昼下がりの兄弟時の概念が希薄なここ冥府にも、杳杳(ヨウヨウ)たる昼が訪れる。
僅かばかりの温もりに、天上にあるという陽光を感じながら、デスハーは弟のデスパーと共に広い中庭を歩いていた。弟の中身のない軽口を適当にいなしながら暫く歩くと、背の低い雑木林に探していたもう1人の弟の、小さく丸い背中が見えてきた。
どうやらしゃがみ込んで地面を熱心に眺めているようだった。横で1人賑やかにしてるデスパーやかつての自分も、ああやっていつまでも時間を潰していた事を思い出す。ああ自分の弟達だなあと昼下がりの安穏とした空気に似つかわしい感慨を抱いたデスハーは、きっと蟻を見ていただの、草をむしってただのと返ってくるのだろう問いを掛けようと、小さな弟、オウケンの背後に立った。
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