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    shiipineapple

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    shiipineapple

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    暇があれば描きたいなと思ってる冥府三兄弟過去漫画のプロットを小説チックに…と思たら大変なことになった
    普段小説書かないマンが書いた文なので乱文誤字脱字ご容赦ください
    方言も知らず内に出てるかもしれないけどスルースキル発揮してください
    小説のルールも知りまへん
    まとめる才がまったくない!語彙力もない!

    昼下がりの兄弟時の概念が希薄なここ冥府にも、杳杳(ヨウヨウ)たる昼が訪れる。

    僅かばかりの温もりに、天上にあるという陽光を感じながら、デスハーは弟のデスパーと共に広い中庭を歩いていた。弟の中身のない軽口を適当にいなしながら暫く歩くと、背の低い雑木林に探していたもう1人の弟の、小さく丸い背中が見えてきた。

    どうやらしゃがみ込んで地面を熱心に眺めているようだった。横で1人賑やかにしてるデスパーやかつての自分も、ああやっていつまでも時間を潰していた事を思い出す。ああ自分の弟達だなあと昼下がりの安穏とした空気に似つかわしい感慨を抱いたデスハーは、きっと蟻を見ていただの、草をむしってただのと返ってくるのだろう問いを掛けようと、小さな弟、オウケンの背後に立った。


    「何を…している…」

    デスハーは、声をかけられる前に背後の気配で振り返ったオウケンより、その後ろの光景に意識を向けざるを得なかった。デスパーが小さく「わ」と言って静かになる。オウケンは兄達を見て嬉しそうに笑っていた。

    「あにじゃ!デスパーにぃ!」

    オウケンの足元には夥(オビタダ)しい数の虫の死骸があった。どれも胴が引きちぎられていたり、すり潰されていたりと、酷(ムゴ)い殺され方をしていたのだ。

    いつものように抱き着いてこようとしたオウケンを、デスハーは再び問うて制した。

    「それは、なんだ、オウケン」
    いつもとは違う声音に戸惑いながら、長兄の指差す方向を見やって、オウケンは素直に答える。
    「むしです」
    ぐわっと臓腑を掴み上げられるような感覚に堪えながら、もう一度確かめた。
    「虫が、どうして、そのような事になっていると聞いているんだ。お前がしたのか、オウケン」
    何やら兄の気に食わぬことをしたらしいと勘づいたオウケンは軽く首肯し、ごめんなさいと呟いた。
    「それは何に対するごめんなさいだ。」
    優しいはずの兄の冷たく厳しい物言いに、次第にオウケンの視界は歪み始める。
    「ひとりで…かってに…むしであそんでたから…」
    デスハーが大きく息を吸い込み、その特徴的な鋭い歯が露わになろうとしたタイミングで、すかさずデスパーが割り入った。
    「私も!小さい頃よく虫をいじめてましたよ!水溜まりに落としたり、蜘蛛の巣に投げ入れたり!兄者にこっ酷く叱られましたっけ」
    なはは、とデスパーは不安げな弟に笑いかけ、空気を壊しにかかる。デスハーから、自分のときより数段上の怒気を感じたのだ。デスパーにとっては弟の所業より、普段行儀の良い末弟を少し甘やかし気味に可愛がっている兄の激昂の方が、余程恐ろしく思えた。

    「これはよく言い聞かせておかんとならん!!!」
    「でもまだオウケンは」
    「黙れデスパー!!」
    普段穏やかな長兄の怒号に、弟2人は萎縮し、思わず息を潜めて体を硬くした。そんな2人に構った様子はないが、先程とは打って変わって努めて冷静な態度でデスハーは語りかけた。
    「オウケン、オレが言っているのは、どうして虫をこのように酷(ムゴ)い殺し方をしたのか、という事だ。答えられるか」
    ポロポロと涙粒を溢しながら、でも…とオウケンは呟いた。
    「ちちうえも…やっています…」
    その返答で、少し予感がしていたデスハーは嫌な答え合わせに眉根を寄せた。冥府の昼もいつの間にか過ぎただろうか、一抹の温もりなど消え失せ、夜の寒さより一層鋭さを増した冷気が、肌を撫ぜ肺をヒクつかせた。

    三兄弟の父王であるサトゥンは、冥府を統べる王でありながら、私欲のために多くの国民を犠牲にし、残虐の限りを尽くしていた。力での圧政に耐えかね民が蜂起した事もあったが、神である王に敵うはずもなく、今では活力を失い、日々戦戦慄慄(センセンリツリツ)としていた。そんな非情とも言える父王が唯一愛情を注いでいたのがこの末弟、オウケンであった。オウケンは紛れもなく彼らの血の繋がった弟であるが、父王の寵愛により、母の愛を受け育った兄2人とは違って父王の影響を色濃く受けているのだろう事は、兼ねてよりデスハーの懸念であったのだ。

    「いいか、オウケン。父上のやっている事は、許されざる非道な行いだ。やってはいけない事だ。いたずらに命を殺める事は、絶対あってはならん事なのだ。お前も転んで怪我した時は痛いだろう。その虫のようにされたなら、比べられない程痛いだろうな。そして、オレやデスパーなど、お前以外の人間も、同じ痛みを持つ命だ。その虫だって同じ命だ。お前がやった事が、どんな事か分かったか?」
    「ごめんなざい…」
    オウケンは顔面を涙と鼻水ででろでろになりながらもう一度謝罪した。そして酷く絶望した面持ちで、まだ何か続けようとじぃとこちらを見つめてきたので、デスハーは言葉を待ってみたが、暫くしても何も言い出さず、そのまま重ねた。

    「では、その虫をどうしようか」 
    まだ幼い弟に容赦なく畳み掛ける兄に憤りと薄ら寒さを感じながら、しかしデスパーは静観を決め込むことにした。

    再び投げられた問題に、オウケンは酷く緊張し、持ちうる記憶の中から解決策を絞り出す。
    「もやします!」
    「それは何故だ?」
    「かたづけるためです」
    「ダメだ」
    「…!!」
    また間違えてしまった。オウケンの絶望はいよいよ極まっていた。この虫をどうすればいいのか分からない。既に死に、草むらに返すことも出来ないというのに。オウケンの選択肢には、虫にしてやれる事などそれ以上無かった。

    鼻水でぐじゅぐじゅになった鼻ではまともに息も吸えず、ひぐえぐとえずきながら小さな口を必死に動かしている。非力な手で服の胸元を握り込み、瞳から絶えず滴(シズク)を落とすオウケンを見かねて、デスパーは助け舟を出そうと口を開いた。

    「オウケ《デスパー》
    それをデスハーは妨害する。囁き声であったが、長兄と次兄のみ使えるテレパシー能力によるメッセージだったため、脳への直接的な衝撃で反射的にデスパーは口をつぐんだ。兄を仰ぎ見睨みつけるが、デスハーは硬い表情を崩さないまま、オウケンの次の返答を待っている。オウケンは別の答えが見つからないのか、俯いたままだ。

    「オウケン、その虫達のお墓を作ってあげましょう」
    「おい!」
    デスハーに制され、暫し大人しくしていたデスパーだったが、やはり弟に手を差し伸べずにはいられなかった。間に割り入り、オウケンのびちょびちょの頬を拭うように軽く撫でてやる。いつもは溌剌にキラキラと輝く大きな黒曜石様の目が、その輝きを揺蕩わせて見上げてくる。不満そうな声が後ろから上がったが、やはり叱責は本意ではなかったのか、あっさりと引き下がった。

    「あなたがこの様にしてしまった命はもう生き返ることはありません。だから、せめてもの償いとして、お墓を作り、彼らの魂の責任を負うのです」
    きっと幼い弟は、言葉の意味をちゃんと理解していないだろう、しかしその時はいずれ来ればいいのである。今は己の行った事が良くない事であったと分かればいいのだ。

    「異国には、故人を燃やして魂を弔う風習もあるみたいですよ。だから、あなたが最初に言っていた案も、あながち間違いではなかった。ただそこに命を大切に思う気持ちがあったかどうかが問題で…。片付ける、はちょっと冷たかったですかね」
    共に並んで地面に穴を掘りながら、デスパーはオウケンに優しく諭してやる。冥府の硬い地盤を素手で掘るには、些か骨の折れる作業であったが、弟が正しい心を知るために必要な事ならば、掌がいくら傷だらけになろうともデスパーにとっては些事であった。オウケンはというと、泣き止みはしたものの、顔色は終始どんよりと曇ったままだった。先程のデスパーの語りかけなど実際聞こえてはいなかったかもしれない。それも無理もない。オウケンにとってデスハーは特別だった。優しく、強く、かっこいい、まさに理想の存在であったのだ。だのにそのデスハーから厳しく叱責を受けてしまった。今まで激昂などされた事がなかったオウケンにとっては、余程堪えたことだろう。

    死骸を埋め終わり、小石を墓石に見立てて手を合わせ、殺めた魂の冥福を祈った。一連の流れを後ろで静かに見守っていたデスハーは、最後に…とオウケンを見据える。
    「この様な事はしてはならないと分かったか?」
    「はい」
    「もうしないな?」
    「はい、ごめんなさい」
    「今回のことは、しっかり心に留めておくんだぞ」
    「はい!」
    デスハーの表情は既にいつも通りに戻っており、やれやれ、これでこの小さな事件は幕を閉じたなとデスパーは一安心した。

    だが、オウケンにとっては、そうではなかった。

    いつまでも青ざめた表情で俯いているオウケンに対し、デスハーは本当にもう怒っていないと示すために跪き、両手を広げて「来い」と優しく呼ぶ。しかしながら、オウケンはその場から微動だにしなかった。あんなに兄者のハグが大好きなのに…とデスパーは驚愕し、デスハーに至っては、教育のためとはいえ、この歳の子に対してはやりすぎだっただろうかと今更ながらの後悔と罪悪感で、じくじくと胃の腑を責め立てられていた。

    元々聞き分けの良い子だ。もしや必要以上に叱責を受け取ったかもしれない。

    この弟を今すぐ抱きしめてやらねば。

    兄2人の思考はテレパシーを介さず合致し、そして奇しくも同時に末弟へと一歩歩み寄ろうとした瞬間に、オウケンがポツリと溢した。


    「きらいにならないでください…」

    オウケンの足元の地面に、パタパタとシミが広がってゆく。

    「ぼく…ぼくのこと…きらいならないで…
    もうダメなことしません…いいこにします…
    ぼくは…あにじゃと、ですぱーにぃの、いいこがいいです…」
    嗚咽で詰まりながらのオウケンの嘆願は、実にいたい気で、切実であった。歩みを止めオウケンの願いを聞いた2人は、横にいたデスパーが先に、僅かに遅れてデスハーが次兄もまとめて今度こそ、泣きじゃくる末弟を力強く抱きしめてやった。
    「嫌いになどなるものか!怒鳴って悪かった、オウケン。例えこの先同じような事があったとしてもお前を嫌いになることなど万が一にもない!」
    「私もですよ!あなたが良い子でなくたって、変わらずあなたは大事な弟です!」
    ぎゅうぎゅうと目一杯愛しい弟を包み込む。団子の中心にいる弟はわーんわーんと憚らず声を上げて泣いた。

    デスパーは、弟の孤独を改めて垣間見た気がした。末弟、オウケンの世界はほぼ、父親と兄2人のみの非情に狭小で閉ざされたものだった。父サトゥンはオウケンに目をかけ愛を注いでいるのだろうが、今日の出来事から察するに、残酷な処刑をこんな幼子に平気で見せている。あまりにも狂気的で、普段の接し方もおよそ普通の子供に対するようなものでない事も容易に想像出来た。そのような環境下で、まともな感覚を育めという方が難しいに決まっている。だからこそ、兄2人との穏やかな時間がオウケンを年相応の子どもで居させてくれる貴重なひとときであったに違いなく、その2人から拒絶される事は、オウケンにとって世界の崩壊に等しい絶望的な出来事なのだ。

    ひとしきり泣いた後、兄2人の言葉にやっと安堵出来たのか、オウケンはいつもの燭台の燈(トモシビ)のような明るい表情を見せてくれた。実際に目にした事はないが、冥府の昼下がりに感じる温もり、陽光という方がしっくりくるかもしれない。デスハーとデスパーにとっても、弟が笑顔でいる事は何より大切な温かい安寧であった。

    抱きしめあった三兄弟の体は、互いの体温でぽかぽかしていた。さて、今日は何をして遊ぼうか。冥府の昼は、まだ始まったばかりである。
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