チャイナ服──集会所本部、昼下がりの縁側にて。日向ぼっこの最中の九尾の狐と犬神が、たわいも無い会話を行いだした──
「一松兄さん!」
「なに十四松」
「一松兄さんのその服ってさ!チャイナ服なの?」
「何それ」
「獣国の服」
「獣国って六獣が最高神の座についてるお隣の国だっけ。…人の間じゃいまなんて呼ばれてるんだろうね」
「知んない」
「おれも。…服の話戻るけど、おれはこれ狩衣みたいなもんだと思ってたわ」
「たしかに!でも垂れみたいなやつの装飾、獣国っぽくない」
「…まあ、言われてみればそうかも」
「でもやっぱりほとんど狩衣だから、獣国の服ではなさそう」
「そっか残念」
「ところで十四松、ちゃいな服なんてどこで覚えてきたの」
「えっとねー!なんかねー!落ちてたから社長になんてやつなのか聞いたら教えてくれた!」
「ああ、また時空の歪みか…」
「現物あるよ!着る?」
「いや、おれはいいや。…でも少し現物見てみたいかも」
「あいあい!こっちでっせ〜」
ダダッ
「家の中走っちゃだめだよ十四松」てか追いつけない
「分かったー」
「これだよ!」
「おお。…紫と…青?やばい。十四松、これ絶対にあのクソに見つからない場所に隠して今すぐに!」
「なんで〜?」
「こんなの見つかったらアイツ着るに決まってんじゃん最悪」
スパンッ
「話は聞かせてもらったぞ!」
「あ、カラ松兄さん!」
「出やがったクソが」
「噂をすればってやつっすか!」
「フゥン、当たらずとも遠からずだ!オレは最初からお前達の話をこっそり聞いていたからな」
「盗み聞きとかタチ悪い。もういっかい死んで性根叩き直してこいよ」
「なぜだこのオレを輝かせるであろう衣の話をオレが逃して良い筈があるかいいや、無いだろう」
「……うっっぜぇ」
「それで着るのカラ松兄さん」
「ああ、もちろんさぁ!転移の術を応用すれば…!」
バッ
「着替え完了だ!」
「すっげー」
「行燈眩しいし喧しい…!いっそおそ松兄さんに見せびらかして肋粉砕してきてあげなよ」
「フゥン確かにそうだな!この煌めきをお前達二人が見ただけで終わってしまうのはあまりにもったいない」
「良き助言たすかったぜ一松さらばだ」
ドロン
「助言じゃないし。てか、おそ松兄さん家の中にいんのにわざわざ転移する必要ねぇだろ…」
「で、兄さんも着る着る」
「いや着ないって。…今着たらクソ松とお揃いになっちゃうじゃん。おれはいやだからお前着たら?」
「え!紫なのにいいの」
「いいよ」
「やった〜」
ずぼっ
「あれ?」
「そこ、たぶん袖だよ十四松。…これ先に着てそっち羽織るんじゃないかな」
「たしかに〜」
「着れたどっすか兄さんどっすか」
「いいんじゃない。羽織り、結構黄色いからお前が着てても違和感ないよ。…たぶん」
「わーいでも、だいたい外側が紫で内側が黄色だからさつまいもっぽいね」
「ああうん…言ってよかったんだ、それ」
「そうだよ」
「さよかー」
「あと解析終わったから兄さんにも着せてあげるよ」
「は?」
〝転移の術〟
バッ
「はああ」
「あは、外側黄色で内側紫にしてみたよ」
「どうせならこっちお前が着なよ。てか、おれは着ないって言ったじゃん…」
「そうだっけ」
「そうだよ」
「忘れてた〜」
「ならしょうがない。…この際、同じ形で色だけ変えて皆にも着せてやろうよ」クソ松はほっといて
「いいね〜行こ行こ」
「うん」
──その後、集会所ではしばらくの間獣国服を身に纏う事が流行ったのだった──