【エルリ】雨の日ならこんな——あ。
向かいの椅子に座る男が形良い唇を開いた。その視線を追うと大きなガラス窓に差し掛かる水滴が一つ、二つ、たちまち数えきれない数になってリヴァイの視界をいっぱいに埋め尽くした。
——ああ。
更に声にならないため息が、似合わぬ大柄な体から空気が抜けたように漏れてくる。まるで散歩に出かけるのを寸前で諦めるよう止められた、実家の犬の様にしおれている。
「雨ですね」
わかりきった事実だが、事実としてリヴァイはあえて口に出してみた。なにしろ、他に話題も無い。
偶然買い物の途中で出会い、少しお茶でも、ぜひにお茶でも。と誘われたのはいいが、予報より早く本降りとなったようだ。
駅近くの小洒落たコーヒーハウスは、週末の昼過ぎという時間も相まってそこそこ混んでいた。待ち合わせしてどこかへ出かけていくのだろう、客たちのかろやかな会話がそこかしこで聞こえ、それぞれ楽しそうに次の目的地へと出発していく。
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