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    1_raru3

    ブレワシリーズ書いてます。
    感想はマシュマロに。貰えたら私がめちゃくちゃ喜びます。→ https://marshmallow-qa.com/1_raru3

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    1_raru3

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    セカイ(?)で小さな類と出逢う司の話。
    ショタ類祈願小説。いつもの如くブレワ世界線注意。
    ショタ類の性格・言動捏造しています注意

    いつか星と出逢う君へ、優しい想いを ふと、司は目を覚ました。確か自分はセカイで昼寝をしてしまったはず。司はあたりを見回した。
    (ここは…?セカイ…のようだがなんだか違う感じもする…夢か?)
     セカイのようだが、明かりが少ない。寂しさを感じるセカイの中、司は小さな灯りを見つけた。
    「あれは…?」
    (あそこにヒントがあるかもしれない。行ってみるか)
     司がその灯りの方へと向かうと、その下には、小さな人影があった。小学生くらいの背丈。ライムグリーンのTシャツ。そして、見間違うことがないであろう、すこしはねた藤色の髪。“幼い神代類”のような少年がそこに立っていた。
    (小さい類…だと!?どうしてここに…いや、ここに現れるということは何か意味があるものの筈だ。声をかけてみるか…)
     司はそっと少年に近づき、そっとしゃがんで声をかけた。
    「こんばんは、少年!このような夜更けにどうしたんだ?」
    「わっ!えっと、こんばんは…?ショーのお兄さん、ここはどこでしょうか?寝ていたはず…なんですけど、いつの間にかここにいて…」
     後ろの方からかけられた声に少年はびっくりして飛び上がりながら振り向いた。知らない青年に声をかけられたからか、少しびくつきながらも質問に答えた。司は少年に「ショーのお兄さん」と呼ばれたことで改めて自分の服装を確認した。彼の服装はいつものステージ衣装へと変わっていた。自分の「やるべきこと」を理解し、改めて司は少年と向き合う。
    「ここはワンダーランド!ショーと不思議と笑顔で溢れる夢のような“世界”!…まぁいまはオレ以外の仲間達は休んでいるらしいがな。オレが案内してやるぞ!…ところで少年、名前を教えてくれるだろうか?いつまでも少年だと味気ないだろう」
     ショーという言葉を聞いた少年は目を煌めかせる。食い気味に司の質問へと答えた。
    「僕、神代類っていいます!…あの、僕お兄さんのショーが見たいです!あと、お兄さんのお名前は…?」
    「しまった、この未来のスターとしたことが名前を伝えるのを忘れてしまっていた!すまないな。オレは、天翔けるペガサスと書き天馬、世界を司ると書き司!その名も、天馬司!いずれスターとなる男!気軽に司と呼んでくれて構わないぞ。さて類、ショーテントへと向かうか。そこでショーを見せてやろう!」
    「司さん…!はい!」
     明かりの付いているいつもの大きなショーテントへと、司は類と手を繋いで歩く。歩く道すがら、司は類の事を聞いていた。寧々と観た人魚姫のショーのこと、興味の湧いた演出のこと、頑張って考えたはじめての演出のこと。本人から聞いたこともなかった類の始まりの話に、司は胸を躍らせながら聞いていた。
    (まさか類の昔話が聞けるなんてな…ここが夢なのかセカイなのかはわからないがこの状況には感謝せねば。そしてショーキャストとして求められている以上、この類をショーキャストとして笑顔にせねばな!)
     そうこうしているうちにテントへと到着する。幼い類を客席で待たせ、舞台裏へと回ったところでどうすべきかと悩んでいた。すると、悩む司の後ろから、赤と青緑の少女が飛びついてきた。
    「司く〜ん!なに悩んでいるの〜?」
    「うぉっ!?ミクか!それに…カイト達まで。いたのか」
     司はミクに飛びつかれながら後ろを振り返る。すると、KAITOやリン、ルカが立っていた。その側にはセカイに存在するネネロボに似た歌う機械がちょこんと立っていた。
    「君と幼い類くんが現れた頃から僕達4人は目が覚めていたんだけどね。何故かこのテントから出る事ができなかったんだ」
    「そうそうっ!せっかく司くん達をお出迎えしたかったのになぁ〜っ!」
    「そうだったのか。実はあの類に観せる演目で悩んでいてな…あ。」
    (オレと、ミクと、カイト。それに、女性が2人とネネロボ似の機械。そして観客は類…そうしろ、ということなのか)
     司は舞台裏に集まった4人と1体、そして舞台袖なら見える観客席の幼い少年を見て、一つの演目を思い浮かべる。
    「あらぁ?司くん、どうしたのかしらぁ?」
    「いや、演目は今決まった!4人とも…あとお前にも協力して欲しいのだが…いいだろうか?」
    「もっちろんだよ〜!ちっちゃい類くんをキラキラ〜!ってしようね!」
    「もちろん。僕達はその為に目覚めたのだろうしね」
     全員が二つ返事で了承し、打ち合わせを始めた。
     そして、始まりのブザーが鳴る。

    「あるところに、ヘンテコな旅の一座がいました〜♪」
     司が選んだ演目は、類をワンダーランズ×ショウタイムへと呼び戻す為に上演し、類の誕生日にはその続きも演じた旅の一座と錬金術師の演目。えむ演じる道化役者はリンが、寧々演じる歌姫はルカが代役し、幼い類を笑顔にするために全力で演じた。
    「うわぁ…!」
     類の瞳はさらに輝いていく。演目が終わる頃には、満面の笑みで拍手を送っていた。
    「ありがとうございました!…類、楽しかったか?」
    「うん、すっごく楽しかった!」
     司は挨拶を終えると観客席へと降りてきた。類も席から降りて司へと近づいてきた。
    「さて、幼き演出家類よ。演出をやってみたいと思ってもらえただろうか?」
    「あ…えっと…」
     類は少し遠慮げに司と壇上のバーチャルシンガー達を見つめる。まだ幼く未熟な自分の意見を聞いてくれるのか、と戸惑っている様子であった。
    「遠慮しなくても構わないぞ。いずれ天才演出家になるかもしれない少年の意見を、オレは聞いてみたいのだ」
     さりげなく未来を織り交ぜながら笑顔で話しかける。類はさらに目を輝かせながら口を開けた。
    「えっと、それならね…」

     ドォン!

     類が話そうとした矢先に、天井から轟音が鳴り響く。
    「うわっ!」
    「なんだ!?」
     幼い類を背に隠しながら、司は天井を見上げた。すると、次の轟音と共に天井が崩壊し黒い怪物…汚れのカケラが落ちてきた。
    「何故此処に!っ、カイト、みんな!応戦するぞ、類を守る!」
     旗槍を出現させ、穂先をカケラへと向けた。が、KAITO達からは予想外の返答が返ってきた。
    「っ、すまない司くん!僕達はなぜか武器が出ない!君1人で戦わなくてはならない、大丈夫!?」
     司は驚愕に目を見開くが、それも一瞬であった。類を壇上のミク達の元に走らせ、にやりと笑いながら改めてカケラへと向き合った。
    「何を心配しているんだ、カイト!オレは大丈夫だ!カイト達は類を守ってくれ。…オレは、守るべきものを守るために動けるのであれば、無敵だ!それに今回は1体1。あの時のようなヘマはしないぞ」
    「…わかった。でも、本当に無理はしないでね」
    「司さん…」
    類はKAITOの服の裾を掴みながらも、司達の方を見ていた。
    (カイト達は戦えない、ぬいぐるみ達を呼び出せるかどうかもわからない…真の意味で1体1で戦わなければならないということか。何としても、此処にいるみんなを守ってみせる)
    「オレは、類達を守る!さっさとかかってこい!」
     その声と同時にカケラは司へと襲いかかった。一手目を司はひょいと避け、槍の一発を叩き込む。が、カケラは自らが落ちてきた時にできた瓦礫を司に向かって飛ばした。猛スピードで飛んできたそれは司の頬を掠める。つ、と頬から微かに血が流れた。
    「司さん!」
     思わず類は叫んだ。が、司はそんな類と視線を合わせると、優しい笑みで微笑む。
    「このくらい大丈夫だ、類。怪我のうちにも入らない。…さて、このスターの顔に傷を負わせるとはな。だがこれ以上の傷を負わせられるとは思うなよ」
     司の瞳に本気の光が宿る。そこから激しい剣線とカケラの攻撃の撃ち合いが続いた。その戦いもすぐに終わった。司の槍はカケラの胸を貫いた。どろりと、カケラは溶けて消えていく。
    「…オレ達の大切な演出家の演出案を、邪魔した罪だ」
     宣言通り、司にはあの傷以外何も怪我はしなかった。類は壇上から飛び降りて、司の下に駆け寄ってきた。
    「司さん!…大丈夫ですか?」
    「あぁ、大丈夫だ。類が無事でよかった」
    「全然よくないです!…ちょっとじっとしていてください」
     類はポケットから何かを取り出し、司の頬へと貼り付けた。KAITO達は微笑ましそうに見ていた。
    「類、何をしたんだ?オレからはみえないぞ!」
    「司くん、はいこれ。見てみてあげて」
     司の頬には、水色の可愛らしい絆創膏が貼られていた。
    「これは…?」
    「怪我、していたので。守ってくれてありがとうございました!…それに、さっきの言葉。僕の演出を大切にしてくれて、ありがとうございました」
     すると、天井に空いた穴から見える夜空が、明るくなってきた。
    「空が…!時間かな、もう“君”達は会えないかもしれない。何か話したいことはあるかな?」
     KAITOの言葉に、2人はハッとする。先に、不安げに類が口を開いた。
    「司さん、ありがとうございました。ショーもとても楽しかったです。本当に、もう2度と僕達は会えないのでしょうか…?」
     その類の言葉に、司はにやりとして返答する。
    「さぁ、どうだろうな?だが、お前がその演出家の夢を諦めなければ、此処ではないどこかで逢えるかもしれない。オレはスターになる男だからな!だから類、演出家として辛いことも、やめたいと思うかもしれないが、諦めないで続けて欲しい。誰かと関わる楽しさを忘れないでくれ。では、また逢おう!」
     司の話を聞き、類は小さくはい、と返した。まず、類の意識が遠のいていく。瞼が下りていき、眠ってしまった。それを観た司も、急速に意識が遠のいていく。なんとか幼き日の類を目に焼き付けようと見つめながらも、司の瞼も閉じていった。
    (なぁ類。いつかお前はオレと出逢う。オレはその出逢いを手放したくはない。だからお前も、その光を手放さないでくれ)

    「…くん。」
    (…ん)
    「…かさくん、司くん、起きて!」
     ぐらぐらと揺らされる衝撃に、司の意思が浮上していく。目を覚ますと、司はセカイのベンチに座っており、心配そうないつもの類の顔が目に入った。
    「ん、類…?おはよう?今何時だ?」
    「目覚めてくれてよかったよ、司くん。おはよう、いまは午後3時だよ」
    「うぉっ!?昼過ぎに眠ってしまったと思うから、3時間も眠っていたというのか…?」
    「フフ。今日が休日で練習も休みでよかったねぇ」
     いつものように会話していると、類の調子も戻ってきたらしい。いつもの掴みどころのない笑顔で笑っていた。
    (…あれは、夢だったのか?)
     夢にしてははっきりと記憶に残っているあの風景を思い出す。夜闇に沈んだセカイ、幼い類、バーチャルシンガー達と行ったあの舞台の再演。そして、最後に類に贈った言葉。すぐに忘れられるものではないだろう。
    「おや?これはなんだい?」
     そう言いながら類は司の頬を触る。
    「すまないが類、鏡を持っていないか?オレからでは確認できない」
    「持っているよ。…はい、これ見て」
     司は類が触った部分を覗き込む。その頬には、あの幼い類が貼った水色の絆創膏が貼られていた。
    (夢では、なかったのか…)
     司はその絆創膏を触れながら、優しい笑みを浮かべた。
    「なぁ類。オレは本当に、お前に出逢えてよかったと思っているぞ。改めて、出逢ってくれて本当にありがとう」
    「急にどうしたんだい、改まって。…僕も、司くんに出逢えてよかったと思っているよ。僕からも、本当にありがとう」
    「なんだか、急に言いたくなったんだ。…さて、オレを起こしに来たということはショーの打ち合わせか?付き合うぞ」
    「フフ、そうこなくてはね。次のショーの演出案を考えたから、カイトさん達を交えて会議をしようか!」
     ベンチから立ち上がり、ショーテントへと向かう。ベンチの下。司が座っていた部分の足元には、小さな紫色の欠片がきらりと光っていた。
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