まないだろうから。」
    ライト「そうだな。それと、」
    ライト「復讐。忘れてないだろうな。」
    アイオ「…もちろんだよ。」
    ライト「このリストからだいたいの情報は手に入れたからあとは魔女をどうするかだな。」


    雨は朝日が昇ると同時に止んだ。

    いつも通り支度をする。
    アイオ(今日は白衣も用意しよう。)
    ライト「白衣か。懐かしいな。」
    アイオ「…そうだな。」

    そうこうしてると朝食だと呼ばれる。
    ダイニングに行くとゼンの両親が不安そうにしていた。
    母親「あの子は大丈夫なの?」
    アイオ「大丈夫ですよ。」
    父親「本当に安全なところに連れていくんだよな。」
    ライト「信じてくださいよ。^^」
    父親「、、疑うのもよくないな。」
    母親「そうね。」
    アイオ「それと…」
    父親「なんだい?」
    アイオ「俺、そこで働くことになるかもしれません。」
    ゼン「お前が、?」
    ゼンはちょうどダイニングに来たようだ。
    アイオ「うん。」
    ライト「元々は俺、そこで働いていたんですよ。」
    アイオ「でも色々あって、」
    ゼン「そうだったのか。」
    母親「アイオくんの過去を詮索するつもりはないけど、そこは安全な場所なのよね?」
    アイオ「…はい。」
    父親「わかった。でもそれはまだ決まった話じゃないんだな。」
    ライト「そうですね。」
    母親「ちゃんと決まったら教えてちょうだい。」
    母親「ここにずっといてもいいんだから。」ボソッ

    朝食が終わると、少女に食事を運んでいく。

    ガチャ
    ヴァイン「んんっ」
    アイオ「おはよう。」
    アイオ「熱は……下がったみたいだな。」
    ヴァイン「…」
    アイオ「これを食べ終わったら君を教会に連れていく。」
    ヴァイン「教会?」
    ライト「あぁ。神様が魔女を守ってくれるんじゃないか?」(イタズラな顔をする)
    ヴァイン「…もう蹴られたり殴られたりお腹を空かせたりしない?」
    アイオ「もちろん。」
    …………
    ……

    アイオ「いってきます。」
    準備が終わり、少女と教会に向かう。

    ヴァイン「ねぇ、どうして死神さんはヴォイドを助けてくれたの?」
    アイオ「うーん、……俺の『エゴ』だったのかもしれないな。」
    ヴァイン「えご?」
    アイオ「あぁ。『もう俺の目の前で人が死んで欲しくない』と思ったんだ。」
    ヴァイン「?」
    アイオ「それと、君はもうヴァインだろ?」
    ヴァイン「あっ、そうだった。」
    アイオ「そういえば、いつから俺は死神になったんだ?」
    ヴァイン「?」
    ヴァイン「おれって、なに?」
    アイオ「えーっと、自分のことを指す言葉だよ。」
    ヴァイン「そうなんだ。名前よりも俺って言う方が楽だな。」
    少女は少し目をキラキラさせる。
    アイオ「……そうだね(?)」
    ヴァイン「んーとね、気がついたら目の前に死神がいた気がしたの。」
    アイオ(やっぱり、熱で意識が朦朧としていたんだろうな。)
    アイオ「そうだったんだ。でも俺は死神じゃないよ。」
    ヴァイン「そうなのか!?Σ( ˙꒳​˙ )」
    アイオ「うん。」
    ヴァイン「じゃあ、あなたはだぁr…」
    アイオ「あぁ、着いたな。」

    教会の門をくぐり中に入っていく。
    アイオ「ここの責任者はいますか?少し用があって。」
    職員「はい。少々お待ち下さい。」
    職員は誰かと連絡を取り、応接室へと案内をする。
    歩いている途中、赤髪の男がこちらへと歩いてくる。
    アデム「アi……エゴ、なのか?」
    アイオ「あぁ、アデム。久しぶり。」
    アデム「大きくなったね。」
    アイオ「まあね。」
    アデム「それより、どうしてここに?エゴはもう僕と関わることは無いと思っていたのに。」
    アイオ「実は…」
    アイオはヴァインの方に目を向ける。
    ヴァイン「?」
    すると、アデムは右手のコンパスを見て納得したような顔をする。
    ライト(あれはなんだ?)
    アデム「よく連れてきてくれたね。この子は僕が預かるよ。」
    アイオ「助かる。」
    アデムは職員に指示をして、その職員はヴァインを連れていく。
    アデム「いやぁ。本当に久しぶりだね。そうだ、一緒にお茶でもどうだい?」
    アイオ「(少し考えてから)いいね。」
    アデムはアイオを応接室へと案内する。
    アデム「最近美味しいお茶が入ってね。」
    アイオ「そうなのか。」
    2人が席につくとアデムはさっきと打って変わって深刻そうな顔をしていた。
    アデム「アイオ、あの時は本当にすまなかった。」
    アイオ「…うん。」
    アデム「今はもうあんなことを起こさないように薬の勉強をしているんだ。」
    アデム「あの時僕は、薬はいいものだと思っていたんだ。だけど……」
    アデム「薬は毒にもなりうるんだね…。」
    ライト「そうだ。わかってくれて嬉しいよ。」
    アイオ「そういえば最近の調子はどう?上手くいってるのか?」
    アデム「うーん。まあまあかな。まだ問題点とか勉強不足の所もあって、アイオが戻ってきてk…」
    アデムはハッとして急に口を噤む。
    アデム「ううん。なんでもないよ。…大丈夫さ。」
    ライト「そうか?何かあったら言ってくれよ?この『アイオ』が手を貸してやるからさ。^^」
    アイオ()
    ………
    アデム「ぷっ。はははっ。」
    アイオを少しムッとする。
    アデム「悪い悪い、君がそんなことを言うとは思わなくてね。しかもそんな口調で。」

    アデム「…ありがとう、少しその言葉に甘えてもいいかな。」
    ライト「あぁ。」
    アイオ(お前!そんな勝手に…!)
    ライト(まぁ頑張れよ『アイオ』。俺の名前は『ライト』だからな。)
    アイオ(そんな…)
    ライト(これで楽に反魔を監視出来るんだ。我慢してくれよ。)
    アイオ(はぁ。)
    アデム「アイオ。僕が君に辛い思いをさせたのは分かっている。だけど……また、ここに戻ってきてくれないかな。」
    アデムは少し困ったようにそして真剣にアイオを見つめる。
    アイオ(正直、もうここに戻ってきたくはない。でも俺らには目的がある。そして過去を後悔していてもどうにもできないってわかったんだ。だから…)
    アイオ「…わかった。いいよ。」
    アデム「…よかったぁ。」
    アデムは気の抜けた返事をする。
    アデム「実は急に君が来たという知らせを聞いてとても緊張していたんだ。…あんなことがあったからね。」

    アデム「それじゃあ、仕事の話をしようか。」
    アデム「さっきの子の情報をここに書いて欲しいんだ。厳重に管理するから心配はいらないよ。」

    アデム「それと、君には僕の補佐をしてもらいたいんだ。アイオなら信頼できるし僕の仕事をわかってくれると思うから。」
    アイオ「わかった。」
    アデム「ありがとう。」
    アデム「じゃあ1週間後にここに来てもらってもいいかい?」
    アイオ「あぁ。」


    そして数十分後、家に帰ってくる。
    ゼンの両親にきちんと説明をして納得してもらう事が出来た。
    ゼン「やっぱりここを辞めるのかよ。」
    アイオ「うん。」
    ゼン「……かった。」
    アイオ「え?」
    ゼン「自分勝手なこと言って悪かったよ。」
    アイオ「ううん。当然の反応だと思うし気にしてないよ。」
    ゼン「そうか。」
    ライト「それより、いつもの自信たっぷりのゼンはどこに行ったんだ?w」
    ゼン「…ははっ。そうだな。そうだよな!」

    ゼン「そうだ!今日は俺がプリンを作ってやるよ!」
    ライト「おっ!いいねぇ。」

    1週間後

    ゼン「本当に行くんだな。」
    アイオ「うん。今までありがとうございました。」
    母親「いつでも帰ってきていいからね。」
    父親「元気でな。無理をしちゃダメだよ。」
    アイオ「はい。わかってます。」
    ゼン「またな!」

    アイオは覚悟を決めて教会の門をくぐる。
    ライト「やっとここまで戻ってきたんだ。」
    アイオ「だから……」
    アイオ・ライト「子供たちを」「あいつらに」
    アイオ・ライト「守るんだ。」「復讐してやるんだ。」
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works