半纏と風邪木枯らしが吹く中、妖怪達は他愛もない話に耽っていた。
「へっくちっ!」
「あらかわいいくしゃみ」
「大丈夫一松?」
「さぶ…」
「そりゃあんまり動かないのに着物一着しか着ないで外出るから」
「ふひ…ゴミは動きませんから」
「え?いちまっちゃんゴミじゃなくて妖怪でしょ?」
「そういうことじゃないけど…」
「妖怪…そういえばおれ妖怪だった」
「あーそれ僕も時々なる…」
「え なんで?」
「なんかあんまりにも平和で…へっくち」
「あ、またくちゃみ」
「いやくちゃみって何」
「もーせめて羽織とか着なよ」
「羽織はなんか…変な感じするから嫌」
「ていうかできれば全裸が良い…」
「あー分かるー!いっそ脱ぐ?」
「止めて」
「もーしょうがないな」
「ほら、これ着て」
「…何これ?なんかもふもふしてる」
「半纏!」
「…人間が祭りで着るやつ?」
「それもあるけどこれは綿入り半纏!」
「綿詰めてあったかくなるようにしてあるの!」
「ちょっと前に教えてもらったんだ!」
「人間に?」
「そりゃ、もちろん」
「えっチョロ松お前ひとりで山から出たの」
「違うよ、初詣の帰りにきいただけ」
「あーそういえばなんか喋ってたね…」
「人脈って大事だからねー!」
「一回喋ったくらいで何を…へっくち」
「ちょっと、喋ってないで早く着なよ!風邪引くよ!」
「えー…」
ぱっ
「はい一松ばんざーい」
「…へーい」
ばっ
「よっ」
もふ…
「お…あったかー…」
「チョロ松兄さんの体温感じるわ…」
「え…なんかそれ嫌だな…」
「www」
「ともかくこれなら着心地良いでしょ?」
「うん…これならまあ良いや」
「ふふん僕特製の半纏だからね!」
「えー俺もほしー!全員分作って!」
「今作ってるよ」
「流石チョロ松」
「まあね!」ドヤァ
「…ところで妖怪って風邪引くの?」
「え?引くよー僕だって小さい頃は結構熱出してたし」
「いんやチョロ松はまだ小さいでしょ」
「はああ僕のどこが」
「俺よりカラ松より背低いじゃん」
「お前は大の大人でしょうがカラ松は高下駄履いてるし」
「でもちっちゃいですー」
「チョロ松兄さん…大丈夫、おれよりは高いから」
「優しさって分かってるけどそんな目で見ないで一松」
「ていうかおそ松兄さんは何かにつけて僕の事子供扱いして!もう体は十分大人の域でしょ!妖怪は見た目が大人ならもう大人として扱われるのが普通なんだから僕だって大人の筈なのにどうして
子供扱いするなよ」
「子供扱いするなって言ってる時点で子供ですー」
「こ の く そ 野 郎 ! ! 」
「もう怒った!眼使って家中からおそ松兄さんの艶本探し当てて食卓の上に並べてやる」
「わあやめてぇ勘弁してぇチョロ松ー」
「まあ…自業自得かなぁ…」
「なんで」
「よし見つけたァッ」
「有言即時実行」
「これで後は持ってくるだけで」
「ごめんてチョロ松ー」
「うるさいクソ長男…目にもの見せてやるー…」
くらっ
ばたんきゅー…
「「!?」」
「チョロ松」
「うわ、すごい熱…」
「一松じゃなくてお前が風邪引いちゃったのかよ」
「やっぱりまだまだ子供じゃん」
「それ言わないであげてね…」
「えーほんとの事なのにー」
「まあとりあえず社連れて帰ろっか」
「うん」
「…おんぶとお姫様だっこどっちが良いと思う?」
「え?うーん…両方嫌がりそうだけど寝てるし…」
「好きな方で良いんじゃないの」
「だよねー!」
おんぶ!
「はーあったかい!チョロ松の体温感じるわー」
「妖怪火鉢かな」
「今だけねw」
「一松は風邪引いてない?」
「おれは平気っぽい、もうくちゃみ出ないし」
「くちゃみwww」
「…チョロ松兄さん、おれに半纏貸しちゃったから風邪引いちゃったのかな」
「いんや元から結構着込んでたみたいだしそんなことないって」
「心配なら看病してあげてー」
「うん…」
「…おそ松兄さんの力じゃ治せないの?」
「あー…怪我は治せるけど病気はねー…」
「そっか…」
「うぅん…クソ長男…」
「wwwおそ松兄さんの夢見てるのかな」
「まじでもーかわいい奴めー」
「www」